教科書を使わずに教える意味
中2理科の試験対策をしていた時、ある人が
「先生のくれたプリントの範囲と(試験範囲が)違うんですけど……」
と言ってきました。話を聞いてみると、学校の教科書とは全然違う内容を習っているようでした。
「最外殻電子とか、イオンとか、原子核とか……」
これは中2ではなく中3〜高校の範囲です。仕方がないので高校の問題集のコピーをやってもらいました。
授業の後、その人に「こんな中味の授業で難しくない??」と聞くと、
「そんなことない。わかりやすい」と言っていました。
他の学校の話を聞いていても、教科書をほとんど使わずにプリントで授業をしている先生はけっこういます。小学校などでもそうですね。
みんなは教科書を使わない先生をどう思いますか。
学校の先生は必ず教科書を使って教えなくてはいけないと言うわけではありません。教科書にのっている"中味"(学習指導要領)を教えなくてはいけないことになっています。昔は教科書通りにしなくてもよかったのですが、最近は一応そういう規則になっています。
山本は初め塾の教師から入ったので、教科書で教えるという発想があまりありませんでした。初めの塾では、色々な参考書やら問題集から抜き出したり、自分でワープロを打ったりして作ったプリントばかりで授業をしていました。中味もあまり学校に合わせる気がなくて、中学生に高校の中味を教えたりしていました。今でも必要なときはそうしています。
学校の教師になったとき、それでも教科書を使わなくてはいけないような気分になって、初めて教科書を一通り読み通してみました。……どうもつまらない。言っていることはわかるし図はきれいなのだけれど、何と言うか面白味がないし、理屈の上での突っ込みが足りない。
もっと面白い寄り道も入れて、必要なところはもっと理屈をきちんと説明して、練習問題ももっとたくさんさせたい。そう思って、学校にいたときも教科書はほとんど使わず、プリントなどをたくさん作って授業をしていました。
教科書を使うと理屈がわからないというのは、例えばこんなことです;
小6;水素を燃やすと水ができることを習う 水素+酸素→水
化合すること(化学反応)と混ざることの違いは習わない
中2;水の分子式がH
2O(H−O−H)であることを習う
なぜHの手が1本でOの手が2本なのかは習わない
中3;水素が電子を失って水素イオンになることを習う
なぜHがH
+になりClがCl
−になるのかは習わない
高1;原子によって電子の数・配置が違うこと・
最外殻電子の数によって原子の結びつきが決まることを習う
→ここで中2・中3で習ったことの理屈が初めてわかる
要するにいつも結論が先、理屈は全部後回しになるので、どうしても「勉強=結論を覚えること」になってしまうのです。確かに理屈は難しいけど、本当に賢くなりたい人、考える力のある人ほど、理屈を知りたいと思うはずです。そういう人にとっては今の教科書での授業は退屈になっても仕方がないのです(全部じゃないけどね)。
きっと中学校のその先生も、そこまで考えて中2の人に高1の中味を教えているのでしょう。
でもこの授業は、理屈がわからない人にとっては逆に苦痛です。その先生だけが自分の計画だけで授業をすることには限界があります。教科書自体を、もっと理屈がよくわかるように、わかりやすく作って欲しい。入試の中味も暗記だけで解けるのではなく、本当に考える力を持った人が点数を取れるようにして欲しい。……などと思います。
※Wさんへ 学校の先生の悪口を言いすぎました。反省しています。ごめんなさい。(1996/12/3)
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