春奈のために

  目と目が合えばそれで恋はできる
  初めて聞いた声がふるえても
  無邪気な笑顔のそのかげで
  うつむきながらのぞく寂しさ

  いたずらの手紙に騒がれて
  息が止まるほど見つめてた
  それでも別れの春は巡りくる
  乾いた道を光が飾れば

    春奈 どんなに思いがあふれても
    なぜか話しかけられない
    二度と戻ることのないあのときを
    思い出すのはやめよう

  新しい季節は早く過ぎて
  ぼくの知らない場所を歩き出しても
  君の隠していた寂しさの
  行き先がただ気がかりだった

  新しい恋が君を飾っても
  ありきたりの幸せは祈らない
  今出て行く古い殻の中に
  悲しみだけを置いてはゆけない

    春奈 傷つき悲しむ夜だけが
    君を夏色に染めて
    遥か追い越して行ける風たちが
    覚えているよ 涙も

    春奈 言葉だけじゃないやさしさを
    いつか伝えられる時を
    今は背中を見せながら待っている
    届けられない思いと

    春奈……


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