土台をつくること


 塾の数学の授業についてどうするか、考えています。
 たいていの塾では、学校のように講師が授業の内容を一方的に決めて授業をするか、個別指導で生徒と内容を相談しながら勉強していくかのどちらかをしています。この塾でも理科は、山本が勝手に内容を決めてどんどん授業をしていますが、教える立場から言うとこっちの方が準備がしやすいし、自分の持っている知識などをたくさん効率よく教えることができます。ただ授業の内容が生徒ひとりひとりに合っているとは限らないし、授業だけではあまり力がつかないのに「勉強したつもりになってしまう」危険があります。
 逆に個別指導だと、生徒が一番やりたい勉強をできるし、いらないところを飛ばしたりわからないところで時間をかけたりできますが、教える側のプラン通りにいかない分、教えられる知識の量は少なくなります。塾での個別指導の給料は集団授業の給料よりたいてい安いのですが、それは生徒数が少ないからだけではなく、集団授業ほど準備がいらない(というより、準備ができない)こともあるように思います。
 この塾でどんな形の授業をするのがいいのか、3月から悩んできました。学年も学力も志望校も違う18人に1つの授業をすることはできません。かといって個別指導をするには、教える方の人数が少なすぎます。
 ところで前にも書きましたが、福岡の高校は朝や夏休みなどに課外授業をたくさん組んでいて、学校にもよりますが宿題や小テストもかなりボリュームがあり、塾に行かなくても学校のメニューをこなしているだけでかなり力がつきます。実際高校での勉強だけで志望校に合格している人がたくさんいることは、みんなも知っているでしょう。
 数学なら、ニューアクションとかフォーカスとかチャートとかの分厚い問題集を学校で買って持っている人がかなりいます。これらの問題集は入試で出る問題のパターンを一応一通りさらっているので「網羅系」と呼ばれます。これらの問題集を何回も解いて問題の解き方を頭に入れていくのが、最も確実に力をつける方法です。みんなの持っている分厚い問題集のどれでも、完璧にこなせれば国公立大の2次試験まで十分通用します。
 学校でも塾でも、網羅系問題集のすべての問題を解説する時間はありません。特に塾は授業時間が短いので、基本的なことだけを説明するか、基本ができていることにして応用テクニックの一部を説明するくらいしか(山本には)できません。受験を数ヶ月後に控えている人たちには、それでもちゃんと復習してくれれば意味がありますが、まだこれから先の長い1〜2年生は、やみくもに小手先のテクニックを学ぶより、時間がかかっても網羅系の問題集を少しずつ解いていって「ものにする」方が、結局ムダがなく時間をかけずに絶対的な力をつけられます。これは受験生も同じで、4月からチャートを解いている人は、入試の直前まで何回も例題の見直し・解き直しをして「この本の問題なら解ける!」という自信を持つことが、土壇場での勝負強さにつながります。
 山本の時代にはまだ網羅系問題集はなくて、高校では数研出版のオリジナルという薄い問題集だけを使っていました。数学を得意科目にしたかったので、『新数学演習』という問題集を買ってきて自分で解きました。
 ……難しい。解説を読んでもわからない。学校に持っていっても先生が相手をしてくれない。どうしようもなくて泣きそうになりましたが、とにかく解説を見ながら手を動かして式や図をかきまくり、3日でノート1冊つぶすくらい試行錯誤しながら考えました。教科書くらいの厚さの本を解くのに8ヶ月かかりましたが、これとオリジナルだけで塾にも行かず入試は全部のりきりました。あれだけ難しい問題集を解いたのだから他の問題が解けないはずがない、という自信はたしかにありました。随分苦労したけど、数学を武器にできたのは大きかったです。
 人によって勉強の仕方は違っていいのですが、土台作りが大切なのは誰でも同じです。数学のような積み重ねの科目ほど、基本からしっかりつくってきた人の方が強いと思います。
 もし塾の新しい授業を土台として考えるのなら、授業での説明を理解するための予習と、問題が全部解けるようになるまでの復習をすることです。センター数学も数学VCもテキストを使いますが、本気で取り組めば誰でもこの本を「完璧」にできるし、土台として十分使いこなせます。
 この塾で成績を上げていこうとするのなら、どの授業をとるにしても「土台をつくる勉強」を意識してほしいと思います。自分で問題集を解いて質問しまくるのもよし、授業を受けて説明を聞いて納得しながら予習復習に励むもよし、学校の宿題をひたすら解いて成績を上げるのもよし。どうするか自分で考えて決めるのも大切な勉強です。それが結局この塾のいいところだと思いますよ。(2010/9/8)


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