皆既日食を見に行こう/やり直しの勧め


皆既日食を見に行こう
 いつも理科室で実験のお手伝いや準備・片づけなどをされているM先生は、天体ファンです。学校で望遠鏡を使って(夜に)土星の観測をしたり、あちこちに星を見に行ったりしておられます。5月の金環食は東京まで見に行かれたそうです。6月の金星日面通過のときは、みんなに金星を見てもらうために、普段の仕事の合間に望遠鏡の準備などで大忙しでした。
 3年前に中国まで行って皆既日食を見たときのことを、お願いして文章にしていただきました。いい文章です。ぜひ読んでみてください。

 2009年7月、皆既日食「黒い太陽」を求めて、中国へのツアーに参加しました。
 福岡から上海へ、さらに飛行機で1時間、バスで2時間ほど移動して、宿泊場所の安徽省安慶市へ。観測場所は桐城市天城中学校。理科系の中学校(日本なら高校)で、校舎内には15cm屈折望遠鏡とドームが設置されています。正門から校舎までのエントランス(入り口)はゆうに500m以上あり、すべてコンクリート舗装です。そこが観察場所になります。
 このツアーの企画者、山口天文協会の小林正照会長はこれまで皆既日食ツアー6戦6勝(6回とも天気がよくてよく見えた)ということで、事前に気象情報や現地の状況(交通事情・スモッグ)などを綿密に調査、研究された上で観測地を決定してありました。何事も事前準備・調査は大事だと思います。
 当日朝の天気は曇り、薄い雲が空を覆って、太陽は見えない。う〜ん、ここまで来て曇りとは。でもだんだんと波状のいわし雲の間から、明るい太陽と肉眼でも食が確認できる柔らかな太陽が交互に見えてきました。いい感じ!
 同じツアーの中には、大きなカメラや望遠鏡、ビデオカメラを持ってきている人がたくさんいらっしゃったので、ときどき覗かせてもらいながら欠けていく太陽を観察しました。
 そしてあたりが薄暗くなり、涼しさを感じ始めて、いよいよ皆既日食。太陽が月に完全に隠された瞬間、暗闇に包まれ360°の夕焼けがあり、明るい星たちの輝きを確認することができました。まわりは歓喜の声があがり、シャッター音と歓声でいっぱい。私も「すごい!」を連呼。気温も一気に下がり、太陽エネルギーの大きさを体感しました。コロナをまとった黒い太陽は神秘的で美しく、その瞬間をとてもありがたく感じました。ダイヤモンドリングもばっちり見ることができました。そして自分の小ささや、自然の大きさ、宇宙の不思議、いろいろなことを考える機会となりました。
 5分30秒ほどの皆既日食が終わると、メインイベントは終了。校内を散策してかわいい三日月型の木漏れ日を撮影したり、また現地の人たちと日食メガネを使って一緒に観察して交流しました。
 先日、日本中で話題となった金環日食ですが、同じく太陽・月・そして地球が一直線上に並んだときに起こる現象です。リング状の太陽も実際に見たくて関東まで出かけました。奇しくも同じく薄雲がかかっていましたが、大丈夫!と、根拠のない自信を持ってその時を待ちました。そしてちゃんと金環食の太陽も見ることができました。
 月の見かけ上の大きさが小さくて、太陽を完全に隠すことができないときに起こる金環日食は、部分日食の特別なものです。残念ながら皆既日食とは違って真昼の真夜中体験はできません。やっぱり皆既日食は格別です。
 太陽・月・地球が絶妙な大きさと距離で並んでいることで起こるこれらの現象は、偶然とは思えないほど不思議です。広い宇宙の太陽系にいる私たちは、宇宙の中ではあまりにも小さな存在です。奇跡ともいえるこの命のありがたさを考えさせてくれる体験はとても貴重なものでした。
 今度日本で起こる皆既日食は2035年9月2日。北陸〜関東の一部で見られます。ぜひ皆さんもこの体験をしてみてください。

 M先生が書いておられる通り、日食(月食も)は、太陽と月の見かけの大きさがほとんど同じであるために起こる現象です。想像できないほど広い宇宙の中で、奇跡的に生命の存在するこの地球にいる不思議、その地球から月や太陽を身近に感じられる日食や月食を体験できる不思議……
 どんなことでもそうですが、話に聞いたりテレビで見たりするのと、実際に経験するのは随分違います。特にこういう大規模な現象は、実際にその場にいないとわからないことがたくさんあって、一度経験すると「やみつき」になってしまう人もたくさんいるのです。ものの考え方や生き方が変わるかもしれません。
 もし機会があるなら、今から23年後、次の日本での皆既日食をぜひ見てほしいです。山本はそれまで生きている自信がない(!?)ので、外国に行ってでも(一番早いのは今年の11月、オーストラリア)見に行きたいなと思っています。そういう経験も人生を豊かにしてくれるって思います。
 この学校では興味のある先生が中心になって、望遠鏡を使った天体観測を時々行っています。授業ではないし時間が遅いので生徒はなかなか参加できませんが、物理教室(大教室)の廊下のところに予定が書いてあることがあります。興味がある人はのぞいてみてください。
 M先生、素敵な文章をありがとうございました。



勉強の仕方について――やり直しの勧め
 期末テストはどうだったでしょうか。納得できる結果を出せましたか?
 普段の授業での取り組み、家での勉強(宿題)など、今までがどうだったか、これからどうするか、考えてみてほしいです。
 生物は覚えることが多いので、テスト前にあわてて勉強を始めても、なかなか点数が上がりません。平凡ですが、普段からの地道な勉強が最も効果的に点数を上げる方法です。
 学んだことをしっかり覚えるためには、いくつかコツがあります。他の科目にも通じることなので、ここで紹介しておきましょう。
 @意味やつながり、理屈を考えること
 たくさんの言葉をバラバラに覚えるのではなく、つながりや言葉の意味を考えるのが、覚えるためには効果的です。たとえば細胞小器官の場合、ミトコンドリアや葉緑体や小胞体などをバラバラに覚えるのではなく、形が似ているもの(二重膜のもの、平べったいものなど)や名前が似ているものに分けてみるとか、体をつくっているタンパク質の流れ(核の命令によってリボソームでつくられ、小胞体を通ってゴルジ体から外に出ていく)を考えるとか、なぜミトコンドリアの中にひだがたくさんあるのか、なぜゴルジ体が平べったい形をしているのか考えてみるとか、できることは色々あります。覚えることを単純作業にするのではなく、色々考えながら覚えていくことで、脳の色々な部分を活用していけるし、その分頭によく入ると言われています。
 A短期間のうちに何度も見直す
 忘却曲線というのがあります。エビングハウスという人の実験によれば、人間は何かを覚えてから短時間の間にかなりの部分を忘れてしまいますが、忘れる前におさらい(復習)をするとその記憶が強化され、何度もおさらいするとどんどん忘れにくくなるということです。
 たとえば授業があった日の夜に、5分だけでもノートの見直しをして、何を勉強したか思い出す。次は翌日に宿題を解いてまた思い出す。次の授業中に宿題の答合わせをしながらまたまた思い出す。そしてテスト前にもう一度復習して思い出す。テストでまちがえた問題は解き直しをしてまたまたまた思い出す。入試がある人は半年後にまた復習して思い出す。面倒なようですがこれだと1回1回はあまり時間がかからないので、結局一番時間をかけずに確実に覚える方法です。復習をしなさいって色々な先生が言うのは、生物学的に根拠のあることなのです。自分なりの勉強の計画をつくって、効率よく勉強する習慣をつくっていってほしいです。応援しています。(2012/7/11)


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