大学ってどんなところだっけ?

 教育実習で化学を教えに来ていた人と、少し話をする機会がありました。帯広から来ていて、今4回生。大学院に進学するとのことでした。(現在女性の就職は史上最悪に近い状態です。彼女も『友人は大変そうです』と言っていました)このクラスの人とも何人か話をしたようです。
 実は山本も大学の1回生の時、母校(名古屋の高校)に話をしに行ったことがあります。ところが出てくる質問は
 「どんな勉強法をしていましたか」
 「物理が得意になるコツは何ですか」
 「塾はどこに行けばよいのでしょうか」etc.
 俺は受験相談員か!と腹を立てた記憶があります。
 とは言うものの、高3になれば目の前の受験のことしか目に入らなくなるのもやむを得ないのかもしれません。ならば高2のうちに、大学の話をしておいた方が良いかな?などと思います。

 ことK大学に関しては「東の一橋・西の京大」と並び称される「卒業するのが簡単な大学」でした。講義(普通90分)が1週間に22コマあるのですが、出席を取る講義はごく一部(『代返』でごまかす場合も多かった)で、ひどいときになると1週間に2日、4コマ出るだけで、あとは延々と遊びまくっても何とか卒業できる・・・というところでした。試験(前期9月・後期2月)の前になると優等生のノートのコピーがそこら中で売られ、文字通りの1夜漬けでクリアできる試験が半分くらいはありました。昔の有名な話としては「模範解答のコピーを机の中に入れておき、試験の解答用紙にそれを直接張り付けるだけで合格する」という信じ難いものもありました。(・・・しかしどうも事実だったらしい)
 もっともこれは教養(1・2回生)のことで、専門(3・4回生)になるとそうそうさぼれません。特に理系の人は実験が増えてくるとどんどん学校にいる時間が長くなり、ついには学校に住み着く人(研究室に寝袋を持ってきてソファーで寝る)も出る始末。生きものを扱うと実験用の動物の世話や24時間体制の実験などもあり、面白いけど大変です。

 理学部にはこんな専攻がありました(今でもほとんど変わってない):

 ★数学専攻−−−メシより数学が好きな人。他の人が問題を見ても字が読めん。日本の中で一番数学の得意な人の集まりと言ってもよい→雰囲気もちょっとヘン。(・・・だったと思う)
 ★物理学専攻−−−マジでノーベル賞を狙っている人(過去ここから2人賞を取っている)もたまにはいるが、普通の人も割合多い。グループで実験をすることが多いので、人間関係がうまくこなせないと辛い。
 ★地球物理学専攻−−−地震とか天気とかを学ぶ。ので京都にいる方が少なく、あっちこっちに行っては調査をしているらしい。「オゾン・ホール」などの研究もしているだろう。
 ★宇宙物理学専攻−−−星の話。プロの研究者になるか学校の教師になるくらいしか就職がない。望遠鏡ばかり見ているわけではなく、むしろコンピュータで計算ばかりしている。
 ★地質鉱物学専攻−−−石の分析や化石の話。手先が器用で気の長い人向き。山本は死んだ生物にはあまり興味がないが、「何より化石が我が命!」という人も実在するらしい。
 ★化学専攻−−−実用的な化学から、実験をいっさいしない理論化学(計算ばっかり)まで幅広いが、平均すると実験の量はここが一番多いであろう。1月1日から12月31日まで、ここの研究室の明かりが消えるのを山本は見たことがない。勤勉でないと落第→留年→自主退学の道が待っている。チームワークも必要。ただし就職はここが一番いいような気もする。
 ★動物学専攻−−−カエルの卵を一年中いじくり回す人。サンショウウオを追い求めて近畿中を駆け回る人。1日に200匹のネズミを解剖する人。琵琶湖のミジンコを3年間ずっと調べ続ける人。知らない人から見れば変人としか思われないような生活をしている人が山盛りいます。しかし「やりたいことをさせてくれる」という意味では一番いいところだと思ってはいる。
 ★植物学専攻−−−動物もそうですが、生物の場合大きく「形態・分類」「生理・発生」「生態」の3つに分かれます。分類の人は1年中珍しい植物を追い求めて走り回り、生理の人は顕微鏡と試験管に埋もれて日々を送る。「生態」とは生きものの生活の仕方を調べることで、植物の場合は「どこにどんな植物がどういう理由で(どう条件がいいから)生えているかを考える。
 ★生物物理学専攻−−−いわゆるバイオテクノロジーの世界。「生物」と名がつくのに、大腸菌とかバクテリア以外の生物には滅多に触らない。「100%ガンになれる発ガン剤」とか「人の細胞を作る大腸菌」とか、ワケのわからないものを作ることもできます。(生物+化学)の内容です。

 一方受験について言うと、その人の勉強方法や得意・不得意な分野によって、理科の中でも何で勝負するかは違います。以下は山本なりの独断に基づく科目選択のための情報;

 物理 中学の「力」「電流」などの続きであるが、今理科Tでやっているような内容は全体の中のごく一部。大きく分けると「力学」「波動(音・光)」「熱力学」「電磁気学(ここが難関)」「微粒子(原子)の力学」くらいになり、理科Tでするのは全体の4分の1程度である。しかも入試にはこの学校の試験並みの問題はまず絶対に出ないと思った方がよい。少なくとも山本の授業でやっている程度の文字式はすらすら計算できなければ無理。ただし覚えることは一番少ない(ほとんど公式のみ)。

 生物 計算(浸透圧や遺伝など)もあるが、ほとんどが用語の意味を覚えているかどうかで決まる。いわば暗記でつぶせる唯一の科目。ただしその分「国語的」で、たとえば論述問題などが最近は多いし、新聞から来るネタ(環境問題や薬害の話など)も数多く来る。ただしセンター試験だけなら、ほぼ丸暗記と訓練である程度の点数を取ることができる。

 化学 「理論化学」「無機化学」「有機化学」の3本建て。今は理論の3分の1を少し過ぎたぐらいです。無機は余り理屈がなくほとんど暗記で済むので、授業の中では余り時間をかけずに飛ばしていくつもりです。文字式より実際の数字での計算の方が多いので、四則の単純な計算の正確さとスピードが勝負。また暗記することも結構多い(言葉も公式も)。物理と生物の中間だと思えばよい。

 地学 この学校で取る人はまずいない。石や地層・地震の話・天気の話・星の話などが散漫に広がっていて、まとまった分野ではない。入試では指定されていない学校の方が多い(学部にもよる)。普通は地学で2次試験を受ける場合、物理と両方で受けるように指示されることがほとんど。

 いつも言うように、迷うことは悪いことではないけれど、そろそろ自分なりの結論を出した方がよいかもしれません。できれば夏休みまでに、作戦を立ててみてはどうですか?(1994/6/21)


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