常識をこえる力を


 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 お正月に生徒の人から年賀メールをいただきましたが、一番うれしかったのは
 「愛伸に行って先生に会って勉強の楽しさ、勉強の仕方を少しだけど分かる事が出来ました。……分からない所は何回も解きました。分かる!って素晴らしい気分ですね。」
 という文章でした。成績とか順位とか合格判定も大切だけど、勉強が楽しい、わかることが気持ちいい、そういう気持ちはきっと一生その人を支えてくれるように思います(山本もそうです)。
 もう1つは
 「成績とか関係なく親と話し合って僕の進路を実現させたいと思っています!! そのためにもっと広い視野をもって社会を知り知識を増やすような勉強をしていきたいと思っています。今年の目標は本を 100冊ほど読むことと、1日1日を大切にただなんとなくすごすのではなく考えながら有意義に使っていくことです! 次に先生と会う機会があったら人生について語ってください」
 ちょっと笑えそうなくらい力んだ文章ですが、山本はこういう人も大好きです。読書100冊の目標も素晴らしい。若いうちに本100冊分の「世界旅行」を体験しておくのは、問題集100冊解くより価値があるでしょう。いつか彼と人生について語れたら……いいかな?
 福岡の高校はどこも勉強についてかなりお尻をひっぱたいているようで、みんなもどうしても目先の成績が気になって、長い目で見た「かしこさ」について考える機会が少ないような気もします。まあ大学にも行きたいだろうし数字をよくすることも必要だし励みにもなるしいいのですが、……結局みんなは何のために勉強をしているのでしょうか?
 高校生だと、今勉強していることがオトナになってすべて直接役に立つということはないでしょう。これだけ苦労して頭に詰め込んでいることが役に立たないなんて何なんでしょうか。
 役に立たない勉強に意味があるとしたら、1つは最初の人のように「わかることが楽しい」ということだと思います。高校のうちに1つでも面白いなあと思える勉強を見つけられたら、それがオトナになってから自分の武器になるかもしれないし、他のことについても自分で勉強してみようと思えるかもしれません。
 もう1つは「本当は役に立たない勉強なんてない」ということだと思います。
 世の中はどんどん変わっています。20年前にはインターネットも携帯電話もありませんでした。1年前に今の不況を予測できた人もほとんどいないでしょう。来年の今頃日本や世界がどうなっているか、みんなの将来がどうなっていくのか、正確にわかる人なんていないでしょう。
 それでも、わかることやできることはあります。
 本当に世界の状況を勉強している人は一昨年から「アメリカのサブプライムが危ない!」と言っていました(いつか田中宇という人の本を読んでみてください。面白いよ)。携帯電話がなかった頃、こんなものができたらいいなあと夢を思いながら研究開発していた人たちがいたはずです。
 それは今まで勉強してきた知識や技術を使って「そんなものは起こるはずがない、できるはずがない」という常識をこえるという作業です。そのときに重要なのは、当たり前の知識だけでは新しいものは作れないということです。誰でも知っている当たり前のことだけでは"常識"はこえられないからです。どうしても人の思いつかないこと、新しいことを作り出さなければなりません。そういうときに一番有利なのは、勉強の幅が広いことです。今まで考えつかなかったような知識の組み合わせが、新しいものを作り出すことはよくあるのです。不況を予測するときに、世界の色々な状況を考えるためには、少しでもたくさんの知識を持っていた方がいいでしょう。携帯電話を作る人だって、アイデアに煮詰まったとき、数学や理科以外のことからヒントを得たかもしれません。
 今まで役に立たないと思っていた知識や技術が、思わぬときに役に立つ可能性は、誰にでもあると思います。山本はこの程度の教師ですが、みんなを教えていく中で、自分が経験したことがほとんどすべて役に立っているのがわかります(授業中に歌うとか? ……まあそれだけでもないからね)。大学院や会社や音楽学校や私立高校や学生時代のバイト先に至るまで、色々なところで自分が吸収したことをみんなのために役立てることができます。それは教師のいいところでしょうが、おそらく他の仕事でも、自分の持っているものを活かす方法はあると思うのです。それは学校での成績とか評価とかとは関係ないし、たとえささやかなことでも、"常識をこえる"ようなものになるなら、きっととっても気持ちのいい経験になると思います(ホントですよ)。
 これからの世の中は、おそらく大学の名前や「若さ」だけでは渡っていけなくなります。もともと今までの日本が学歴に頼りすぎていたので、これからそういう"見かけ主義"はなくなっていくでしょう。でもだからこそ、みんなは今までとは違う勉強のしかたを(高校や大学で)してほしいです。クイズ番組のような細切れ知識ではなく、頭の中で組み合わせて「常識をこえる」ための本物の勉強を、大学や社会に出てからも続けていってほしいです。
 ……高3の人たちがこれからの人生をうまく歩いていってくれることを、心から祈っています。(2009/1/5)

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