意味を考える


 生物は覚えることの多い科目です。同じ理科でも物理とか化学と比べて、計算や理屈で考えることが少なく、言葉などを覚えることが多いです。
 ウニの卵で「これが桑実胚」「ここが内胚葉」とか言われても、そこに理屈があるようには見えません。じっくり考えて問題を解くというより、テスト前に必要なことを丸暗記して、それで点数をとって一安心……という人もいるかもしれません。  先生が黒板に書いたことをそのまま何も考えないで写して、それを見ながら宿題を解いて満足する人もいるでしょう。
 たしかに名前を覚えることも大事です。何も知らないでものを考えることはできないので、考えるための土台になることは覚えておかないといけません。でも「覚えるだけ」になってしまったら、勉強の面白さ、考える楽しさを感じなくなってつまらないでしょう。山本の授業がそういうふうになってしまっていることもあるので、申し訳ないと思っています。
 中間テストが終わってからみんなのノートを見ましたが、思っていた以上にたくさんの人がきれいにノートを書いていてくれました。前の先生のしつけもあるだろうけど、みんながきちんと授業を受けようとしているのがわかってうれしかったです。  ノートを見ていると、板書になかった書き込みをしてくれている人が何人かいます。「ここは大事!」って書いてあったり、キラーT細胞がマンガでかっこよくわかりやすくかき直してあったり。たまに「眠いよ〜」っていう落書きもあるけど、まあそれはそれで。
 何かを学ぶときには、それにどんな意味があるのかを考えるのがいいと思います。意味といっても色々ありますが、
 「今日はカエルの発生を勉強します」←カエルを勉強する理由は?
 「腎臓では不要物を排出します」←不要物ってどんなもの?
 「この部分を『原口背唇部』と言います」←なんで「背唇」なの?
 ……というように「なぜそうなるのか」「それにはどんな意味があるのか」を少しだけでも考えてみると、単に言われたことを覚えるだけの勉強ではなくなってきます。
 授業中にそういう質問が出ることがあります。「なんでそうなるんですか?」 「それってどういう意味なんですか?」 「いまやってるこれと前やった○○は関係あるんですか?」 「この間テレビで見た××と今やってるこれは関係があるんですか?」 など。何でも言えばいいっていうわけじゃないけど(けじめはつけてね)、疑問を持つことは賢くなるためにいいことだし、人から教えられるだけでなく自分で色々自由に考えてみることは、勉強の面白さを知るためにも大切です。
 どんなものにでも意味があります。原口背唇部は、原口という「口」の唇にあたるところで、卵の背中側にあたるので、「原口の背中側の唇の部分」という意味です。一次間充織なら「はじめ(一次)に外胚葉と中胚葉の間を充たす組織」ということになります(はじめ間充繊と教えてしまいましたがまちがいです。ゴメンナサイ)。特に漢字には1文字ごとに意味があるので、丸暗記するよりひとつひとつの字から言葉全体の意味を考えるとわかりやすいです。できるだけ授業の中で説明するようにしますが、新しい言葉が出てきたときに「この言葉はどんな意味かな?」というのを自分で考えてみるのも面白いですよ。
 生きもののしくみには、理屈で説明できることと、そうでない(なぜそうなっているのかわからない)ことがあります。ヒトの眼が2つあることには「遠近がわかるためには、眼が2つあった方がよい」という意味(理由)がありますが、鼻の穴が2つある意味はよくわかっていません。ウニやカエルの卵が原口陥入するのも、腎臓で血液(血しょう)が一度全部ろ過されて細尿管に行くのも、遺伝子の正体がタンパク質でなくDNAなのも、どういう意味があるのか、なぜそうなのかという理屈を考えることはできます。教師の説明を聞いて納得するだけではなく、「なんでそうなるのか?」「そのことにはどんな意味があるのか?」と考えて、自分なりに説明(仮説)をつくったり、教師に聞いたり、調べてみるのは、とてもいい勉強です。そんなことも考えながら授業を受けたら、きっと楽しいですよ。(2011/11/7)


先週の「コメント」
 理科関係の新聞記事を時々配っています。時間がなくて詳しい解説ができないのが申し訳ないのですが、授業の後で読んでくれる人もいてうれしいです。
 いつもコメントを書いて出してくれている人がいます。鼓膜の手術の記事には「祖父にも知ってほしいです」とか長い記事を読んで感想を書くのは簡単ではないけど、世の中のことを知って、それに対する自分の考えを自由に書いてみるのは楽しいし、点数とも成績とも関係のない勉強は気楽なので本気で楽しめます。山本もコメントを読んでお返事を書くのが楽しい。「こんなことを考えてるんだ〜」って感心したり感動したりすることもあります。ホントだよ。
 少しだけでもコメントを書いて、名前を書いて出してくれたら、お返事を書いて返します。無理に書くことはないけれど、書いてくれたらうれしいです。賢くなれるよ。



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