くらべることの意味


 全国学力調査の結果が発表されました。高1と高2の人は、中3の時にテストを受けたことを覚えていると思います。
 数学(算数)と国語について、それぞれ基礎と活用の2つのテストをし、今後の教え方などの参考にしようというものです。都道府県別、国公私立別の平均点が公表されています(下の表)。
 学校のテストをちょっとひねったくらいの問題で、習ったことがわかっているかどうかを見るにはまあまあいい問題かなと思います。ただ結果が出るのはそれぞれの学校を卒業する半年前なので、ここからひとりひとりの学力を底上げするには時間が足りない感じがします。小5と中2でやればいいのに。
 ニュースでは「福岡県はまだ全国では下位の方で……」とか、「中学校(の順位が悪いこと)は深刻。自治体の長の責任だと思う。保護者は怒ってほしい」と言う大阪府の知事とか、順位を気にする報道が目立ちました。大阪や秋田、大分など、都道府県単位だけではなく市町村別の結果を公表するところもあります。テストの主催者である文部科学省は「市町村や学校単位で結果を公表するのは序列化につながるのでやめてほしい」と言っていますが、公表するべきだという意見もかなりあります。みんなはどう思いますか。
 たとえば宗像の中学校でテストの成績を公表すれば「この中学校は成績がいいからいい学校だ」とか「あんな成績の悪い中学校に子どもを行かせたくない」という話が出てくるでしょう。それも事実だから表に出ても仕方がない、むしろはっきりさせた方が先生への刺激になっていい、という考え方もあるかもしれません。どちらかというと先生は公表に反対する人が多く、保護者は公表してほしい人の方が多いという調査結果もあります。
 山本は結果を公表するかどうかよりも、そもそもテストの結果をどうとらえるかを考えます。テストの結果というのは、誰かと比べないと意味がないのでしょうか。
 テストというのはもともと「習ったことが頭に入っているかどうか調べる」「自分の学力がどれくらいなのか試す」ことが目的です。病院に行って体の色々なところが健康かどうか検査するのに似ています。だから生徒本人と教師(と保護者)以外は、そもそもテストの結果を知る必要はありません。テストは本来人と比べるものではないのです。
 入試は点数のいい人から合格するので順位が問題になるし、だから入試を目標とする塾では順位を意識させますが、タテマエで言えば勉強そのものは入試のためのものではないので、なんでも順位を出せばいいというものではありません。
 山本から見ると、順位を出したり比べたがるのは、人と比べないと安心できない、自分ひとりで自分をはかる基準をつくれない、という意味で"しんどい"のではないかと思います。福岡県の平均点が全国平均より低いとしても、それで「君は福岡県だからダメだ」ということにはなりません。逆に全国トップの秋田県に住んでいるからといってそれだけで成績がよくなるわけではないので、秋田に住んでいるからといって威張れないでしょう。学校にしても同じことです。もし宗像全体の中学生の学力が下がっているとしたら、その中での順位がいいとか悪いとか言うのはほとんど意味がありません。
 もっと言えば、点数の目標をどこに置くかは人によって違っていいので、100点でないから悔しいという人も、60点とれればOKという人もいていいはずなのです。そういうひとりひとりの違いを無視して、数字だけを取り出して比べることに夢中になるのは、なんだかヘンな感じがします。
 もしどうしても共通の基準を作れというのなら、これからオトナになっていくみんなに最低限解けてほしい問題にした上で「100点以外は全部不合格」にするべきです。そうすれば順位にこだわるのはバカバカしい話になるでしょう。
 もし点数を比べることに意味があるとしたら、学校の先生が教え方を工夫することで、昨年よりも今年の方が成績が上がったというようなことでしょう。またひとりの生徒が同じレベルのテストを何回も受けて、だんだん点数が上がってきたのなら、その分賢くなったと言えるので意味があるかもしれません(病院の検査と同じ)。しかしこのテストは毎年少しずつ試験の問題レベルや問題量が変わっているので、昨年と今年の結果を比べることができません。このテストが続くのかどうか今のところわかりませんが(政府が民主党に変わるためなくなる可能性もある)、続くのであれば意味のある比べ方ができるような形にしてほしいです。
 点数を人と比べて何かを言うのは簡単だし、それでやる気になる人もいるかもしれません。ライバルと競争することが励みになるのなら、それはまちがっていないでしょう。でも勉強の本当の意味を考えるとき、このような『競争原理』だけに頼っていいのか疑ってみるべきだと思います。
 本当に自分に自信のある人にとって、他人と比べることはほとんど何の意味も持ちません。オトナの世界でもそれは同じです。山本はみんなに、みんな自身と勝負してほしいです。それが他人と比べても問題ない結果を出すための一番の方法だと思うのです……(2009/9/2)


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