食塩水にはまる

 中1はこの間まで方程式の文章題をやっていた。遅れ気味で焦っているのだが、ここはあわててやってもわからないまますぎるだけのところなので、何とかなるだろうと開き直ってゆっくり説明している。
 テキストの問題を順番に解いていくのだが、元気というかヤンチャな生徒はやたらと問題に突っ込む。「兄が妹を追いかけて走っていくと〜〜」という問題になると「ストーカー算やん!」とか、りんご1個200円という答に「そんな高いりんご買わないよ」とか。こういう突っ込みが多いのは中1の特徴で、小学生のノリが残っているのかなと思うのだが、適当に流しながら授業を進めるのはけっこうしんどい。
食塩水の塩の重さ  ……で、文章題の最後に食塩水の濃度計算が来た。ここは苦手意識を持つ子が多いところで、1学期に中2でやった(連立方程式)ときもそんな感じだった。食塩水やるよと言うと「きらい〜〜」「こないだテレビでやってたけどわからんかった」 毎度のブーイング。テレビって平成教育委員会とかかな? とにかく一度静かにさせて「1つだけ公式覚えなさい。そうしたら全部解けるから」と言って板書;
 「濃度って言うのは、食塩水の中の塩の割合を表したものだから、『塩は全体の○○%』というふうに言えます。この図だと『塩は100gの3%』×にできるから、こういう式」ここはなんとか通過。
 実際の問題は「3%の食塩水100gに10%の食塩水何gを加えると7%の食塩水になるか」というもの。文を音読して数字に線を引かせ、「あとは図をかくだけ。食塩水のビーカーをかいて、その下に塩の重さの式を書いてみなさい」(いきなりこの図を完成させるのではなく、生徒とやりとりをしながら埋めていく)
問題を図で表す  「かけた? じゃあ考えてごらん、もし最初のビーカーの中に2g塩が入っていて、次のビーカーに3g塩が入っていたら、合わせたビーカーには塩は何g入ってるんやろ?」ここも問題なく「5g!」「ということは塩の重さは足し算できるね、だからこういう式(図の下の式)が立つよね」というと、「あっ、そうか!」と予想外にうれしそうな声が返ってきた。あとは分母を払うことだけ注意して計算させる。方程式の計算はもうそんなに苦にしないので、全員無事に答えが出た。あとは類題を自分で解かせる。何人かが異様に? 熱心に解き出した。スッキリわかったのがよほどうれしかったのか、それからの数十分は喜々として問題を解き続けた。この勢いも中1の特徴(特長)だ。時間になっても何人かの子はまだ問題を解きたがった。「次も食塩水やろー」「次はもう比例にいくの」「いやだ、もっと食塩水したい」困ったような顔をしながら私はうれしかった。授業の後にいつも書かせるコメントではこんな感じ(左から1〜5の5段階の授業評価、生徒からのコメント、私からのコメント)
生徒のコメント
 こういう会心の授業は本当に1年に数回しかないのだが、今回なぜそこまで子どもが"ノッた"のかよくわからない(教育学をやっている人には、どうしたら子どもがこんなふうにノレるのか、ぜひ研究してもらいたい)。気分に左右されやすいのも中1の特徴なので、何かの偶然だったのかもしれない。まあでもこういう気持ちを味わったことが子どもの記憶の中に残るだけでも、とりあえずよしとしなければ。
 失敗だらけの仕事の中でも、こんなできごとが私を救ってくれる。教師はすべて子ども次第だ。喜んでくれたみんな、ありがとうね。(2006/11/8)


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