親離れのタイミング


 昼のテレビドラマで、39才の女性が25才の男性とつきあっている話を見ています。女性は父親から「親の言うことが聞けないのか!」と言われています。25才の男性はお母さんから「あなたはまだ子どもなんだから、自分で結婚相手を選ぶ力なんてないのよ」と言われます。
 親にしてみれば、子どものことを思って色々言っているわけなのですが、このドラマの場合ちょっと押しつけがましい感じがします。25才は親からすれば子どもでしょうが、結婚相手を選ぶ力がないような子どもだとは思えません。これはドラマなので大げさな設定になっているのでしょうが、こういう会話は実際にもあるような気がします。
 親を大事にすることと、親の言うことを聞くことは、少し違います。
 2〜3才くらいの子どもは、親のまねをしたり親の言うことを聞きながら色々なことを学んでいきますが、それでも自分でできることは自分でしようとします。成長するにしたがってできることが増えていき、たくさんのことを自分でやってみようとします。もちろん失敗もするのですが、失敗でわかることもあるし、自分でしたことに対して責任をとることも覚えていくのです。「責任」というのは道徳で習いそうな言葉ですが、要するに自分のしたことの結果を自分で負うということです。逆に自分で責任をとれないことについては、親にしてもらったり親の言うことを聞いていくしかないわけです。25才を子ども扱いするのは、25才の人間には責任をとる力がないと認めているのです。
 みんなはまだオトナではありませんが、自分で責任をとる練習はしていかなくてはいけません。自分でできることは自分でやってみて、失敗したらそれを糧にして成長していかなくてはいけません。日本では「20才になれば責任がとれる」ということになっていますが、責任を負うということが20才になっていきなりできるはずがありません。それまでに十分練習をしておかなければなりません。
 みんなにはみんななりの、オトナになる練習があります。宿題をするかどうか、どの高校を受けるか、模試に行くか家でテスト勉強をするか(サボるか)、それは自分で決めてやってみることです。誰かに言われないとやらないのは「オトナになりたくないよ」と言っているのと同じです。サボって成績が下がろうが、自分の選んだ高校で後悔しようが、それはそれで自分で背負うべきものです。わからないことを聞いたり手伝ってもらったり励ましてもらう権利はもちろんありますが、最後にどうするか決めて実行していくのはみんな自身です。塾でもそういうつもりでやっていかないと、成績も伸び悩むことが多いのです。
 それは「親離れ」ということでもあります。オトナは(たいてい)色々な知恵を持っていますから、子どもにその知恵を当てはめていきます。でもいつまでも親の言うことばかり聞いていると、最後には自分の人生を乗っ取られたようになり「何をしたいかわからない」もっとひどいと「生きている実感が湧かない」という状態になることもあります。
 親に感謝するのは当然として、親から離れて自分の道を探していくことも必要だとわかっておいてほしいです。もちろん山本もオトナですから、山本の言うことを鵜呑みにしてはいけません。自分で考えて納得できるところを利用してもらえればいいのです。教師というのは、みんなを教えるというより、みんなが成長するための材料を仕入れて見せるのが仕事だと山本は思っています。今のオトナたちをこえていくつもりで、責任をとる練習をしていってください。(1998/10/13)


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