頭のよさって何だろう


 山本は『クイズ・ヘキサゴンU』という番組が好きで、よく見ます。
 この番組が面白いのは、クイズのあまりできない「おばかキャラ」が番組を盛り上げているところです。問題をどんどん解ける賢い人よりも、台形の面積も計算できない人たちが一生懸命考えてそれでも答がわからない、そういう人たちが"主役"になっているのが普通のクイズ番組と違うところです。
 この番組に出ているタレントさんはみんな、それなりの給料をもらっているでしょう。台形の面積が計算できなくても生活には困らないだろうし、人気が出れば普通の人よりはるかにもうかります。(この間"難しい"を"なんしい"と読んでいたのにはさすがにあきれましたが……)まあ長い目で見れば人気が続くとも思えませんが、「頭がよくなくても困らない」という1つの例かもしれません。
 もう1つ、『Qさま』というクイズ番組も時々見ます。これは逆に「高学歴タレント」がたくさん出てきて、やたらと難しい漢字の読み書きなどをしています。漫才コンビ・ロザンの宇治原君がよく出るのですが、彼は京大卒が売りで、最近はお笑いよりクイズの方が出番が多くなっています。相方の管君が『京大芸人』という本を書いて話題になりました(勉強法の本らしい)。宇治原君はクイズ番組では活躍していますが、この間灘中学の生徒の人と対決してボロ負けしていたのを見て、なぜか笑えてしまいました(上には上が……)。
 こういう番組で出るクイズには、特徴があります。それは
 「知識があれば考えなくても解ける」ということです。
 薔薇(バラ)という漢字が書けるかという話がよく出ますが、この漢字を書くのに考える力はいりません。知っていれば幼稚園の子でも書けます。これがもし「なぜバラはこんな字になったのか考えなさい」という問題だったら、漢字が書けるだけでは答えられないし、逆にこの字が書けなくても色々なアイディアを出せる人もいるでしょう。薔薇という漢字が書ける人と、薔薇という字の成り立ちについて色々なアイディアが出せる人だったら、どっちが頭がいいと言えるのでしょうか。
 山本はロザンが嫌いではないのですが、漫才はあまりうまいと思いません。宇治原君ほど漢字を知らなくても、彼より面白い芸人はたくさんいます。お笑いというのはある意味頭を使う仕事で、いつも面白い話ができる人、自分の芸以外でも笑いをとれる人というのは、学歴や知識と関係なく頭のいい人だと思います。それは「何かを知っているだけでなく、その場その場でどうしたらいいかを考えて行動できる」ということです。
 山本がみんなに勉強を教えるとき、どういう教え方が一番いいか考えます。Sさんには面白さをわかってもらえるように、Nさんには前の復習から引っ張って勢いをつけて、Mさんにはあまり説明せずに自分でできるところまで解かせて、S君は納得させることと問題を解くことを両立させる方法を、Wさんはいいところを見つけてほめながら弱点をわかりやくす指摘する、などなど。それは山本の身につけている「教える知識」を誰にどうあてはめるのがいいのか「考えて」「その場その場での対応を決める」ということです。それがうまくできているかどうかはわかりませんが、教えるという仕事は知識だけではできないということです。どんな仕事でもきっとこういう「状況に応じて考えて対応する」ということがあるでしょう。それは難しいし失敗することもあるけれど、誰かに言われたことをその通りにやるよりもはるかに面白いし、進歩も生み出せるのです。
 知識はもちろん必要ですが、たくさん覚えればそれでいいというものではありません。自分の知っていることを、仕事や遊びや友だちづきあいなどすべてに活かしていける力が「頭のよさ」なのだと思います。暗記に苦しんでいる人にはいつか「覚えるだけ」を乗り越えてほしいです。

 1人1人にメッセージ (2009/12/16)


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