将来について考える


 高校生になると、将来について考える機会が多いと思います。みんなの中にも将来の希望(なりたいもの)を決めている人、迷っている人、色々ですね。
 江戸時代には、ほとんどの人の将来は生まれたときから決まっていました。親の仕事を継ぐのが当たり前で、将来について悩むことはありませんでした。今のみんなは昔よりははるかに自由ですが、その分悩むことも多いわけです(どっちがいいですか?)。
 1回しかない人生ですから、将来のことで悩んだり迷ったりするのは当然です。あわてて結論を出すことはありませんが、どこかで決断もしなければなりません。

 山本は高校生の頃には「生物学を勉強して、世の中の公害をなくすための研究者になりたい!」などと考えていました(自分が喘息持ちだったのと、小学生の時読んだ校外についてのマンガの影響)。高校の先生から紹介してもらった生物の本を読んで、あんまり中身はよくわからなかったけれどなんとなくその本を書いた先生(京大の教授)のもとで勉強してみたいと思い(←アホ)、大学に入りました(京都に行きたい理由はもう1つあったのですが)。
 高校で生物をとっていなかったくせに大学で生物を専攻するのはきつくて、ずいぶん恥もかきました。何より大学では山本は落ちこぼれで、いい加減な大学だったのでなんとか卒業はできましたが、研究者にはなりたいが実力はないしどうしよう、という感じでした。
 なんとか大学院には入ったのですが、結局「お前は本当に研究をしたいのか!」「公害問題に真剣に取り組む気があるのか!」という自問自答に答えられず(勇気がなく)、2年でやめてしまいました。それからは色々ありましたが、バイトで始めた塾の仕事にはまりこんでしまって、結局高校生のときには一番なりたくなかった教師になってしまいました。後悔はしていないけれど、ずいぶん回り道をしたなあという気はします。
 自分が本当はどんな仕事に向いているのか、世の中でどんなふうに生きていくのが幸せなのか、高校で勉強するだけではよくわからないでしょう。山本にも(おそらく)高校の先生にも、そういうことをみんなに教える力はありません。大学に通ううちに自分の本当にやりたいことを見つけることもあるし、実際に仕事に就いてみないと自分が向いているのかどうかわからないこともあるでしょう。もちろん高校時代の夢をかなえて満足できればそれが一番ですが、そううまくいかない人もけっこういるのが今の世の中です。迷うときはどうすればいいのか?
 1つは「仕事について勉強してみる」ことです。インターネットや本で、仕事の中味や働いている人の思いを調べてみることもできるでしょう。大学について迷っているのならオープンキャンパスや学園祭に行ってみるのもいいし、本気で考えるのなら大学に「押し入り入門」する手もあります(山本はやったことがあるので、その気があるなら知恵をつけます)。保護者の人や高校の先生などオトナの話を聞くのも意味があるでしょう。大事なことを決めるのだから、考えるための材料を少しでも増やした方がいいと思います。そういう勉強は、自分がその仕事に就かなかった場合でも役に立つことがあります。やってみて損にはなりません。
 もう1つ山本が思うのは、そのときそのときで真剣に考えて本気で決断すれば、後悔はしないですむということです。今の自分のやってみたいこと、今の自分が真剣に考えてなりたいものがあるのなら、それをやってみればいいと思います。親御さんや友だちや先生など周囲の人の意見は大切だけど、そこに振り回されて自分自身の思いを見失ったら、後で後悔するかもしれません。1日くらい(1日ですよ)勉強をサボってもいいから、テレビもゲームも携帯もやめて自分のことを真剣に悩んでみる手もあります。「私は(ぼくは)絶対こうするんだ!」と言えるようになったら、それだけでも成長したと言えるでしょう。
 そして目標を決めたら、夢に向かって真剣に努力してみてほしいです。学校の宿題だからとか誰々が叱るからとか受け身で勉強するより、自分が本当にしたいことを目指して勉強する方が身につくし、やっていて気持ちがいいのです。山本はそういう人を何人も知っていますが、みんなびっくりするほどいい顔をしていました。みんなにもそうなってほしいです。
 めざすことがうまくいくとは限りません。大学にしても就職にしても、望みのかなわないことは出てくるかもしれません。でも本気で何かに取り組んだ経験は、その先どんなときでもみんな自身を支えてくれます。自分のために必死でやったことは決してムダにはなりません。
 色々な経験をしていくうちに、やりたいことが変わっていくこともあるでしょう。そのときはまた自分自身と向き合って真剣に考えて、別の結論を出してもいいと思います。進路を変えるのはなかなか大変ですが、本気で取り組むのならどこかに道はあります。とにかくいい加減でなく、そのときそのときのみんな自身の本気を出して進路を決め、努力してみてほしいのです。

 山本は何度も仕事を変えましたが、その中で少しずつ「子どもを教えたい、子どもの力になりたい」という気持ちが強くなり、結局本気で教師になろうと決めたのは27才のときでした。サラリーマンをしたり音楽の勉強をしたり寄り道をしましたが、それらの経験は今の山本にとってすべてプラスになっています。何も迷わずに教師になった人とくらべて劣っているところもあるけれど、そういう教師にはない"武器"だってあります。どちらがいいとか悪いとかいうのではなく、生き方には色々あって、どんな生き方にもそれを活かす方法があるということです。
 みんなの人生に点数をつけられるのは、みんな自身だけです。そして時間は後戻りしないので、「あのときこうしておけばよかった……」と思っても取り返しはつきません。だから自分の夢を真剣に考えて、今できることを(もちろん勉強とは限りません)ひたむきにやってみてほしいです。しんどいときもあるだろうし投げ出したくなるときもあるでしょうが、夢への気持ちが本物ならそれがみんなを支えてくれるし、山本もそんなみんなを支えていけます。
 まああまり重たくかまえなくていいのだけど、たまにはそんなことも考えてみてください。

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(2008/12/1)

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