ラストスパート

 昨年度から持ち上がっているのは現高3だけなのだが、塾の都合で夏期講習から次の先生に代わることになった。高校生を教えるのはしんどいが面白いし刺激にもなるので、私としては続けたかったのだが、まあ経営方針には逆らえません。
 この学年を持ち始めた昨年の9月には、やる気がないわけではないのだが緊張感がほとんどなく、こちらも高2なのであまりビシバシやるというわけでもなく、余談も多くけっこうダラけてしまっていた。このままではイカンと思い、昨年冬に無機を教えたときは、無機のまとめプリントを新しく作って教えた。今まで無機については自分でまとめをつくったことがなく既製品に頼っていたのだが、細かい点で不満もあったのでいつか自分の納得いくようなものを作ってみたいと思っていた。色々な参考書や教科書・問題集と首っ引きになって3週間ほどで13枚ほどのプリントをつくり、授業はひたすらこれを読むだけでできるようにした。こういう授業は手を動かさない分タルイし、本当に生徒の頭に入るかどうか不安もあったが、プリント自体はおおむね好評だった。
 高3になるとさすがに受験を意識してきて、かなり授業に真剣に取り組んでくれるようになったが、持ち上がりのせいかなんとなく甘えたような部分はまだ抜けない。それでも「もうすぐ教師交代」宣言をしてから、いい顔をしてくれる時間が長くなった。勉強のしかたとか志望校について相談することも増えた。交代前にあんまり教師になつくのはよくないような気もするが、生徒が"本当に"強ければ大丈夫のはずだ。
 年明けから4月まで化学Tの有機をやってきて、5月から7月第3週までで化学Uを一通り終わるというムチャな計画を作った。授業は解説半分、基本問題を中心とした演習半分くらい。女の子は全体に計算問題に弱く、気体や溶液の計算は青息吐息である。逆に計算に強い男の子は、記述問題やひっかけの文章に弱い。化学Tだけが必要な文系の2人は、5月から半分自習でセンター対策の問題を解かせている(よくこの条件で授業をとってくれているとも思う。ありがたいことです)。順調にいっているとはとても言えないが、ここ何回かはこちらもかなり準備に時間をかけてパワーを使っている。あと授業3回で、人工高分子と反応速度・化学平衡を残すところまで来た。高分子は実物をふんだんに見せたいのだが、サンプルを探す余裕がないのがもどかしい。化学平衡はおそらく化学全体の最難関で、どのくらいの理解をめざすのかまだ見当をつけられていない。とにかく教材をつくって問題を全部解き、板書ノートを書き、どの問題をどの順で解かせるか決め、余裕があればマンガをかいたり実験を試みたい……のだが、現状ではとても実験ができる状態ではなく(浸透圧の実験をやろうと思ってセロハンを買ってきてはいるが、今から日曜までに間に合うか?)、自己満足かと思いながらマンガだけはひたすらかいている。
 あと2週間あまり、この感覚は入試前のラスト・スパートに似ている。入試の1ヶ月くらい前になると、やり残したことの中で優先順位をつけて片端から問題をつくり解かせ、補習(質問)の時間を惜しまない。生徒と自分の力の限界を試しているような感じだ。生徒と一緒に何かに対して本気になれる時間は、教師にとって一種の"極楽"ですらある。クラブ活動に熱心な先生は、おそらくこれと同じ感覚で生徒と接しているのだろう。仕事依存にならないようにとは思うが、とにかくあと15日、がんばってみたい。(2006/7/7)


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