基礎をどうつくるか


 成績が上がらなくて悩んでいる人は多いと思います。せっかく塾に来て勉強しているのだから、テストでいい点をとりたいのは当たり前です。どうしたらいいのか教えてあげたいのですが、うまい言い方が見つからなくてもどかしく感じることがよくありました。
 どんな科目でも、基本が大事です。大学入試では応用問題も出ますが、本当に難しい問題はみんな解けないので、受かるかどうかには関係ありません。また一見難しく見える問題でも、多くは基本問題を組み合わせているだけです。だから結局は基本問題を解く力と基本を組み合わせる力で、ほとんど勝負がつきます。学校のテストや模試も同じです。では基本をしっかり身につけるには、どうすればいいのでしょうか。
 数学の場合、まず教科書を読んで中味を理解して、教科書の問題をもれなく解けるようにすることです。教科書はページ数も問題数も少ないので、本当に必要な問題しかのっていません。またどうやって公式が導かれるのか、なぜそういう式が成り立つのかということも、最低限書かれています。最低限ということは、その内容は絶対にわかっておかなければならないということです。みんなは教科書の内容を完全にわかっていると言えますか? ただ公式を暗記しているだけではなく、なぜそういう公式ができるのか説明できますか? 教科書のどこかがわかっていないと、そこが問題を解くときの「穴」になります。しかもどこが穴なのか本人にはわからないので、なんだかよくわからないけど解けないという感覚になり、お手上げになります。本当に勉強ができる人は、教科書の内容をスラスラ説明できるものです。時間をかけても力がつかない、何から始めていいかわからないという人は、教科書に戻ってみる価値があります。
 たとえば数Aで習う方べきの定理は、式だけ見ればab=cdというだけですが、これはもともと円に内接する四角形の角の性質と三角形の相似から導かれるものです。入試ではab=cdを使うだけでなく、上図のa:d=e:fを使ったり、またどの角が等しいかを聞いてきたりします。公式だけ覚えるのではなく、どういう流れでこの公式ができたかを知っていれば、そういう問題にもすぐ対応できるし、別の三角形の相似のパターンでも同じように自分で公式を考え出すことができます(たとえば下図)。この力は、入試問題を解くときにとても役に立ちます。
 学校の授業で教科書を説明するはずですが、授業の後で教科書をもう一度読んでみて、説明でわからないところがないか、解けない問題がないかチェックしてみる手があります。また学校の授業での説明がよくわからない、スピードが速くてついていけない場合には、授業の前に教科書を読んで、わからないところ・知りたいところをチェックしておく方法もあります。予習だと新しいことを学ぶので興味が湧きやすいし、わからないところがあっても後でなんとかできるという安心感もあるので、人によっては予習の方が向いています。一度やってみる価値はあります。
 ただし教科書には「答がついていない」「解説が詳しくない」という欠点があります。その場合には、教科書の説明を見ながらわからないところを問題集・参考書で調べるとか、教科書を読みながら問題集の問題を解く方法があります。学校や塾の先生に説明を聞く手もありますが、教科書全部を説明するのは話す方も聞く方も大変なので、まずは本に頼ってやっていくのがいいでしょう。
 わかっているかどうか自信が持てないときは、人に説明してみるのがいい方法です。ただ覚えているだけで理屈が頭に入っていないと、人にわかるように説明することができないので、人に教えることで、どこがどれだけ本当にわかっているかはっきり確認することができます。友だちと教え合うのはとてもいい勉強方法です。受験勉強をやり通すのにいい友人は不可欠です。
 どういう方法をとるにしても、教科書の内容を完全に理解して、教科書の問題を全部解けるようにするのが、力をつけるのに最も簡単で確実な方法です。そのことを覚えておいてください。
 勉強に限らず、どんなことでも基本は大切です。これからみんなが生きていく中で色々な能力を身につけていくときに、小手先のごまかしに走らず基本をしっかり身につけていくことが「本物」になる秘訣です。そのためにも、基本を大切にすることを知っておいてほしいです。(2011/3/23)



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