Q&Aで知るプルサーマルの正体
     西尾漠  原子力資料情報室・原水爆禁止日本国民会議 2004年

   人類の未来を決めるのは原発である

 原子力資料情報室の購読会員になっているが、半分はカンパのつもりで、普段はあまり通信を読んでいない。たまにこういうパンフレットが来ると読んで勉強させてもらっている。
 プルサーマルは簡単に言うと「本来想定された燃料でないプルトニウムを、ウランと混ぜて燃料として使う方法」で、現在関西電力の高浜原発(福井県)はじめいくつかの原発で計画が進められている。プルトニウムは核兵器の原料にもなる物質で管理が難しく、本来プルトニウムを燃料として使うように設計されていない現在の原発で、この物質を燃料(実際には燃えるのではなく、熱と放射能を出しながら核反応を起こす)として使うことは、様々な面で問題をはらんでいる。原子力の話は難しいところがどうしても出てくるのだが、このパンフレットは比較的わかりやすくプルサーマルの問題点を指摘している。
 本来プルトニウムは「もんじゅ」のような高速増殖炉で処理されるはずだったのが、事故により安全性が疑われ(もともと本質的に安全とは言えないが)、高速増殖炉の開発がストップしてしまっている状況で、普通の原発の運転後に出てくるプルトニウムをなんとか処理するために考え出された苦肉の策である。安全を第一に考えるべき原子力の世界で「苦肉の策」というのもそもそも矛盾しているが、政府や電力会社は「プルトニウムをリサイクルできる」などと宣伝している。
 このパンフレットの内容の中で恐ろしいのは、たとえば今までにプルサーマルの実証試験が、外国を含めて実質的にほとんどないということだ。本番とは違う形式の炉での実験や、燃料のほんの一部だけをMOX燃料(ウランとプルトニウムを混ぜたプルサーマル用燃料)に取り替えて運転しているだけである。でありながら「実績がある」と宣伝しているのは、詐欺というより無責任であろう。要するにぶっつけ本番である。
 原発の安全性について議論があり、推進派と反対派がいることも事実であるが、このパンフに引用されているのは主に推進派の発言や資料であり、それだけ説得力もある。貴重な資料だと思う。
 原子力発電の問題点は色々あるが、 (1)作業員の被爆が避けられない (2)放射性廃棄物管理の保証ができない (3)大規模事故の可能性を0にできず、事故が起これば致命的である の3つを挙げれば十分であろう。私たちが使っている電気は、下請け作業員の浴びる放射能の上に成り立っている。私たちの使っている電気は、将来1万年に渡って管理されなければならない放射能の上に成り立っている。そしてチェルノブイリのような事故が日本で起きれば、この国は確実に滅びる。ロシアとは比べ物にならない地震大国で原発を運転しているのは、「愛国心」のない明白な証拠である。原発を推進する人々にこそ、国を愛する心が必要なのだ。そして現状を受け入れ容認し未来の子どもに放射能の恐怖を与え続けている我々には、小学生殺しの犯人を責める資格など……多分ない。
 これは関心の有無に関わらず、日本に住む人全員の問題である。ぜひ一読を勧めます。(2005/1/5)

  ※市販していない可能性が大きいので、原子力資料情報室に請求してください(600円+送料)。
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