遺伝子操作作物について


 「遺伝子操作作物」「遺伝子組み換え食品」を知っていますか。新しい技術(バイオテクノロジー)でつくり出された、今までになかった生物のことです。
 たとえば"害虫がつかないトウモロコシ"というものが開発されています。トウモロコシは、農薬をまかないとアブラムシなどの虫がたくさんついて、収穫がかなり落ちます。そこで、害虫を殺す毒をつくる細菌から毒素をつくる遺伝子(細胞の中にある染色体の一部。生きものの設計図にあたる)を取り出して、トウモロコシの細胞の中に組み込むと、害虫を殺す毒をつくるトウモロコシができるわけです。
 同じようにして、"除草剤をまいても枯れない(雑草だけが枯れる)ダイズ"や、"今までなかったフジ色のカーネーション"などが開発されています。またこの技術は"薬をつくる細菌"など、医学の方面にも応用されています。
 ほとんどのトウモロコシは今まで、害虫を殺すために農薬をまいて育ててきました。この新しいトウモロコシを栽培すれば、農薬の人体への危険がなくなるし、農薬をまく費用や手間もなくなるのでよいのではないか、ということです。みんなはどう思いますか。

 このような遺伝子組み換えの生物について、現在いくつかの不安な点があげられています。
 1つは、「害虫を殺す毒を含むトウモロコシを食べても大丈夫なのか」ということです。
 農水省では「虫の消化管はアルカリ性で、毒(主にタンパク質)が分解されないが、人間の胃は酸性で毒は分解される。また人間の消化器にはこの毒がはたらく部分(受容体)がないから大丈夫」と言っています。しかし実際に"人体実験"をしたわけではありません。ウサギやネズミで確かめただけです。
 以前アメリカの会社が、ブラジルナッツという豆から「アミノ酸をたくさん作る遺伝子」を取り出してダイズに組み込み、"アミノ酸をたくさん作るダイズ"を開発しました。  ところがブラジルナッツにアレルギーを持っている人がそのダイズを食べると、アレルギーが出る危険があるそうです。これから先、他の食品でも同じような危険があるでしょう。

 もう1つは、今までになかった生物は、自然の中で他の生物に悪い影響を及ぼすのではないかという不安です。害虫(自然の中では「害」虫ではない)を殺す毒を持つ植物が、他の植物と雑種を作ったりして広がっていくと、その虫が生きていけなくなったり、さらに別の毒を作るようになってしまうかもしれません人間などの腸に住んでいる微生物に影響を与える可能性もあります。
 このような危険に対して、日本や外国で様々な検査や調査が行われ、今のところ危険がないとされているものが、実用化されています。
 現在の日本の法律では、組み換え食品のすべてには表示が義務づけられてはいないので、みんなも知らないうちにこのような食品をとっているはずです。
 今 地球に住んでいる生きものは、何億年もの時間をかけて、ゆっくり変化(進化)しながら、今の姿かたちになってきたものです。人間が短い時間の間に人工的に作り出した新しい生きものが、人間や自然の生きものに対してどんな影響を及ぼすのか、たかだか数年間調べただけで「わかる」と言い切れる方が、山本には不思議です。
 それでも「食糧危機に備えるため」とか「農薬を使わないように」とか、根拠のある理由を挙げて、遺伝子組み換え食物の開発は進められています。これに対してスイスのように、遺伝子組み換え作物の開発を禁止するかどうかで国民投票をした国もあります(結果は「禁止しない」ことになった)。今は色々な人が議論するべき時期ではないかと、山本は考えています。
 いつも言っていますが、これもみんなの将来に直接関わる問題です。いつか新聞やニュースなどを見たとき、内容が少しでもわかるようになってくれたら……と思います。(2000/2/8)

※遺伝子組み換え食品の表示についてはこちらなど;


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