つっこみを入れよう


 山本はもともとは名古屋育ちなのですが、高校を卒業してから20年以上関西で暮らし、感覚としては「関西人」です。
 福岡にいて感じるのは、大阪とくらべてあまりしゃべらない、おとなしい人が多いことです。みんなのような高校生くらいまではあまり差がありませんが、オトナと話したりテレビのローカル番組を見ていると「大阪だったらもっとうるさく色々言ってくるだろうに、福岡の人は静かだなあ」と思うことがよくあります。
 これは土地柄なので、どちらがいいとか悪いとかという話ではありません。日本の中では関西はかなり特殊な場所で、おそらく福岡くらい「おとなしい」のが日本の平均に近いのだと思います。山本が18才で名古屋から京都に行った最初の頃は、「なんで関西(特に大阪)の人はこんなによくしゃべるんやろ?」と思いながら、機関銃のようにしゃべる大阪出身の友だちにウンザリしていたことも覚えています。
 関西人のまねをしてほしいというわけではありませんが、おしゃべりにはおしゃべりのいいところもあります。ここで説明したいのは「ツッコミを入れる」というやつです。
 ツッコミというのは漫才でボケた(面白いことを言った)人に対して、「それは○○やろ!」と言う人(ここでどつくこともある)のことです。うまいツッコミはボケの面白さを引き出し、漫才をより面白くします。アメリカにもお笑い芸人はいますが、ボケだけでツッコミがないのが普通(だからコンビだと2人ともボケになる)で、日本のお笑いとはずいぶんノリが違うようです。
 福岡のテレビ番組を見ていると、誰かが面白いことを言っても「それは○○でしょ!」と言ってつっこむ人がほとんどいないので、笑いがそれ以上広がらずに"止まってしまう"ことが多いように思います。大阪のテレビ番組だとつっこまないタレントはほとんど使ってもらえないので、誰かがボケるとみんなが競ってツッコミを入れるのがけっこう面白いです。そういうボケとツッコミのやりとりの面白さは、もともと福岡にはないものなのかもしれません。文化のできかたが違うということでしょう。
 別にみんなに漫才をしてほしいわけではなくて、誰かと話をするときに「ツッコミを入れる」感覚を持ってみたらどうか、ということです。
 人の話を聞くときに、相手の言っていることを全部疑わずに聞き入れるという場合もあるでしょう。でもたとえば学校の授業で先生の言うことを「そうかそうか、そうなんだな、ふ〜ん」と言って聞いているだけだと、眠くなるかもしれないし頭に入らないこともあります。それは相手の言い分を一方的に聞いているだけで、相手の言っていることを自分なりに考えて理解しようとしないからです。そういうときに頭の中で「ツッコミ」を入れてみるといいと思います。
 「微分とは……ということである」←(そうか、でも何で"微分"って言うのかな?)
 「ミトコンドリアは、生物が生きていくエネルギーをつくり出す場所である」←(そうか、つまり生きもののエンジンにあたるところなんだな)
 「仮定法はifじゃなくてwouldやcouldがキーワードです」←(助動詞の過去形が仮定法か、"ウッドが仮定法"とか覚えたらいいかな)

 ……なんていう調子です。多分みんなもこんなふうに考えながら先生の話を聞いていることがあると思います。それをもっと意識して、相手の言うことに対して自分の考えを頭に浮かべるようにしながら話を聞いてみると、同じ話を聞いていても頭の入り方が違うし面白くなります。
 勉強するときには、教師の言うことをよく聞いてそのまま吸収しなければならないこともあります。でもそれだけでは教科書の中身を頭にコピーしているようで面白くないし、勉強はもともと受け身でするべきものではありません。できるなら教科書や先生(山本もですよ)の話を鵜呑みにするのではなく、頭の中で上のようにツッコミを入れたり、実際にそれを相手に言ってみたりすることもあった方がいいと思います。自分で考えるのは一方的に聞いているより面白いし、山本はそういうツッコミを聞くのが好きだし、そこから新しい発見があるかもしれないし、成績を上げるカギにもなると思います。本当に勉強ができる人は、面白い"ツッコミ"ができるものなんですよ。

1人1人にメッセージ
(2009/11/25)


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