宝くじと受験

 久しぶりに見たテレビで「72時間」という番組をやっていた。72時間の定点観測なのだが、この回は年末ジャンボ宝くじ売り場を映していた。
 宝くじ売り場に夜中から並ぶ人々の夢は色々だが、マイホームとか海外旅行とかローンの返済とか話しているのを聞いているうちに、なんだか悲しくなった。くじに頼らなくても、真面目に働いていればマイホームや海外旅行くらい実現できるはずではなかったのか。この国は結局そんなに貧しいのだろうか。カナダ人がこの光景を見て「信じられない」と言っていたが、その言葉の中に哀れみを感じたのは私の気のせいだろうか。

 塾の方は8日まで中3の模試があり、10日からまた通常授業が始まる。子どもは学校と塾の掛け持ちでホントにしんどいだろう。毎日ハッパをかけながら子どもと過ごす時間は、私にとってはしんどいが苦痛ではない。子どもも成績が上がれば喜ぶし、わからないところがわかるようになればいい顔をしてくれる。しかしここまでしてお金と時間をかけて、その結果がどこまで本当に子どものためになるのか、"いい高校"に入るために子どもにここまでのことをさせて本当に元がとれるのか、はっきりわかる人がいるのだろうか。
 有名大学に入れば就職には有利かもしれない。受験の知識はどこかで本人を助けてくれるかもしれない。しかしそのために払う犠牲の大きさを考えるとき、それは宝くじを買うために長い時間店の前に並んでいる人々と似ていないか。私は教育者とか言いながら、実は宝くじを売っているだけではないか。……そんなことを考えて、「72時間」を最後まで見る勇気のなかった自分に少し腹を立てた。
 子どもにとっての加害者でもある自分を意識し続けながら、今年も1年子どもと格闘するしかない。受験だけでなく本当に役に立つ勉強をどこまで教えられるか。どれだけ子どもの味方として行動できるか。子どもに関わる人間にはいつもそのことが問われているのだ。年の初めだからこそ、改めてそのことを自分自身に刻みつけておきたい。(2007/1/10)


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