基本と、粘ること


 勉強でも何でも、基本が大事です。土台ができていないのに難しいことをやろうとしてもうまくいきません。成功している人は必ずといっていいほど、基本をきちんとマスターしています。
 たとえば数学の基本は、1つは計算力や図をかく力、もう1つは公式など重要事項の「意味とでき方と使い方」を理解することです。
 2次関数の基本は、中3で習う@y=axのグラフです(下図のア)。これは頂点が原点、軸がy軸(x=0)のグラフです。これを平行移動して頂点が(p,q)になるようにすると、Ay=a(x−p)+qというグラフになります(図のイ)。この平行移動の考え方が少し難しいのですが、わかるとこれ以外の形のグラフも全部平行移動できるようになるので、大事なところです(数U・数Vでこの理屈はとても役に立ちます)。
 そうやってできたAの式を展開すると、By=ax+bx+c という形になります。この形はyやxの値を代入して計算するのには便利なことが多いです(そうでない場合もあります)。ここからさらに因数分解できる場合にはCy=a(x−α)(x−β) という形にすることもできます。この式はy=a(x−α)(x−β)=0としてみると「y=0になるときのxの値がα,β」という意味になります。これを図に表すと図のウとなり、αとβはグラフとx軸との交点を表すことがわかります。Bの式をCの形にできない(実数になるα、βがない)ときは、このグラフがx軸と交わらないことになりますが、このときa(x−α)(x−β)=0は実数解を持たないので方程式の判別式<0となります。つまり判別式を求めることで、グラフとx軸の交点があるのかどうかを調べることができるのです。
 ゴチャゴチャ書きましたが、ここまでが2次関数の「基本」です。式の意味の理解、式を変形する計算力、きれいにグラフをかく力……これらができることが重要です。よく右のようなパターンを丸暗記しようとする人がいますが、なぜそうなるかがわからずに形だけ覚えると、学校のテストにはある程度対応できても入試問題では半分くらいしか通用しません。センター試験などは割合パターンが決まっていて対策が立てやすいのですが、それでもここに書いたことがほぼ全部出てくるし、問題の条件がややこしいので、意味を理解した上で使い分ける必要があります。
 こうやって見ていくと本当に大変そうですが、実際には文系の人が受ける数学の入試問題は(センター試験も含めて)この基本だけで5〜6割くらいとれるのです。やさしいところならこれだけで合格します。そうでなくても7割とればだいたい合格点なので、解かなければいけない応用問題は全体の1割程度になります。これは他の科目でもほぼ同じだと思ってかまいません。
 応用問題といっても、九大とか東大とかの難関校でなければ、ほとんどが基本の組み合わせにすぎません。三角関数と2次関数を組み合わせたり、因数分解と命題(必要条件とか)を組み合わせたりして、何をどう使ったらいいのかわかりにくくして混乱させようというわけです。
 だからあとはそういう入試問題をながめて「これは基本の何と何を組み合わせて使ったらいいのか」を考えることです。これは高校入試ではあまりしなかった練習で、だから中学の時より時間がかかります。最初は何が何だかわからないかもしれません。解説を読んだり説明を聞いたりしてもいいのですが、自分で問題をながめながらじっくり考えてみることも必要です。難しい問題に時間をかけるのは苦しいかもしれませんが、わかったときのうれしさも格別です。ゲームで強いキャラを倒すのが楽しいように、難問を粘って考えて解けたときには、「できた!」と叫びたいほどの喜びがあります。特に数学にはそういう問題が多いと思います。数学が面白いなんて思えないという人もいるでしょうが、本気で難しい問題に取り組んで答までたどり着ければ、誰だって理屈で考えることの楽しさを味わえるのです。せっかく勉強しているのだから、そういう経験を高校のうちに経験してほしいです。オトナになってもそういう「基本と粘り」が役に立つんですよ。(2009/10/28)


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