アメリカン・ジョークの楽しみ


 みんなにとって英語は、好きな科目の方に入りますか。
 山本の父親は中学校で英語を教えていましたが、英語を教えてくれたことは1度もなかった代わりに『たのしい英文法』という本を買ってくれました。この本には学校では習わない文法の説明が書いてあり、英語も数学と同じように理屈があるんだ〜と思った記憶があります。たとえばI have finished my homework.は現在完了で「宿題はもう終わった」ですが、これは「終わった宿題を(今)持っている」と考えれば、have+過去分詞であることの理屈が通るわけです。
 高校生の時に別宮貞徳という翻訳家の本を読んで、「翻訳は知的なパズルである」という言葉に刺激され、英語を日本語に直すことの面白さを感じるようになって、やたらと意訳するようになりました。テストではあまり意訳をすると減点されますが、自分だけで英文を読む分にはどうやってもいいので、たとえばI love youを「こんなに好きなのに!」とか「これが俺の気持ちだ」とか「今しか言うチャンスはないね」とか、好き放題に訳して遊んだりしていました。
 みんながいつか外国の人と話すとき、英語で通じ合える楽しさを味わえると思います。それは多分、単に英語が使えてうれしいということだけではありません。英語で話すことで、今までとは違うものの感じ方や考え方を身につけることができるからです。
 英語は普通主語と動詞(結論)が最初に来るので、だいたい何が言いたいのかは最初にわかるし、それが誰の意見なのかもすぐわかります。それに対して日本語は主語を言わなくてもいいので誰の話かぼかせるし、結論が最後に来るので相手の顔色を見ながら「どういう結論の言い方にしようかな」と考えられます。そんな文章の組み立て方や言葉の使い方の違いが、話している人の感覚や考え方まで変えてしまうのです。よく「英語を勉強する時は英語で考えなさい」と言いますが、日本語の時と感じ方や考え方を変えることが英語をわかるコツだということです。ある意味「別人に変身できる」とも言えるでしょう。文法がどうだとか試験によく出るとか考えずに、英語独特の言い回しを楽しんでみるのもいいと思います。
 山本は外国ドラマで「ER(救急救命室)」「アリーマイラブ(原題はAlly McBeal)」「プラクティス」あたりが好きです(ERは今NHKで土曜深夜にやっています)。セリフを読んでみましょう。
 まずは『ER』病気のお父さんと医者の息子の会話;

父 I'm craving a bloody mary. Your mother made them for brunch.
  ブラッディ・マリー(カクテル)が飲みたいな。母さんがよくつくってくれたんだ。
子 That's not a good idea.
  (体に悪いから)お勧めしないね。
父 You think it'll kill me?
  飲んだら死ぬか?
子 With or without Worcestershire?
  じゃあ、ウスターソースを入れる?
父 Without. But I'll take a dash of Tabasco.
  入れなくていい。代わりにタバスコを1滴入れてくれ。

 最後の「ウスターソース〜」というところがアメリカンジョークで、病気で死にかけているお父さんとの会話なのに妙に面白いですね。
 次は『アリーマイラブ』他の女性と踊っている夫を見ながら;

妻  Anybody know where I can get a turkey?
    (感謝祭だから)七面鳥売ってるところ知らない?
友人 You're already got one. Look there.
    もうあるでしょ。あそこの夫を焼いちゃえば?

 まーきついと言えばきついですが、ユーモアがあるので救われている感じです。
 次はどきどきキャンプのものまねで有名になった?『24』のセリフ;

 (ジャック=バウアーの娘とつきあっている部下Chaseが、交際を許してもらう話をしようとする)
 Chase, no day is a good day. (話すのに)いい日なんてないよ。

  直訳は「チェイス、ない日がいい日よ」という意味ですが、こういう時にno〜という表現をよく使います。ないことをはっきり言うんだ!という感じです(日本語だとこんなにキッパリ言わない)。

 It's the last thing (that) he wants for you. (交際を)彼が許すはずがないよ。

 直訳だと「それは彼があなたに望む最後のことだ」で、望むことを一番から順番に並べて最後にくること=ほとんどあり得ないというわけで、これも遠回しの面白い表現ですね。
 次はオバマ大統領の演説から。アメリカの政治家は特にユーモアのセンスが要求されます。大統領の予備選挙で戦ったヒラリー国務長官とのことで;

 You know, we had been rivals during the campaign, but these days we could not be closer.
 ご存じのように、予備選では我々はライバルでしたが、最近はこれ以上ないくらい近しいです。
 In fact, the second she got back from Mexico she pulled into a hug and gave me a big kiss.
 実のところ、メキシコから帰ってきた彼女は私を引き寄せ抱きしめ、盛大なキスをくれました。
 Told me I'd better get down there myself. Which I really appreciated. I mean, it was -- nice.
 あなたもメキシコに行った方がいいと言われました。彼女に感謝します。本当に………いい人だ。


 例のインフルエンザ問題でアメリカでも感染者が出て、大統領にもうつるのではという不安があります。そんな中でメキシコから帰ってきたヒラリーが「抱きしめてキスをする」ほど近くて仲がいいというのがオバマの言いたいことです。うつされるかもしれないのに(困っているのに)「it was nice」と言ってしまうところが面白いと思います。
 次はちょっとした社会風刺のジョーク(難しいかな);

 イラク人のテレビリポーターが、アメリカ人、アフガニスタン人、そしてイラク人にたずねた。
 What is your opinion about electricity shortage? (電力不足についてどう思いますか)

 それに対してアメリカ人は What's an electricity shortage? (電力不足って何ですか?)
 アフガニスタン人は What's an electricity? (電力って何ですか?)
 イラク人は What's an opinion? (意見って何ですか?)    と聞き返した。


 電力不足になることがない豊かなアメリカ、貧しくて電気がほとんど使えないアフガニスタン、意見を言う自由がないイラク、という3つの国の違いを皮肉っています。
 似たようなのをもう1つ(日本語だけ)

 ある酔狂な大富豪が言った。「もし青いキリンを私に見せてくれたら、莫大な賞金を出そう」
 イギリス人は、そんな生物が本当にいるのかどうか徹底的に議論を重ねた。
 ドイツ人は、そんな生物が本当にいるのかどうか、図書館へ行って文献を調べた。
 アメリカ人は軍を出動させ、世界中に派遣して探し回った。
 日本人は品種改良の研究を昼夜を問わず重ねて、青いキリンをつくった。
 中国人は青いペンキを買いに行った。

   (『世界の日本人ジョーク集』早坂隆、中公新書、2006年より)

 こういうジョークを見ていると、日本人が外国人からどう思われているのか見えるようで面白い(ちょっと不気味?)ですね。こういう話を信じている外国人もいるかもしれません。
 まあ何を面白いと思うかは人によって違うし、オトナにならないとわかりにくいユーモアもあるのですが、英語には英語の面白さがあるということをどこかに覚えておいてくれたら、いつか役に立つ時もあるのではないかと思います。英語を好きになるきっかけになったらいいですね。

 1人1人にメッセージ;  名前は書きません
(2009/5/14)

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