大学のあれこれ〜勉強編

 「大学のことを教えてほしい」という人がいたので、学生時代のことを思いつくまま書きます。
 高校までと一番違うところは「授業に絶対出なければならない」という感覚がなくなることでしょうか。しんどければ休んでも何とかなるし、出なくても単位の取れそうな講義(授業)になると、本当にやる気のある学生以外はまず出ないのが普通です。授業に出なくても、テストの前になるとまじめな人のノートのコピーがたいてい手に入るので困りません。(注;最近は大学も出席にこだわり始めていて高校並になりつつある;短大などは特に出席に厳しい)
 この点で言うと京大は特にいい加減なところで、山本がいた頃は「試験は毎年同じ問題で、模範解答が出回るのでそれを覚えて写すだけ」もっとひどいと「模範解答のコピーを答案にはって出せば合格する」という信じ難い話も聞いたことがあります。

 最初の2年は教養といって、すべての学部の人が同じところで同じ講義を聴きます(←今は教養がなくなっている大学もある)。出席に厳しいのは、語学(英語+もう1つ;山本はロシア語をとりましたが全然話せない)と体育と実験で、語学で落第してしまうと後が結構大変です。体育は出席さえすればチンタラやっていても単位は取れます。スキーなどは冬休みだけですむので大人気でした。山本は朝が弱かったので、1時間目はほとんど出なかったのを覚えています。

 講義(授業)はあんまり面白いものがありませんでした。山本が単に興味を持てなかっただけかもしれませんが、生物学志望の学生にとって「論理学」だの「日本文学史」だのはやはり退屈でした。教える側の情熱を感じることがほとんどなかったせいかもしれません。出席する学生が2〜3人のときは、教室ではなく教授の部屋にみんなで行って、コーヒーを飲みながら雑談のような授業になることもありました(←何となく大人になった気分)。

 語学も読むネタがシェークスピアとかジョイスあたりで、日本語にしても山本には意味がわからないほど難しく、熱心になれませんでした。対照的に実験は非常に面白くて、化学はガラス細工でピペットを作るところから始めて、ワクワクしながら夜までかかったりしながら取り組みました。高校の時はまるで興味のわかなかった無機の陽イオン分析が、実験してみると"こんなに面白いものだとは思わなかった"という感覚でした。他にも面白い実験はたくさんありました。理系の人には、自分の志望と直接関係なくても、とにかく実験をたくさんとることを勧めます。

 当たり前に講義を聴いているだけでは、本当の実力はつかないし面白くもありません。山本は1回生の時から、理学部の3回生の講義やゼミにもぐってコッソリ聞いてみたり、農学部や工学部の講義にも出ました(たいてい難しくて全然わからなかった)。図書館に1週間くらい立てこもって好きな本を読みまくったこともありました。自分のやりたいことは何か、今の自分がこれでいいのか、という悩みはずっと持っていました。

 大学というのはみんなが思っているよりずっと広くて、非常に色々な人が色々な場所で色々なことをやっている場所です(京大には200以上のサークル・クラブがあると言われています)。本気で探せば、自分のやりたいことを一緒にする仲間がたいてい見つかります。山本も1回生の後半から、やりたいことと関われるサークルを見つけてそこにいりびたり、卒業論文も研究室でなくそこで書きました。そんな自分の場所を見つけられれば、腰を落ち着けて勉強したり、共通の考えを持つ友人をたくさん作ったりできると思います。

 普通のパターンだと、4回生になって自分の希望する研究室に入って初めて自分の場所(机)がもらえるのですが、できればそれまでにどこか自分のすみかを作っておいた方がいいように思います。人によっては、それがアルバイト先だったりパチンコ屋だったり雀荘(←読めない人はわからないままの方がよい)だったりしますが……

 山本の場合、講義によく出た年とほとんど出なかった年が1年おきにありました。1回生でかなりがんばって単位を取ったので、2回生の時は語学と体育以外はほとんど講義に出ず、もっぱらサークルに通っていました。3回生になると理学部の講義や実験が始まりまた学校に通い詰めでしたが、4回生の時は卒業研究以外はほとんど学校に行っていません。でも講義に出なかったことがもったいなかったとは、今になっても思えないのです。

 自分のやりたいことを自由にできる時期というのは、学生時代以外にあまりありません。みんなはまだ受験のプレッシャーがあるので、完全に自由とは言えません。本当にのびのびと自分の好きことに打ち込めるのは、だいたい大学時代になります。そこで糸の切れたタコみたいになって、遊びやバイトに明け暮れる人もいます。山本も1回生の頃は結構遊びました。でも遊びやバイトだけで時間をつぶすのは……まあそういう時期もあってもいいけど……ちょっともったいない。本当に自分のやってみたいことを探し出して、少しくらいムチャをしてもいいから冒険してみてほしいです。人のしいたレールでない、あなた流の生活を作って下さい。

 自由というのはいいひびきの言葉ですが、その分不安や責任もかかってきます。大学を出て社会人になった後でも自由に生きようとするのは、大変な能力と努力が必要になります。会社の言いなりになる会社人間から抜け出すのは簡単ではありません。そのために、自分にとっての自由の大切さを実感し、自由の使い方を学生時代のうちに学んでおいてほしいのです。それができれば、何をどう勉強するかはさして問題ではありません。

 今 さしあたりみんなに考えてほしいのは、大学に入ったら・大学を出たら何をしたいかという夢です。大学で自分をどれだけ磨けるかによって、夢がかなうかどうかがだいたい決まります。今は1つでなくてもいいから、自分の"野望"をあたため続け、そのために今の勉強にも力を注いでほしいと思います。(結局最後はお説教的……????)(1997/6/26)


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