プロ野球を考える


 ソフトバンクホークスは今年は3位でしたが、プレーオフで楽天に負けてしまいました。みんなはプロ野球にどれくらい興味を持っているでしょうか。
 10年くらい前までは毎晩プロ野球のテレビ中継があり、視聴率もドラマやバラエティより高かったのですが、だんだん見る人が減ってきて、今はテレビではあまり放送しなくなりました。昔よりサッカーの人気が上がった分、野球ファンが減ったという話もあります。しかし子どもに好きなスポーツ選手を聞くと、1位はダントツでイチローだしベスト10に野球選手が5人も入っています(下のグラフ)。また男の子の将来なりたい職業でも、野球選手は毎年上位に入っています。子どもの頃は野球が好きでも、オトナになると興味がなくなってくるということでしょうか。
 プロ野球の人気がなくなってきたとしたら、その理由の1つは「不公平さ」だと思います。巨人や阪神など一部の球団が高い給料で他のチームのいい選手を引き抜いたり、くじ引きで公平に新人を選ぶはずのドラフトでもいい選手を勝手にとったりしました。たとえば今の巨人には前のヤクルト・ロッテ・日本ハムの4番とヤクルトのエースがいるし、阪神タイガースの4番と5番はどちらも広島カープから来た選手です(なので『広島タイガース』などと呼ぶ人もいます。阪神ファンとしては悔しいけどしかたなし)。
 巨人はセリーグで3年連続優勝しましたが、これではまるでお金の力で勝っているようで、つまらないと思う人も多いでしょう。「お金をかけてチームを強くするのは企業(会社の)努力として当然だ」と言う人もいますが、スポーツの面白さは企業の金もうけの理屈とは違います。それぞれのチームに公平に選手が回るようにした上で、チームの中の努力や工夫で勝ち負けを競うべきでしょう。どう思いますか?
 巨人などが他のチームのいい選手をとるようになったのと同じ頃から、日本の選手が毎年何人もアメリカ大リーグに行くようになりました。日本人で本格的に大リーガーとして活躍したのは野茂投手(1995年から)、野手ではイチロー(2001年から)が最初で、この2人が成功したことで日本からたくさんの選手がアメリカに移籍するようになりました。現在は20人ほどがアメリカでプレーしていますが、その中には日本でのドラフトを断り、アマチュアから直接アメリカに行った田沢投手(今年は2勝3敗)のような人もいます。今年の甲子園で活躍した花巻東高校の菊池投手も、直接アメリカに行く可能性があります。
 もともと日本のプロ野球はアメリカを手本として生まれ発展してきたので、日本の選手がアメリカの野球に憧れるのもわかります。いい選手もたくさんいるし給料も日本より高い(大リーグで一番給料の高いアレックス=ロドリゲスは年俸約30億円!)ので、向こうに行ってやってみたい気持ちは多くの選手にあるでしょう。
 しかし日本の野球にも、日本なりのよさがあります。大リーグの試合はたしかに豪快ですが、日本のように細かい駆け引きや小技はあまり見られません。アメリカはWBC(野球の世界大会)には一線級の選手をあまり出しませんが、それにしても7勝7敗で半分しか勝てていません。2大会連続で優勝した日本の選手にはもっと日本の野球に自信を持ってほしいと思うのですが、どうなのでしょうか。
 日本の野球に魅力がなくなっているとしたら、一線級の選手がどんどんアメリカに行ってしまい、日本全体が「アメリカの2軍」のような状態になっているからかもしれません。よそから選手をとりまくっている巨人の4番だった松井秀喜がアメリカに行ってから、テレビの視聴率がはっきり下がり始めたのは偶然ではないでしょう。皮肉です。
 野球を含めたスポーツの魅力は、人間の生き生きとした姿をたくさん見られることだと思います。高校野球が面白いのは、技術的には未熟でも、勝つために選手みんなが一生懸命になっている姿が感動的だからでしょう。お金や技術も大事でしょうが、ファンの人が見て感動できるプレー、選手とファンが一緒になって笑ったり泣いたりできるような試合を続ければ、日本でもアメリカに負けないようなすばらしいプロ野球ができると思うのです。みんなはどう思いますか?(2009/10/21)


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