はやぶさ帰還


 7年前に鹿児島から打ち上げられた探査衛星「はやぶさ」が、小惑星イトカワから地球に帰還しました。計画より3年遅れ、全部で60億km(地球から太陽までの20往復分)を飛び、度重なる故障で一時は絶望視されていましたが奇跡的に地球の大気圏に入り、カプセルを切り離した後燃え尽きました。イトカワの砂が入っているかもしれないカプセルは、無事オーストラリアの砂漠で発見・回収されました。月以外の星の物質が地球に持ち帰られると、世界初の快挙です。
 普通のロケットエンジンは燃料を燃やして後方に噴射し、その反作用で進むのですが、はやぶさに積まれていたイオンエンジンは気体を加熱してプラズマ(電気を帯びた状態)にし、電極で加速して噴射するというもので、推進力は非常に小さいのですが燃料が少なくてすみ、長距離飛行に向いていると言われます。このエンジンの試験と、小惑星に着陸して試料を持ち帰ることを目的としたこの計画は、たとえ試料を持ち帰れていなかったとしても、半分は成功と言えます。目的地となった小惑星は地球と火星の間の軌道を回っている直径330mのもので、日本のロケット開発の功労者である糸川英夫さんにちなんで、はやぶさの打ち上げ後にイトカワと命名されました。
 地球や火星のような惑星は、重力が大きいために星の物質が色々変化していて、星が生まれた頃のようすがわかりにくくなっています。たとえば地球はできたばかりの頃は全体がマグマでできていたが、今は全く異なります。重力の小さい小惑星は生まれた頃とようすがあまり変わっていない可能性があるので、イトカワの砂が採取できると、太陽系ができた頃のようすを知る手がかりがわかるかもしれません。
 はやぶさは色々な最先端技術を詰め込んだロケットで、イオンエンジンの他にも、カメラで見た映像を分析して自分でどう飛行するかを"判断"する自律航行システムなど、すばらしい機能を持っていました。このような技術開発では、日本は世界でも非常に進んでいる国の1つです。みんなが学んでいる数学や理科もこういう技術につながっているのですが(たとえば2次関数はロケットを打ち上げる際の軌道、また推進力の計算には微積分を使うなど)、それがみんなになかなか実感できないのは、日本の高校生の勉強の仕方がテスト本位になりすぎているからではないかと思えます。山本もできたらどんどんこういう話に「脱線」したいのですが、全然時間がたりません。残念なことです。
 はやぶさ2号の計画も立てられているのですが、不景気でロケット開発にかけるお金がなく、昨年の事業仕分けでも予算が削られ、メドが立っていません。はやぶさ2号には170億円かかると言われていますが、それだけのお金をロケットに使うのか、みんなの生活のために使うのか、難しいところです。みんなはどう思いますか。
 国のお金を使って研究を行うべきかどうかというのは、突きつめるとほとんどの大学での勉強にもあてはまります。特に国公立大学に行く人は、他の人より税金をたくさん使って勉強するのです。そのことの意味を、一度は考えてみてほしいです。(2010/6/16)


通信の一覧に戻る

最初に戻る

inserted by FC2 system inserted by FC2 system