夏の思い出〜塾の教師のダイゴ味

 山本は、ここを含めて3つの塾と1つの学校で教師をしました。塾にいた頃の夏は、どこでも夏期講習で大変でした。
 今でも覚えているのは、4年前に1年だけ勤めていた塾での夏です。
 そこでは山本は、午前中小学生の算数を、昼から中3の数学2クラス分を、夜に中2と中1の数学を教えていました。
 中3が生徒も教師も一番大変でした。昼の1時から7時までの授業で、数学の授業ではほとんど毎回テスト(前の授業でやった内容)、その日の結果を毎回はり出して、何回かの平均で60点取れない人は特進クラスからはずす、というムゴイことをやっていました。
 みんな必死です。1時からの授業なのに10時には塾に来て、みんなで復習(テスト対策)をする。7時に授業が終わると、あき部屋で夕食を食べてからそのまま宿題と復習を夜の11時過ぎまでやって家に帰る。半日以上を塾で過ごすわけです。
 他の科目の先生からは「そんなに数学ばかりさせないでくれ」とも言われましたが、山本は
 「生徒が自主的にやっているのだから(残れと言ったことは一度もない)止めないでくれ」などと担任気どりで言っていました。
 山本自身も朝から夜中まで、途中で目が回るほどハードでしたが、生徒がいつも塾にいて質問に来たり、たまには進路の相談とか人生論をぶったり、クラスのみんなも仲がよくてみんなで教え合ったり、クラスのみんなのがんばりを見ていると疲れもどこかに行ってしまう……という毎日でした。

 秋からは理科も受持ち、最後までその中3の人たちとつき合いました。合格発表の日はみんなで集まり、ダメだった人も塾に来て泣いてから帰っていきました。試験が全部終わった3月には、みんなでボウリング&カラオケ大会に行ったり、最後の授業ではみんなでお互いに色紙を書いたり、学校のクラスよりも仲がよかったかもしれないような29人でした。
 その人たちはもう中3の時のことなど忘れていると思いますが、山本には強烈な印象があります。

 誰から強制されるでもなく(テストはありましたが)早く来たり残ったりして、みんなでグチをこぼしながら教え合っていた、あんな雰囲気が山本は好きなのです。もちろん勉強は最後は1人でするものですが、人に教えるということも何よりの勉強だし、励まし合える仲間がいるということは、塾の一番の強みでもあるからです。そういう中で教えるのは、教師にとって何にも代え難い喜びでもあります。

 この塾でもせっかく受験生を持っているのだから、みんなの一生懸命の中で1年を過ごしたいと思っています。
 ムリやり居残りさせたりとか、イヤイヤ勉強させる、というのは、やっぱりしたくないのです。
 どのみち受験生にとっては"勝負の夏"であることに変わりありません。だから前向きになって欲しい。
 山本はみんなほど若くはないから、みんながやる気を出してくれないと、引っぱり切れません。でもみんなの「がんばるぞー」というエネルギーがあれば、いくらでもみんなのために働けます。山本のとりえはそれしかないのです。
 自分なりの目標を持って、後で後悔だけはしないように、できるだけみんなで教え合って、自分の限界を越えられるような夏を過ごしたいですね。 (1996/7/15)


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