九州での8ヶ月

 ずいぶん長い間更新を休んでしまった。こういうものは習慣で、書かない習慣がつくとネタがあってもパソコンに向かう気がせず、今更ながら勉強をしたがらない子どもの気持ちがわかったような気もする。
 8月末に福岡に転居して、幸運にもすぐに働き先が見つかり、9月から塾で中3(数学)と高2・高3(化学)を教えてきた。家から電車で1時間くらいの場所なのだが、はじめのうちは帰りが遅いのがこたえた。授業後居残りをさせる方針の塾で、10時に授業が終わってから1時間以上個人指導をし(前に書いたように個別指導をまじめにやれば集団指導よりきつい)、生徒もこちらもフラフラになった。あんまり遅いので塾にかけ合って数学の補習を土曜の夕方だけにしてもらい、ようやく体が回るようになった。塾の方も来年度から居残りを減らす方向で検討しているらしい。私としては必要な子が必要な時間だけ残る「自主的居残り」がありがたいのだが、どちらにしてもクラブでへばっている中学生を遅くまで塾にいさせるのがいいとは思えない。
 中3数学をレギュラーで教えるのはかれこれ14年ぶりで、教える内容には特に不安を感じなかったが、"高校入試の数学"の感覚をつかみ直すのに苦労した。福岡の公立高校の入試問題はここ10年以上パターンが決まっていて、徹底して練習すればほとんどの子が7割近くとれるようになる。「テスト対策主義」にまたもやはまっているなあと思いつつ、よく出る問題の練習を冬休みから繰り返しさせたのが、結果的にはよかった。私立の問題も(難関校を除けば)公立を意識して似せているところがあり、私立対策と公立対策をあまり分ける必要がないのでかったのは助かった。などといってもそれほどうまくやれたわけではないが、久しぶりだし合格率もまずまずだったし許してもらうしかないか。1人だけ不合格だった子が、卒業祝賀会に来てくれたのが救いだった。ありがとう……
 一方高3は、4月からの年間プランがはっきりあったでもなく、テキストもなく、全部講師にお任せでいきなり9月から受験生をもつという状態で、最初は手探りでおっかなびっくりだった。生徒のみなさんには迷惑をかけてしまったと思う。時間配分がうまくいかず、化学Uが終わらないうちにセンター対策に入ってしまった分だけ、土壇場の2次対策がいい加減になってしまった。化学はセンターの理科の中では点数が計算しやすい方だと思っていたのだが、今年は新課程元年で問題傾向(というよりも"問題文の雰囲気")が変わったせいか平均が下がり、かわいそうな結果になってしまった。最終的に受かった子はまあいいのだけど…… それなりに必死に授業をしたつもりだったが、力不足を痛感した。頭の切れ味や記憶力が鈍っているのが不安だったが、振り返ってみれば所詮準備不足に尽きる。本当の難問でなければ、頭の回転が落ちているのは経験でカバーできるが、生徒の質問や理解度に対応するだけの準備をしていないときはどうしようもなかった。準備して空回りすることもあるが、そういうときは度胸が据わるせいかそれほど不安を感じない。こういうのは性格の問題なのだろうか。
 福岡に来て面白いと感じるのは、九州大学のブランド感覚の強さだ。もちろん東大とか京大とかへの憧れもあるのだが、「とにかく九大に行きたい!」という意識の強さがあちこちで感じられる。これは大学が近いせいだけではあるまい。大阪だとこんなに「とにかく阪大」という感じではないし、まして京都なら「とにかく京大」とはなかなか言えない。ここにいると、まるで九大が日本を代表する学校のように思えてくる。うがった見方をすれば、「九州国」の中で住んでいるようにも思えなくはない。まあこれは私の勤めている地域に限ったことで、福岡市内だとまた違うのかもしれない。
 ただこの意識のために、ある意味では受験指導はラクになっている。九大の化学は量的に多く時間の勝負になるが、問題自体はそれほど難しくはなく、九州内の他の国公立の問題もそれほど難問がない。数学もそうだろうが、阪大あたりの方が問題はよほどやりにくい。九大より難しい問題が出る学校をめざさないということは、教える側からするとターゲットを絞りやすい。公立高校入試と同じだ。もっともこのように考える教師が多ければ、それが「学力低下」につながっている可能性もある。
 高2化学は9月からの開講で、これもテキストなしで白紙の状態から始まった。2年生は何かと忙しく、塾での勉強で集中力を保つのは難しいことが多い。幸いにも生徒はずいぶんなついてくれて、おかげで高3になった今年度も持ち上がりをすることになった。授業中に寝る子がいなくなっただけでも進歩か?
 体がかなりしんどくて、4月からどうするかかなり迷ったのだが、結局この塾でもう1年お世話になることになった。今は中1〜中3の数学と高3の化学を週5日でもっている。近くに大手の塾が進出してきて慌ただしそうだが、自分は自分のベストを尽くすだけだ。
 ともあれ今年も準備に追われ続ける1年になりそうだ。このHPもどこまでさわれるかわからないが、まあとにかく放棄はしないで続けてみようかと思う。(2006/4/26)


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