推薦入試について


 福岡に来て驚いたのは、公立高校でスポーツ推薦入試があることでした。
 山本がいた関西でも推薦入試はあるのですが、福岡ほどたくさん受けることもないし、またスポーツで合格できる公立入試はありませんでした。全国的に見ても、あまりないパターンだと思います。
 塾講師の立場から言うと、推薦入試は合格するかどうかの予想が立てにくく、塾でしている入試用の勉強が役に立たないので、「推薦は受けてもいいけど、どうなるかはわからないよ」という言い方しかできません。
 推薦で合格しても、上の学校に行ってから勉強で苦労する場合があります。「推薦で合格したけど、実力をつけたいから、最後までみんなと勉強したい」と言う人もいます。スポーツで合格した場合、けがなどで運動ができなくなると学校にいにくくなることもあります。推薦がよくないわけではありませんが、色々な条件を考えた上で決めてほしい、早く終わるしラクだからといってそれだけで受けてほしくない、というのが山本の気持ちです(押しつける気はないのだけど)。
 一方大学入試でも推薦入試があり、私立大学では一般入試より推薦入試で合格する人の方が多いというデータも出ています。国公立でもAO入試(アドミッション・オフィス、admissionとは入学許可、officeは研究室)といって、志望理由書(事前に先生と相談してつくる)と内申と面接で合否を決めるものがあります。大学の推薦入試は試験があっても科目が少なく、また一般入試より問題もやさしく、入試勉強は一般入試よりもラクです。その代わり学校の成績が入試とつながるので、高校の定期テストが重要になります。簡単に言えば「普段の勉強をこつこつやる人は推薦、実力勝負したい人は一般」ということになるでしょう。
 子どもが減っていて、私立大学の中には学生不足でつぶれるところも出てきています。学生を1人でもたくさん呼びたい大学からすると、入試を簡単にしてもいいからなるべく早く合格者を出して安心したいでしょう。こういうのを青田買いと言いますが、結果として学力のたりない、大学の授業についていけない学生がたくさん出てきています。6年前に大阪の私大を見学したとき、補習で高校の数Tや数Uの授業をやっているのを見ました。授業をする大学の先生からすればやりきれないでしょう。高校レベルの補習をしなければならない分、本来大学で勉強するべきことをこなしきれないこともあるでしょう。インターネットで見ていると、高校レベルの問題が解けない大学生の質問がたくさん出ていて、そういう質問に対して「自分で調べなさい!」というお叱りの返事が出る場合もあります(山本は甘いのでけっこう答えてるけど、それがいいのかどうか……)。
 入試勉強の中には、大学で役に立つ部分とそうでない部分があります。学力不足で大学に行くのがいいわけではありませんが、卒業ギリギリまで入試のための勉強だけするのがいいとも限りません。高校は大学の予備校ではありませんから、本当はクラブも趣味も遊びも楽しむべきです。そう考えれば、高校生活を楽しみながら推薦で大学を決めるという考え方もあるでしょう。どんなことにでもいい面と悪い面があるので、最初からどちらかに決めてしまうのは勧められません。
 国公立大学のAO入試は少しずつ減っていて、九大ももうすぐAO入試がなくなります。公立高校の推薦入試も全国的には減ってきています。これからは推薦主体で入りやすい私立と、一般入試だけで入りにくい国公立に二極分化していくのかもしれません。これが「私立大学の卒業生はダメだ」とバカにされるような結果にならないといいなと思いますが……
 入試がどうなるにしろ、高校で勉強するべきことは高校でやっておくべきだし、大学入試勉強だけのために高校の3年間をつぶしてしまうことにも賛成できません。人生には高校でしかできないことだって、たくさんあるのです。大学に合格することも大切だけど、みんなにとって一度だけの高校での時間をどんなふうに使うか、たまには考えてみてほしいです。(2009/7/7)

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