自分のことは自分で決める


 今年度の生物の授業はもうすぐ終わりです。来年度またみんなを持つかもしれませんが、まだわかりません。
 この半年間、生物の授業を受けてきて、どうだったでしょうか。慣れないことが多くてみんなを混乱させたり、教え方が悪かったこともあったと思います。テストの成績は……全体としてはまあまあなのですが、みんながどれだけ賢くなったのか、考える力がついたのか、振り返ってみると反省することが多いです。「生物が好きになった」って言ってくれる人もいて、それはとてもうれしいけど、全体として自分がどれくらいのことができたのか、正直よくわかりません。

 授業でも話しましたが、山本は高校でも大学でも授業中よく寝ていました。数学とか理科とか好きな授業は聞いているのですが、退屈になるとどんなにがんばっても眠気に勝てなくて、居眠りしては先生に怒られていました。朝7時から夜7時までクラブで(バレーボール部の万年補欠)きつかったのもあるけど、授業中にどうしても起きていないといけないって思っていませんでした。当時は推薦入試がなくて高校の通知表は落第でなければどうでもよく、テストで合格点をとればそれでいいやと思っていました。古文だけは苦手で何回も赤点をとりましたが、留年はなんとかまぬがれました。高2の2月にクラブを引退してからも好きでない授業はよく寝ていましたが、家で猛勉強してなんとか大学に合格しました。入試についてだけなら、授業で寝たことは致命傷にならなかったのです。
 ……が、つまらなくなると寝てしまうクセはオトナになっても残りました。会社で会議中に居眠りして上司に怒鳴られたり、大事なことを聞き逃して失敗したこともあります。若いうちについたクセはなかなか治りません。今のうちにいい習慣をつくっておいてほしいとは思います。

 みんなはあと3年すれば、法律的にはオトナ(成人)です。オトナってどんな人のことだと思いますか? お酒やタバコが許されるとか、選挙に行けるとかいうことでしょうか。
 山本は、オトナというのは「自分のしたことに自分で責任をとれる人」のことだと思います。
 20才になったらお酒が飲めるというのは、子どもには特にお酒が体によくない(肝臓をこわす)という意味もありますが、オトナになったらお酒を飲んで楽しむことも、それで体を悪くするかもしれないことも、誰かのせいにしないで自分で引き受けるということです。選挙に行けるというのは、誰かを選べるというだけでなく、その選挙の結果で政治や世の中がどうなっても責任をみんなで引き受けるということです。本当はもう1つ、自分の生活費を稼ぐというのもあるけど、日本の大学生にこれを求めるのは酷でしょう(アメリカなどでは、奨学金などを利用しながら自活している大学生もたくさんいます)。
 そうやって考えると、20才を越えていても、自分のしたことに責任をとれない「オトナでない人」が、世の中にはけっこういます。自分が何か失敗してしまったとき、責任をとらないで誰かのせいにして逃げる人は、ちゃんとしたオトナと言えません。子どもをつくっておいて、虐待したりちゃんと育てない人も一人前のオトナだと言えません。みんなにはそんなふうになってほしくないです。
 この学校の校訓には「自己責任」という言葉がありますが、みんなはまだオトナではないので、自分の行動の責任を全部とることはできません。どうしようもない失敗をしたら、オトナに助けてもらうこともあるでしょう。今は自分のできる範囲で、自分の行動に責任を持てばいいのです。
 授業中に寝るのは、教師の授業がよくないという面もあるでしょう。科目や教師を選べない今の学校制度では、すべての責任がみんなにあると言い切れないと山本は思います。
 でも授業で寝てしまうか、がんばって起きて授業を聞くか、最後に決めて行動するのはみんな自身です。授業を聞いて成績を上げたり賢くなるチャンスをつかむことも、そうしないことも、結局全部みんなが背負うことです。山本はみんなに起きて授業を受けてほしかったし、実際何度も起こしましたが、それがみんなにとって本当によかったのかどうか、今でもよくわかりません。誰かに無理やり起こされて勉強するよりも、授業中に寝たことの責任をいつかみんな自身がとる(追試になるとか、賢くなれなかったことを後悔するとか)ことで、オトナになるための大切な経験をすることだってできるかもしれません。……そういう葛藤にいつも悩みながら、教えてきました。みんながどう思っているのか、今でも聞いてみたいです。
 本当は、勉強は誰かに強制されたり義務ですることではなく、また成績や入試のためでもなく、みんながオトナになったときにちゃんと生きていくために、そして世の中が「見える・わかる」面白さを知るためにするものです。信じられないかもしれないけど、本当にそうなんだよ。
 もう半分オトナになりかけているみんなには、誰かに言われるからイヤイヤ授業を聞くのではなく、ただ眠いから何も考えずに寝るのでもなく、自分にとって何が必要なのか、自分が何をめざすか、そのためにどうするべきかを考えて行動してほしいのです。場合によっては学校の授業に頼るのではなく、自分で本を買ったりして勉強することだって必要です(その方が授業よりたいてい面白い)。自分のことは自分で決めて自分で責任を負う、それが素敵なオトナになるために必要だし、実は人生で一番楽しくて面白いことなのです。そのことを、できたら覚えておいてほしいです。

 この半年、しんどいこともあったけど、みんなと一緒にいていやな気持ちになったことは一度もありませんでした。みんな素直でいい子で、大好きでした。いっぱい励ましてもらったし、山本の勉強にもなりました。この学校でみんなを教えられて、とてもうれしかったです。
 本当にありがとう。みんな元気でね。また会えたとき、いい顔を見せてほしいです。(2012/3/12)



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