尾道旅行

 1泊2日で妻と尾道へ旅行に行った。事前に1冊旅行ガイドを買っていたが、いつものようにあんまり計画を立てず適当に行くことにした。
 旅行社のパックツアーを探してみて「1泊2日尾道コース ホテル宿泊+電車代セット」を申し込んだところ、
 「ちょっともう間に合いませんねえ。あと2日早く来ていただければ」
ということで却下。いつもドロナワなのがあかんなあ。時々こうやってバチが当たります。
 結局ホテルはインターネットで予約、新幹線は安売りチケットで買って準備完了。朝9時過ぎに家を出て、自転車で新大阪まで走り新幹線に乗る。岡山でこだまに、福山で普通に乗り換え、新大阪から2時間弱で尾道に到着。早い。あんまり早いとなんだか旅行をしているような気がしないと妻が言うが、わかるような気もする。
 尾道は海に面した小さな町で、駅前に新しいホテルやデパートが並んでいる。しまなみ海道ができてから駅前だけ作り直したような感じだ。ホテルにチェックインして海岸沿いの商店街を歩くと、うってかわって古い店が並ぶ。閉まっている店も多い。こういう商店街は大阪にもたくさんあるが、これからどうなっていくのか想像すると暗くなってしまう。
 旅行ガイドに載っていた店を探して商店街を歩き、きっ粋という魚料理の店に入る。漁港だけあって刺身も天ぷらもふんだんに出てくる。この店は有機米など自然食が売りでおいしかったが、最後に出てきたかき揚げが脂っこくてちょっと参った。店のおじさんが尾道の雑誌を持ってきてくれたが、雑誌のあちこちに映画の生写真が貼ってあったのが面白かった。
 昼食後千光寺公園へ。石畳の坂道をヘエヘエ言いながら登る。ここに住んでいる人はさぞかし足が丈夫になるだろうなあ(お年寄りはどうしてはるんやろ?)途中に「志賀直哉旧居」と「文学記念館」に寄る。文学はてんで弱くて志賀直哉も読んでいない。彼は父親とケンカをして東京から尾道に出てきて小説を書いたのだそうな。旧居から見る海はなかなかの眺めだ。管理しているらしいおじさんが色々解説してくれる……が、あんまり一方的に解説されるとなんだかうるさい(ゴメンナサイ)。文学記念館には林芙美子の他、行友李風・高垣眸・横山美智子など尾道出身者(ダレモヨンダコトガアリマセン)の記念品が並んでいた。誰かの年譜に「日本語の乱れや、国民が文学から離れたことに絶望して絶筆した」と書いてあったのが面白かった。芸術家の考え方はわかるようでわからん。
 千光寺は小さい寺だったが、見晴らしがよくて風が気持ちよかった。妻は売り場のおばさんの迫力に押されて? お多福のお守りを買っていた。帰りはロープウエーに乗るつもりだったのに、乗り場の場所がわからなくて結局歩いて下に降りてしまった。下りの途中で切り絵の店があって、手作りの絵はがきを何枚か買った。石畳の坂道など、尾道の風景は切り絵が似合う。こういうオリジナルも観光を支えているのだろう。
 山から下りて、今度は映画資料館へ。海沿いの市役所の向かいにこぎれいな建物があった。妻は古い映画が好きで、ポスターやら年譜やらパンフレットやら夢中で見ている。2階には新藤兼人監督作品の紹介があって、妻でもある乙羽信子の主演作品がたくさん紹介してあった。この人の映画はほとんど知らないのだが、写真パネルを見ていると脚本も演技も生々しい迫力が見えて、今の日本映画より面白そうだ。レンタルで置いてないかな。
 夕食は結局駅前のラーメン屋へ。尾道ラーメンはあっさり味でちょっと物足りないが、牛丼+ラーメンセットだったのでボリュームも十分。本当は商店街の店に行ってみたかったのだけど、店を探す余力がありませんでした。
 2日目は早起きして船に乗るつもりだったが、少し寝坊した。結局昼前にホテルのすぐ前の船着き場から生口島行きの小さな船に乗る。他の乗客は乗り慣れている様子で、どうも観光客は自分たちだけのようだった。揺れはそれほどひどくなかったが、島が多すぎて海の見晴らしはもうひとつ。終点の1つ手前に来たところで「終点ですよ」と言われビックリ。後で聞くと、台風で終点の桟橋が壊れてしまっているとのこと。行く前に「台風で被害があったらボランティアでもしようか」と言っていたが、これではムリか。
 旅行ガイドを見て昼食の店を探す。あなご飯定食を2人で食べた。やや薄味だが美味。ガイドに載っているせいか途中からどんどん混んできた。このへんは車で来る人が多いのだろう。
 昼食後、平山郁夫美術館に行く。おそろしくハイカラなデザインの小学校の隣に、古めかしい垣根に囲まれた美術館があった。日本人の画家はほとんど知らない。この人の絵も全く知らなかった。普通の美術展のようなありふれた年譜だけだと退屈だが、ここでは生い立ちと合わせて当時描いた絵を並べているのでイメージをつくりやすい。小学生の頃の絵はさすが抜群にうまいが、後年の絵は正直よくわからない。宗教的な要素もあるのだろうが、素人目にそれほど強い印象を受けない。彼は被爆者で、原爆症に苦しみながら日本画を学び、シルクロードに魅せられて文化遺産の保護に尽力した人物である。絵そのものよりも、絵だけからではわからない彼の生きざまが魅力的に見えた。妻は例によって絵はがきをあさり、こちらは自伝を買った。なぜか恐竜学の本があり、手に取ってみると平山郁夫の息子の本であった。ちょっとせこいかも。
 この島のあちこちに彫刻があるらしいので1つくらい見に行きたいのだが、地図もなく帰りの船の時間もわからないので、先に妻はおみやげを探し、こちらは帰りの船の時刻表を探しに歩いてみた。コンビニもスーパーもあって、島といっても潮のにおい以外何も変わらない。30分歩き回りやっと船の時間を調べ、おみやげ屋に戻ると妻も買い終わったところだった。かなりへばったので彫刻はあきらめ、最初の波止場へヘロヘロ歩いて戻り、夕方の船で尾道に戻った。ホントに要領悪いわ。
 帰りは福山から一本で新大阪まで乗れた。新大阪でカレーを食べて一息つき、30分自転車をこいで我が家へ。久しぶりの泊まり旅行にしてはあっけなかったが、妻にはいい骨休めになったようだ。あんまり遠くに行かなくても、有名な観光名所でなくても、心がけ次第で? 楽しめるということかな。旅行って景色とか食べものじゃなくて「時間」を感じるものなのかもしれない……って負け惜しみか。(2004/9/11)(2006/8/2リンク更新)

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