いっしょにいることの幸せ
山本は7年前、私立の中高一貫校の教師をしていました。色々事情があってしんどくなり、やめることになりました。
山本が学校をやめたいと校長先生に言ったとき、校長先生はふと
「どんなに仕事がつらくても、私は、子どもが今ここにいてくれることだけでいいと思えるのですけれど」
と言われました。
その言葉の意味は、よくわかりませんでした。山本は正直なところその時には、担任の生徒の前にいるのが苦痛でした。「勉強に対してもっと真剣な生徒を相手にしたい」ということを書いたりしていました。
今から考えれば、それは生徒が不真面目だったのではなくて、山本が未熟だったのでした。
やめてから3年ほどたって、その学校に行って生徒と話したとき、自分はなぜこの子たちといるのが苦痛だったのだろうと考えてしまいました。
おそらくそれは、教師の建前や自分のプライドを意識しすぎて、ヘンに堅苦しく考えていたからだと思います。生徒を見るたびに「何か校則違反をしていないか」「この子には何を話すのが一番いいのか」などといちいち考えてしまう自分が、イヤでした。
今 この仕事をしていて、みんなといるのが苦痛だと思ったことはありません。逆に塾をやめる人がいると、理由がどうであれしんどい気持ちになります。9月になって何人かいなくなって、最初の1週間は少し落ち込んでいました。自分の力不足を責められているようです(……そうなのだろうけど)。
クラスが替わったりして授業で会わなくなっても、塾に来てくれていればどこかで会えます。必要があれば、授業をもっていなくても相談にのったり補習をすることもできます。
教師にとっては「生徒と同じ場所にいること」が一番の幸せなのですね。
もちろん授業の中で接していくのが一番だけど、授業がなくても、色々な形でみんなと関わって励ましたりいっしょに笑ったりしていけたら、……それがみんなのためだけではなくて、山本の幸せにもなるのだと思います。これからもよろしく。(苦情も言ってくださいね)(1999/9/28)
通信の一覧に戻る
最初に戻る