才能って何かね


 将来何になりたいかわからない、という高校生は多いでしょう。みんなの中では6人中約(?)2名、オトナになって何をしたいかわからないという人がいます。今将来の夢を持っている人でも、この先やりたいことが変わる可能性だってあるでしょう。
 高校生が将来のことまで考えてきちんと決めるというのはなかなか難しいでしょうが、理系文系の選択とか大学入試のこともあるので、ゆっくりしていられないのが辛いところです。
 世の中にどんな仕事があるのか、その仕事がどんなやりがいや苦労を伴うのか、高校で学ぶ機会は少ないと思います。みんなの中で『13才のハローワーク』を読んだ人もいますが、あの本だけで実際に仕事をしている人の気持ちが十分わかるわけでもないでしょう。仕事を紹介するという点では、NHK教育テレビでやっている『あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑』(毎週火曜23:30〜、再放送金曜19:35〜)もお勧めです。
 「やりたいことがわからないから、とりあえず大学に行って考える」という高校生もたくさんいます。それがまちがっているとは思いませんが、"とりあえず"大学に行くために入試勉強をがんばりきるのはしんどいし、後でやりたいことが見つかっても大学の学部が合わなくて就職に苦労する場合もあります。高校ならまだしも、大学は本来「とりあえず」行く場所ではないのです。前にここで書いたように世界基準なら18才はほとんどオトナですから、自分の将来の夢を持ってほしいと山本は思います。
 世の中で働くのはラクではない、とよく言われます。たしかに責任を負って働くのはしんどいし、ストレスがたまることもあります。でも自分の好きなこと・やりたいと思ったことを仕事にしていけるのなら、イヤなことがあっても乗り越えて続けていけることが多いのです。何となく就職してそれが"天職"になることもありますが、自分の思い入れのない仕事を続けていくのは難しい面もあります。自分のしたくない仕事に就いて一生後悔する、という展開だけは避けてほしいです。
 山本の好きな言葉ですが、松田道雄さんという小児科医がこんなふうに書いています;
 『教育の目的は、子どもの天分を見つけることと、それで食べていけるようにすることだ』
 ここでの天分という言葉は、才能と言い換えてもいいでしょう。どんな人にも必ず才能があって、それを世の中の役に立てながら生きていくことが、人間にとって一番幸せなことだと思います。
 私には才能がない……という人もいるでしょう。才能というのは、人間の中に"隠れている"もので、簡単に見つかるものではありません。少しくらい歌がうまいからといってすぐに歌手になれるというものではないでしょう。色々な方向から山を掘ってダイヤモンドを探すように、あちこちの分野で辛抱強く自分を試してみて、はじめて自分が何に向いているかわかるのです。今までみんなが国語とか美術とか家庭科とか色々な科目を勉強してきたのは、才能がどこかに隠れているみんなの"山"をあちこちから掘ってみよう、という意味もあるのです。
 みんながやってきた勉強の中で、これは面白いなとか、将来に役立てられそうだというものがあれば、それをとことん追求してみてほしいです。それが具体的な仕事に結びつかなくても、より深く大学で勉強したいと思えるなら、りっぱな動機です。ある科目が好きになったのなら、難しい問題を解けるまで粘って粘って、解けたときの喜びを味わってほしいです。学校の枠にとらわれる必要もありません。オトナ向けの本を読んだり、大学生向けの勉強に手をつけたっていいのです。今の高校はそこまでさせてくれるヒマがなかなかありませんが、本気で自分の才能を掘り起こそうとするのなら、どれだけのめり込めるか、力を伸ばすことを楽しめるかが勝負です。才能は努力して磨かなければ石と同じです。自分の人生を本当に楽しみたいのなら、苦労しても力をつけてほしいのです。その苦労がきっとみんなの一生を助けてくれるからです。教師は子どもの才能を見つけて伸ばすのが仕事ですから、山本もみんなの助けをしていきたいと思っていますが、教師にできるのはアドバイスでしかありません。みんなの人生はみんな自身が切り開くしかないのです。
 もちろん才能というのは、数学や英語という形だけで出てくるものではありません。子どもが好きで先生になりたい人、アルバイトで接客の楽しさを知ってそういう仕事に進む人、ゲームが好きでゲームのプログラマーをめざす人、色々です。実際に働いてみなければ、自分が向いているかどうかわからないこともあるでしょう。今は色々な仕事について知ることが必要です。どうしてもやりたいことがわからないのなら、一度社会に出て働いて、世の中を"味わって"から大学を目指す手だってあります。学校の勉強は土台であって、それだけで世の中で何かができるわけではありません。世の中に出てから活かせない勉強など、からいばりの道具にしかならないのです。
 山本も18才の時は「日本の公害をなくしてやる!」とか考えて研究者になろうと思っていましたが(勉強も好きだったので)、バイトで始めた塾講師の仕事がだんだん面白くなって、結局今までこういう仕事を続けています。本気で教師になろうと思ったのは27才の時ですから、自分の才能に気づくのがとても遅かったことになります。お金と時間のむだ遣いとも言えますが、今までやってきた色々な経験が仕事の中で役に立っているのもわかるので、あんまり後悔していません。
 途中で夢が変わってもいいし、遠回りしてもいいのです。ただその時その時の自分に向き合って、自分はどういう人間なのか、何をしたいのか、ということを本気で考え続けていてほしいです。将来を考えることから逃げないでほしいです。

1人1人にメッセージ
  • ベクトルの面白さがわかってくれたようでよかったです。英語以外の勉強の面白さをたくさん感じておくことは、決してムダにならないよ。あとはどんどん過去問を解いていきましょう。
  • まあやる気になったのはいいことかな。君には才能があると思うけど、磨かなければタダの石と同じです。自分の才能を信じて磨く努力をしてほしいです。数学はもう少し粘ってみるかね。
  • 英語はどうですか。今はそれなりに時間もあるだろうから、なにか1つでも目標をつくってやってみるといいと思います。やりきった達成感を味わえたら自信を持てると思うのだけど。
  • テストまであと1ヶ月、とにかく毎日机に向かって勉強する習慣をつけることです。英語の田之上流も早くできるといいのだけど。クラブをいいわけにするなら何もできないよ。
  • 体育祭のチアなかなかかっこよかったですよ。何でも一生懸命やってみるのはいいよね。これからしばらくはテストに向けて勉強もがんばってみませんか。ちゃんと復習すればまた90点とれるよ。自信をつけてほしいです。
  • トライアルの復習をしっかりやれば点数は上がります。範囲が広い分早めに手をつけていきましょう。計画を立てて他の科目も勉強を始めておきたいですね。応援しています。

(2009/9/9)


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