日食があります&科学みらい展


 日食があります
 5月21日(月曜日)の朝早くに、日食があります。
 福岡では部分日食で少し空が暗くなるくらいですが、専用のスコープを使ったり(森先生がつくったものを買えます)、ピンホールカメラで見ると、7時25分に太陽の9割(91.3%)まで欠けているのがわかります。東京や静岡や鹿児島では金環日食といって、太陽の一番外側のわずかな部分だけが見える状態になります。
 日食とは、太陽が月の陰に入って見えなくなる現象です。太陽は月の400倍の大きさがありますが、月と比べると400倍遠くにあるので、結局地球から見ると月と太陽はほぼ同じ大きさに見えます。だから月がちょうどすっぽり太陽を覆い隠すように見えるのです。これは考えてみるとすごい偶然で、なんでこうなっているのか科学的には説明できません。もっとも月は1年で3.8cmずつ地球から遠ざかっているので、いずれは太陽より月の方が小さく見えることになります。太陽と月が同じ大きさに見えるのが偶然なのではなくて、同じ大きさに見えるこの時代にみんなが生きているのが偶然だとも言えます。
 皆既日食は太陽本体からの光が完全にさえぎられて見えなくなること、部分日食は一部だけ隠されて暗くなることです。山本は皆既日食を見たことはありませんが、あちこちの皆既日食を見に行っている友人は、会うたびに「死ぬまでにあれを見なきゃ損だよ!」と言います。国際天文連合のジェイ=パサチェフ教授は「部分日食を見て日食を見たという人は、オペラハウスの前に立ってオペラを見たというようなものだ」と言っています。皆既日食を見る外国旅行ツアーには毎回数百〜数千人が参加するそうです。2009年には皆既日食が見られるトカラ列島や奄美大島に、たくさんの人が押し寄せました。
 日食は歴史の中にも登場します。『古事記』に出てくる神話で、太陽の女神であるアマテラスオオミカミが天の岩屋の中に隠れ、世界が真っ暗になってしまうというお話がありますが、これは日食を元にしてつくられた話ではないかといわれています。平安時代には京都で皆既日食が起こり、驚いた政府が死刑囚を釈放したという話もあります。神聖ローマ帝国のルイT世は、父親が日食の後に亡くなったことから日食恐怖症になり、自らも日食の1ヶ月後に死亡、その後王権を巡って争いが起こり、帝国は3つに分割され、これが今のフランスやドイツの起源になりました。昔の人にとって太陽が消えるというのは、よほどびっくりする重大な事件だったのでしょう。
 皆既日食が近づくと、急に気温が下がって寒くなります。普段あまり見えない水星などが見え始め、夕方とは違う独特の暗さがやってきます。インドの動物園では、ゾウは鼻でつかんでいた草を落としてすぐにねぐらに帰り、多くの鳥類が最初は騒いでいたがピークには静かになり、タンチョウヅルやフラミンゴは突然眠り込み、逆にクマのような夜行性の動物は日食中も活発に行動したと報告されています。一番騒がしかったのはサルだったとか(人間が日食に興奮するのと似ているのかも?)。多くの動物には生物時計といって、まわりの明るさと関係なくだいたいの時刻がわかるようなしくみがありますが、本来昼間のはずの時間にいきなり「夜」が訪れると、生物時計が混乱してしまってとまどってしまうのかもしれません。
 みんなの住んでいる地球は、宇宙の中では本当にちっぽけな存在です。地球よりはるかに大きい太陽だって、宇宙の中ではごく平凡なありふれた恒星の1つです。宇宙がどんな構造をしているのか、未来の宇宙がどうなっていくのか、わからないことだらけです。日食を見ることが、普段あまり感じない宇宙の不思議さを感じるきっかけになれば、それがあなたのものの感じ方や考え方の変わるきっかけになるかもしれません。
 次に皆既日食が見られるのは、福岡だと2187年(!)、日本だと2035年9月(長野・前橋など)、外国まで含めれば2015年3月(北大西洋・北極海など)です。山本もそのうち皆既日食を実際に見て、その感激を将来の教え子に伝えたいなあって思っています。みんなもいつかこの天体ショーを間近で見られるといいですね。

 ドラえもんの科学みらい展を見てきました
 博多区川端の福岡アジア美術館で催されている「ドラえもんの科学みらい展」(職員室の廊下にポスターが貼ってあります。5月27日まで)を見にいってきました。
 休日の昼間に行くと、小さい子どもとお父さんお母さんがいっぱい。人気のあるアトラクションは行列ができていて1時間待ち。高校生はあんまりいなかったかな。でも展示内容は、どちらかというと高校生向きでした。
 ドラえもんに出てくる不思議な道具の中で、現実にできているもの、できかけているものを展示していました。
 日本語で話しかけると英語や中国語など外国語に翻訳する機械。これはもう実用化されてる。
 会話のパターンを記憶し、人間と普通にお話しするロボット。
 ヒトが頭の中で考えたこと(脳波の変化)を読みとって動くロボット。また指の細かい動きを読みとって、人間の数百倍の力で動くロボット。体の不自由な人やお年寄りにはとても役に立ちそうです。
 タケコプター代わりのひとり乗りヘリコプター。子どもが喜んで乗って写真を撮っていました。
 人間の体の中に入って、病気の場所を調べたり、必要な場所にだけ薬を投与する、大きさ3cmほどのロボット。
 管を飲み込む今の胃カメラ(これがまた苦しい〜〜)と違って、カブセルを飲み込んで小腸まで自然に送られ、そこから無線で画像を送るカプセルカメラ……などなど。
 特に人気があったのは、透明マントとタイムマシン。電気回路を使って光を曲げ、そこにあるものが見えないようにする「透明マント」は大人気でした。マントをはおったところだけ透明になるのを見て、子どもたちはびっくりしていました。今まで透明人間のアイデアは色々ありましたが、これは理論的には完全なので、実用化できるかもしれません(透明人間になれたら何をしたい?)。
 タイムマシンはもっと人気で、ブースの中に入れなかったので、紹介パンフレットを読んでみると、「ワームホールを通って現在から過去へ」。ワームホールは宇宙にあると言われている時空の穴で、これを通り抜けると現在から過去に行けると言われています。でも地球上にワームホールがあるはずはないので、結局ワームホールの模型をつくって、タイムマシンに乗った気分を味わうだけ。ちょっと肩透かしだったかも。こちらは透明マントと違って、まだなかなか実用にはならないみたいです。
 ドラえもんに出てくる不思議な道具に憧れて、こういう発明をした研究者も少なくないでしょう。みんなもドラえもんを見て、こんな道具があったらいいなって思うことがありますか?
 世の中を便利にしてきた発明や研究の多くは、「これができたらいいな」という願望や夢がもとになっているものです。そんなのムリ!ってはじめから諦めてしまわないで、少しずつでも知恵を絞って新しいものをつくっていけば、いつかタイムマシンだって本当に現実になるかもしれません。みんなだってたくさん勉強して知恵を絞り続ければ、ドラえもんの道具を発明できるかもしれませんよ。(2012/5/11)



通信の一覧に戻る

最初に戻る

inserted by FC2 system inserted by FC2 system