ケンカを防ぐ方法〜戦争について〜


 国会で「新ガイドライン法案」という法律案が可決されようとしています。
 日本のまわりで何か(「日本の平和を脅かすおそれのあること」だって)が起こった時、アメリカの軍隊の手伝いを、日本の自衛隊や鉄道や病院などがする……という内容です。アメリカ軍の武器を阪急電車で運んだり、戦争でケガをした人を塾の近くの病院に運んだり……ということが起こるかもしれないわけです。

 この法律がいいかどうか、ここで書くことはできません。みんなには2つのことを考えてほしいと思います。
 1つは「戦争は野蛮である」ということです。戦争とは暴力で何かの目標を達成しようとすることで、先生が生徒を殴って言うことを聞かせようとするのと同じです。戦争で何かを壊すことはできても、何もつくることはできません。何より「命を大切にしない」ということは、理科の教師として山本には許せません。どんな理由があろうが人殺しはしたくないし、誰かの都合で殺されたくもありません。
 日本が戦争に巻き込まれれば、みんなも無関係ではいられません。日本にアメリカ軍がたくさんいるほど、日本そのものが攻撃される可能性は大きくなります。今までの生活が続けられる保証などありません。太平洋戦争の頃の日本がどんなようすだったか、当時の人がどんな生活をしていたか、少しは習っているはずです。あのときと状況が違っていても、戦争になればひとりひとりの自由が奪われていくことには変わりありません。"自分と他人を大切にする"ならば、どんなことがあっても戦争は防がなくてはいけません。

 もう1つは、どのようにして戦争を防いだらいいのか、ということです。
 「愛する国を守るためなら、戦争をするのも仕方がない」という人はいます。憲法で軍隊を持つことが禁じられているのに自衛隊があるのも、「国を守ることは禁じられていないからだ」という人もいます。みんなはどう思いますか。
 国と国がケンカをするのは、色々な理由があります。このへんは一口では言えないので、ぜひ社会科で学んでほしいです。
 国のケンカと人のケンカは、違うところもありますが、似ているところもあります。みんなに考えてほしいのは、「まわりの人とケンカをせずなかよくやっていく方法」です。
 みんなのまわりには、あまり仲のよくない人もいるでしょう。「何考えてるかよくわからないなぁ」という人もいるでしょう。人それぞれ、感じ方や考え方は違って当たり前だし、違っているから面白いということもあります。でも考え方が違うからといって相手をのけ者にしたりいじめたりすれば、そこからケンカが起こることもあるでしょう。
 自分と違う人間を「違うから」といって話し合いから遠ざかってしまっては、いつまでもわかりあえないし、お互いがいがみ合うもとをつくることになります。
 好き嫌いは誰にでもあるし、すべての人と仲良くすることはできないかもしれません。でも、どんな人にも必ずいいところはあります。人間にはみんな、その人にしかできないこと、その人だけの才能があるのです。そういうひとりひとりのいいところを認め合うことは、努力すれば誰にでもできます。「あいつはあんまり虫が好かないけど、こういうところについてはいいやつだ」と思えたら、やたらといがみ合うこともないでしょう。お互いをわかりあい、相手の気持ちを想像し思いやる、そうできれば簡単にケンカにはならないでしょう。
 「国際化」というのは、英語が話せるようになることではありません。
 国によって、ものの感じ方や考え方は違います。そういう違いを認め合い、その上で地球の人間みんながケンカをせずやっていく方法を考える、そういうことが本当の国際化だと思います。そのためには、まず自分の身の回りの人との「話し合い・わかりあい」をしていくことです。みんなにも、戦争を防ぐためにできることはあるのです。

 これからの地球は大変です。自然をこわさないように、資源を使いすぎないようにしながら、うまくみんなで生きていかなくてはなりません。今までのようなゼイタクができなくなるかもしれません。そうなった時に戦争にならないために、どうか「他人とわかりあう・他人と認め合う」練習をしておいてほしいと思います。
 今の世の中から、戦争はなくなっていません。そしてそれは他人事と言い切れません。
 みんながオトナになるまでに、「世界から戦争をなくす方法」をみんなで考えて、少しでも人殺しのない世の中に近づけていけたら……と思います。(1999/5/11)


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