だまされないように?


 テレビのコマーシャルで「体にいいコラーゲンの入った○○……」とか、「マイナスイオンが空気をきれいにして……」とかいう宣伝を聞いたことがあるでしょうか。
 コラーゲンというのは軟骨などをつくる重要な物質ですが、これはたくさんのアミノ酸がペプチド結合で結びついたタンパク質です。タンパク質を食べると酵素によってアミノ酸まで一度分解されてから小腸で吸収されるので、結局コラーゲンを食べても他のタンパク質を食べるのと同じことになり、体の中のコラーゲンが増えるとは限らないことになります。本気で軟骨を増やしたいのならコラーゲンを直接体内に注射する方法がありますが、なかなかそこまでやる人はいないでしょう。食べるというのはお手軽な方法ですが、結局それではほとんど軟骨を増やす役には立たないのです。
 イオンについてはみんなも習っていますが、マイナスイオンというのはOHとかClのように負の電気を帯びた物質のことです。これらが特に体にいいというわけではありません(必要な分は食物や水から十分とっている)。コマーシャルを作っている会社の中には「マイナスイオンというのは−の静電気を帯びた物質のことで……」などと注釈をつけている会社もありますが、静電気はイオンとはまったく別のものなので、これだとコマーシャルはウソを言っていることになります。
 日本人は占いが好きだと言われますが、「ボクはA型だからまじめなんです」とか「君が雑なのはB型だからだね」とか「あなたはO型だから、AB型の私とはあわないね」とか、半分冗談でも血液型にこだわる人はオトナでも多いようです。山本は若い頃女の子にもてたくて、星座占いと血液型占いを覚えたことがありますが、これはけっこうききました(ホント)。 ……でも血液型とは赤血球にある「ヒゲ」の種類によって血液の種類を分けているだけで、輸血などの時に重要ではありますが、これが大脳の機能(性格)と関係があるという証明はされていません。血液型占いは星座占いと同じくらいいい加減(要するにウソ)なのです。一時期テレビでも血液型と性格が……という話題がよく出ていましたが、科学的な根拠がないこともあり最近は減っているようです。
 原子力発電のコマーシャルで「発電時にCO2を出しません」というのを最近よく聞きますが、これも実は発電時にというのがクセモノで、発電所をつくるときやこわすとき、そして数万年に及ぶ放射性廃棄物の管理のために消費されるCO2を計算に入れていないということです。石油を燃やす火力発電よりも、原子力発電の方が実際にはCO2をたくさん出すという計算もあります。
 やさしい言葉をかけたり、美しい音楽を水に「聞かせたり」しながら水を凍らせると、きれいな氷の結晶ができるという話もあります(そういう写真の本も出ています)。学校の道徳の授業でこういう話をする先生もいるようです。水でさえ気持ちが通じるのだから、みんなもやさしくなろう……というねらいなのかもしれませんが、もちろんこれもウソです。水が結晶をつくるときの条件(温度の下げ方、水の純度など)は気持ちや音楽と関係がないものであって、誰かの悪口を言いながらでもきちんとやればきれいな氷の結晶ができてしまいます。
 ここにあげたような"ごまかし話"は他にも色々あって、みんなのまわりでも探せばすぐ1つや2つ見つかるでしょう。ちょっとあやしいなと思えるものでも、難しい言葉を並べて説明されるとなんとなく正しいように思えてしまうかもしれません(山本でもそういうことはあります)。学校の教科書ですら、全部内容が正しいとは限りません。でもだからといってコロコロごまかされてしまうとしたら、みんなが長い間勉強してきた意味がありません。
 山本からすると、コマーシャルがウソっぽいとかいう話よりは、逆にみんなには伝えられていない情報があることが気になります。たとえば携帯電話から出る電磁波が人体(動物)にどのような影響を及ぼすのか、調べた実験結果はみんなにはほとんど知らされていません。誰かにとって都合の悪いような情報だと、テレビや新聞には出てこないこともあります。
 前に書いたように日本は資本主義ですから、金儲けが社会の中で大きな意味を持ちます。ウソをついて商売をすれば犯罪になりますが、ギリギリのところでお客さんをごまかして儲けようとする人は(残念ながら)います。また自分でも知らないうちに、まちがった知識を広めてしまっている人もいるでしょう。どちらにしても自分の身を守り本当にいいものを買ったり使ったりしようとすれば、ある程度は悪い性格になって?疑いながらものを選ぶことになります。そのときにみんなが勉強してきたことがホンモノかどうか試されるでしょう(理科に限りません)。
 勉強するのはなにかにだまされないようにするためだ、と言う人もいます。学習指導要領(学校の先生が子どもを教える手引き)には「生徒に生きる力をはぐくむことを目指し,……自ら学び自ら考える力の育成を図る」と書かれていますが、これもとりようによっては『もっともらしい話にごまかされずに生きる力を養う』と読めます。
 しかし実際に学校で具体的に「何かにだまされないための勉強」をしているという話は、あまり聞いたことがありません。それは何かを疑うということが行儀の悪い、よくないことのように思われているからではないかと思います。商売も教育もある意味"相手を信じること"が土台になっているので、何かを売ろうとしている人や教師をいちいち疑っていたら疲れてしまいます。
 山本は色々なことを疑うことも、だまされないために勉強することも意味があるとは思いますが、そもそもそのようにごまかそう、だまそうとする人が出てきてしまうことに対してどう考えるか、どうすればそのようなごまかしをしようと思わないですむか、ということも考えてみてほしいと思います。どんなにみんなが疑っても勉強しても、専門家がその気になれば人をだますのは難しくありません。だいたい人をごまかしたりだましたりすることが本当に気持ちいいはずがないので、そうしなければならないような世の中の仕組みを変えていけばいいのだと思います。そういうことを考えるためにも、やっぱりがんばって勉強してほしいです……あれ?結局そういうオチ?(2009/3/12)

通信の一覧に戻る

最初に戻る

inserted by FC2 system inserted by FC2 system