バラバラの世界
かれこれ15年くらいカウンセリング(精神分析)を受けているのだが、よくなる気配がないので、認知療法を試してみようと思った。
九大病院のHPに認知療法をしていると書いてあったので電話で問い合わせると、1ヶ月待ちだという。それでも予約をして1ヶ月待って診察を受けると、
「できることはできるが……忙しくて十分時間をとれないかもしれない。こちらも調べてみるので、もう少し他を当たってみたらどうか」
と言われた。保健所で聞いてみるのがいいと言う。この話だけで3000円。
翌日保健所に行くと
「そういうのはここではわからないんです。病院の紹介はできますが、その病院にどんな専門の先生がいるかはわかりません」
と言われた。九大病院の先生はこういうことをご存じないのだろうか。
自分でネットで調べて、天神の個人開業の精神科に行った。ここも予約が2週間待ちだったが、とにかく認知療法をやっているのは間違いなさそうだった。
3時の予約だったので5分前に行くと、問診票を書いて待たされた。30分たっても音沙汰なし。受付で聞くと
「すみません、あと40分はかかりそうです」
と言う。病院で待つのはしかたないとは言え、予約までして1時間待ちはないんじゃない?
かなりしんどかったので一度出て、コーヒーを飲んで一息ついてから病院に戻り、結局呼ばれたのは4時15分。
病歴と服用歴を書いてきてくれと言われていたのでカウンセラーに渡したら「書いてきてくださったんですね」と言われた(?)。でもあまりていねいには読んでもらえず、口頭で病歴を延々と聞かれる。向こうが全部悪いわけではないが、朝から色々あっていい加減イヤになっていたので、だんだん口調がきつくなっていくのが自分でもわかった。
カウンセリングが終わってグッタリしていると、やっと医者に呼ばれた。最近の精神科はどこも混んでいるので、このお医者さんも過重労働で大変なんだろうな、と頭のどこかで思いながら、その時の自分には相手を思いやる余裕がなかった。
「予約して1時間以上待ったことなんてないです。患者さんの気持ちがわかってるんですか」
ロコツに文句を言うとあやまっておられたが、とにかく認知療法の話を聞きたいと言って、説明してもらった。自分の持っているイメージと、そこでしている治療がずいぶん違うようで、要するに徹底的にやってもらえそうになかった。
「すみませんが自分は徹底的にやりたいので、そういうお医者さんを紹介してもらえませんか」
「九大病院はどうですか」
「もう行きました。そこで他を当たってみたらどうかと言われたので」
「うーん、でも九大病院がこのへんでは一番まともだと思うんですが」
「その(九大病院の)先生の言われていたことは、違うんですかね」
「その先生も、九大病院でどれだけ認知療法が行われているのかご存じないのかもしれません(!?)」
「そんなことがあるんですか?」
「残念ですが、自分の研究室以外でどんな治療が行われているのか知らない人は多いんです。みんなバラバラなんです」
「もう福岡でなくてもいいです。どこかご存じないですか」
「慶応とか慈恵医大とか……でもこういうところも、指導している先生が異動したりすると、できなくなることが多いので、はっきりとはわからないんですよ」
「ホームページだけじゃわからないということなんですか」
「そうですね、あなたのような人を見てくれるところかどうかは、ホームページだけではわからないでしょうね」
「……システムとして認知療法をやっているところはないんですか」
「昨年学会で広島大学がやっていると言っていました」
「でもそこも、今でもやっているかどうかはわからないんですね」
「まあでも1年前ですから、まだ大丈夫でしょう」
ウソみたいな会話をして2000円払って帰宅し、その日からイライラに襲われた。
翌日広島大学病院に電話をすると、
「次に予約を受けられるのは8月12日です。でも認知療法のプログラムは8月の最初から始まっているので、それには間に合いません」
「次のプログラムはいつからになるんですか」
「11月ですね」
「…………そうですか、しばらく考えます」
待ち時間が長すぎるというより、同情するそぶりさえ見せない事務の人の話し方が悲しかった。断念して電話を切った。また感情の波が襲ってきて、食べてごまかすしかなかった。過食になりそう。
医者が少ないとか患者が多すぎるとかいうのもあるのだろうが、医者同士の情報交換がこんなにも少ないとは思わなかった。これでは(自虐的だが)塾と同じだ。精神医学を学問として見れば、最悪の状態ではないか。
もう認知療法を受けることはできない、でも今のカウンセリングを続けていても見通しが持てない、今のしんどさを一時的にでもラクにすることすらできない、……なんてあんまりだ。甘えているのだろうか。こんなふうに考えるのがダメなのかな。
もう京都に帰ろうかな。壊れるのならせめて故郷で……(2009/6/17)
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