Still

  ある日ふっと一息ついて 君は言ったね
  「私は何をしたいかどうしてもわからないの」
  何て答えたらいいのか その時はわからなかったけれど
  言いたかったことに今 やっと気づいたんだ

  君は何かになるために ここにいるんじゃない
  君は夢を目指すために勉強するんじゃない
  君は今 本当の君でいるために生きているんだ
  大人の自分の名前を まだ決めることはないんだ

  道は曲がりくねっている方が 眺めがいい
  後戻り 一休み 何があってもいい
  誰も見たことのない 君になるために
  今のその自分を 飽きるほど味わえばいい

  喜びも苦しみも それがありのままなら
  力を抜いて そっと寄り添えばいいんだ
  ごまかしでないのなら 生きている重みは
  いつでも誰でも 本当は変わりなどないのだから

  どうにもならない悔しさに 心くじかれて
  誰にも言えずにうつむく夜もあるけれど
  胸を張れなくてもいいから ここにいる君の
  体のぬくもりを誇りにしてほしい

  遠すぎるどこかの夢に しがみつかなくてもいい
  明日のために 今日を生きてるわけじゃないから
  道を歩いている今 命を背負う今の熱さを
  両手に握りしめてまっすぐ立てればいい

  君は何かになるために ここにいるんじゃない
  君は夢を目指すために 勉強するんじゃない
  君は今 本当の君になるために生きているんだ
  大人の自分の名前を まだ決めることはないんだ

詩の世界 一覧に戻る

最初に戻る

inserted by FC2 system