合格のためではなくて


 いよいよ入試の季節になりました。中学・大学はもう試験が始まっているし、中3の人も5日から私立高校入試が始まります。
 こういう土壇場になると、教師ができることはあまりないような気がします。最後は自分で調整をして本番に臨むしかありません。励ましの言葉といってもちょっと照れくさいような……
 人事を尽くして天命を待つ→これは「人事を尽くしたつもりになれば開き直って力を出しやすい」という意味にとれます。"人事を尽くした"って本気で言える人なんてなかなかいないでしょう。
 練習はウソをつかない→昔プロ野球選手が言っていた言葉で山本はけっこう好きなのですが、試験場では必ずしも練習を十分やれば絶対大丈夫! とも言えません。
 山本はむしろ 「たかが試験や、失敗しても命は取られへんがな」 というくらいの気持ちでいってほしいです。その方が結局力が出せるし、どんな結果になってもいい方向に受け止められるからです。
 みんなが塾に来ているのは、上の学校に合格するためです。でもたとえ試験に失敗しても、みんながこの場所で積み重ねてきたことがムダになるとは思いません。
 入試で失敗して本命の学校に行かれなかった人を、山本は少なからず見ています。合格発表の瞬間のショックは確かにあるし、引きずってしまう人もいます。でも長い目で見ると、本命の学校に行かれなかったことがその人にマイナスになっているとは言い切れません(私立に行くことになってお金が余計にかかる、ということはあります)。人間にとって何がいいか悪いかは簡単には決められないからです。
 本命の学校に受かっても、その後何をしたらいいかわからなくなってだらけた生活をしている人もいるし、その逆もあります。どこの学校に行くかよりも、行った先の学校で自分のしたいこと・するべきことを見つけて充実した時間を過ごせるかどうかの方が、はるかに重要です。
 こう書くと「じゃあ、今まで志望校に行くためにしてきた苦労は何なんだ?」と言われそうです。
 ちょっとキザですが、受験というのはみんなの成長のためのハードルなのだと思います。「自分の将来を真剣に考え、目標を立て、長い時間その目標のために努力し、その結果を自分で負う」という経験は、オトナでも普通の生活ではなかなか経験できないものです。  それは、クラブの試合で勝つために一生懸命練習するのと似ています。サボりたい気持ちとたたかったり、自分の力をはかりながら作戦を立てたり、途中の成績で喜んだり悲しんだり、そして自分のやってきたことの"結果"を引き受けること……それはオトナになっても起こることだし、乗り越えなければならないことです。みんながオトナになるための試験だと思ってほしいです。  だから一番大切なのはきっと合格することではなくて、目標をつくってそこへ行くために自分の力を試していくことそのものです。きれいごとかもしれないけど、今の入試のあり方をプラスの方向に活かしていくためには、そう考えるのが一番いいと思うのです。  そして塾も、自分を磨くための場所だと思ってほしい。中3の人は今までを振り返って、自分がどれだけ成長したか確かめてほしい。山本は合格を約束することはできないけど、みんなが成長するのを助けることはまちがいなくできます。この場所でみんなが何かを得ることができたと言えるなら、それだけで自信を持っていいのです。そしてその自信を本番で活かせられれば、みんなにとってベストの結果を出せるでしょう。  みんなの人生はまだ始まったばかりです。これから起こるどんなことも、考え方次第で自分の"こやし"にすることができます。今までこの塾で過ごしてきた時間、そして入学試験とその結果を、ぜひあなたにとってのいい"こやし"にしてほしいと思います。(1999/2/2)


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