「2度と俺の前に顔を見せるな」

(2008年3月11日)

 入試に向けた授業は昨日で終わり、入試前日の今日は自由参加の質問会があった。

 英語のできない○○君は昨日「学校を休んで午前中塾で勉強したい」と言っていた。
 反則だが、ここまでやってきたのだから本人がそう思うのならいいだろうと、英語を教えている上司はOKを出し、○○君のために(他にも雑用はあったが)午前中塾で待機していることにした。
 私は昼から質問会だったので1時前に塾に行ったのだが、上司は手持ちぶさたのまま待っていた。彼は来なかったのだ。
 親に電話をして問い合わせると、「塾に行く」と言って朝家を出たらしい。友だちと誘い合って学校をサボって、塾に行かずどこかで遊んでいたようだ。上司はもはや怒るのを通り越して笑っていた。


 ○○君と一緒に学校をサボった××君は、これまでにも宿題を忘れたりものを持ってこなかったりで散々上司にも私にも怒られていた。合格するかどうかギリギリラインの彼に、1週間前にも上司が諄々と、しかし必死にお説教をしていた。
 そのお説教の2日後、授業後の補習中に××君がまた遊んでいるのを見て、私は我慢の限界をこえた。
 「××! 他の子の邪魔だから帰れ! もう塾には来なくていい!」
 と言って彼を追い出し、親に電話をして次の日は塾を休ませた。
 1日休んでから出てきた彼に、私は
 「△△先生(上司)があれだけ君のために話して、君もちゃんとするって言ったやろ。君は△△先生を裏切ったんだよ。そこだけは絶対許せない。あと1週間、必死にやってみなさい」
 と彼に話した。彼は神妙にうなずいていたが、どこまでこの話が通じたかはわからなかった。


 上司が帰った後 3時過ぎになって、その××君の方が塾に来た。
 話を聞くと、マクドナルドで午前中ずっと時間をつぶしていたらしい。
 入試前日にそこまでして学校をさぼるというのは、もしかしたら「大物」なのかもしれないが、私は彼にこう言った。
「裏切り者。ホントにがっかりしたよ。もう打ち上げも来なくていい。2度と俺の前に顔を見せるな」
 彼は私が企画した18日のボウリング会に行くのを楽しみにしていたが、私はその楽しみを取り上げてしまった。
 感情としてはそうとしか言いようがなかったのだが、こんなふうに言ったのがよかったのかどうか未だにわからない。
 教師はどんなことがあっても生徒を見放してはいけない、どんなに叱ってもどこかで生徒を受け入れなければならない、ということは頭でも心でもわかっているつもりなのに、自分の中のどこかに「生徒を見放す」部分があるのも事実だ。

 ××君が私の言ったことをどう受け止めるのか、私が彼にしたことが彼にどんなふうに影響していくのか、わからない。
 もし将来オトナになった彼と再会したら、彼は私に何と言うのだろうか。

 あと8時間で公立高校入試。私は○○君の受ける高校に門前激励に行く。(2008/3/16)


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