マイフォントをつくる

 私はひどいくせ字で、通信添削でボールペン時を習ったこともあるのだが、どうしても美しい字を書くことができない。教師としては致命的なのでいつも気にしているのだが、とりあえず「字が読めない」と言われることはほとんどないので、まあ一応こんなもんでいいかと安心してしまっている。
 学生時代に『一太郎』で卒論を書いたのがきっかけで、ずっとジャストシステムのソフトを使っているのだが、そこから「マイフォントを作ってみませんか?」というコマーシャルが来た。自分の書いた字を解析して、手書きに近いフォントを作るのだそうな。ホントの手書きは字数が増えるとどんどん字が歪んできてイヤになるので、思い切りていねいに書いた手書き文字をフォントにしてもらえたらいいなと思った。「今なら5000円引きで10000円」という魅力に負けて注文してしまった。
 しばらくして、文字を記入するシートが送られてきた。ひらがなとカタカナ全部、あと指定された漢字約50字、その他に自分や家族の名前や住所の漢字をペンで書く。これでフォントが決まると思うとけっこう緊張した。シートを返送して2週間あまりして、フォントの入ったCDが来た。手元の文書を変換してみる。つれあいも興味津々で見ている;
 「あれ?」
(上が本当の手書き、下がマイフォントを使ったもの)
手書き

フォントを使った場合

 どうも感じが違う。これだけ字が小さいと手書きに見えないし、字間があきすぎていて"きれい"すぎる。ポイントを大きくして字間を詰めてみた;

大きいフォントを使って字間を詰めた場合

 これだとかなり本物に近いが、実際に紙に印刷してみると手書きでないことはもちろん一目瞭然だ。縦の線は縦のまま歪まないし、字の大きさもそろっている。これを美しいととるか「味がない」ととるか、人によって違うだろうが、今のところまだ本物の手書きの方が読んでもらいやすそうな気もする。
 この作業は、機械の打ち込みで音楽をつくるのに似ている。十分な技術があれば打ち込みでもそれなりの音楽ができるが、それはやっぱり機械のリズムで、聞きやすくても何かが違う。私はそれしかできないので打ち込みをしてしまっているが、技術と余裕があれば生で音楽をやってみたかった。同じように「できるなら」手書きでやった方がいいというのなら、結局マイフォントは手抜きの証明になってしまう。どう使ったものか、まだ迷っている。(2006/11/5)


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