歌を誰のために

  初めての君のライヴを聞きに行ったよ
  汗にまみれて弾けるように踊っていたね
  あのときそして今 君は
  一体何のために そんなに熱く歌っているのだろう

  最後の歌にはきっと 声なんていらない
  言葉は風になって届けばいい
  右から左へ抜けていく
  安っぽい使い捨てのために
  いつか君はその身を費やすのか

  これだけはまだどうしても譲れないんだ
  警官に殴られながら叫んでたあいつの声より
  心に響く歌なんて なかった

  うわべだけの演技なんて見たくはない
  つくりごともきれいごとも聞きたくはない
  ただ 君の中のありったけの本当だけを
  自分の言葉で体で 伝えておくれ

  今を慰めるだけの甘いささやきよりも
  明日を貫く激しい怒りが欲しい
  悔しさの多すぎる世の中で
  逃げられるはずもないのに
  なぜ 眼をそらすように歌っていられるのか

  これだけはまだどうしても譲れないんだ
  車椅子の上で青ざめた彼女の涙より
  心を揺さぶる歌なんて なかった

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