夏休みには夏休みを


 学校はもう夏休みに入っていますが、塾は7月24日が一区切りです。夏期講習や集中授業もあって、完全に息抜きというわけにはいきませんが、普段と比べれば長い休みがあります。
 山本は塾に行っていなかったので、夏休みは学校の宿題とクラブ以外は全部自由時間でした。宿題はたいしたことなかったのですが、クラブが結構しんどかったので、まるっきりヒマな時間はそんなにありませんでした。今のみんなはどうなのでしょうか。
 あまり夏休みに「遊んだ」という記憶がありません。友だちと遊ぶというより、家で扇風機にあたりながらボーッとしていたような気がします。もっと遊べばよかったとも思いますが、休むのもそれなりに意味があったのでしょう。
 山本は今体の関係で、週2日しか塾で働けません。残りの日は医者に行ったりもしていますが、だいたいがテレビを見たり本を読んだり楽器をさわったり喫茶店で手紙を書いたり……という、さして意味のないことばかりしています。受験生のことを考えると、自分がこんなにグータラしていていいのか? という後ろめたさもあります。
 でも、こうやってボンヤリしていないとわからないこともあります。自分の体の声を聞くこと、自分にとって大切なことを考えること、思いを詩にしたり音楽で表現すること、心の栄養になりそうな本を読むこと(今はルソーの『エミール』という本を読んでいる)、学校の先生の研修会に参加すること。こういうことは十分な時間の余裕がないとできないのです。去年の秋から今年の春までの半年間は、頭の中は理科の問題と生徒の成績で一杯で、他のことを考える余裕などありませんでした。ギシギシ押しつけられながら回っている歯車のようなもので、自分を大きくすることもできず、磨り減っていくだけです。
 みんなには「何もしないでボーッとする時間」も大切にしてほしいと思います。スケジュールに振り回されて余裕がなくなると、心や体が窮屈になってイライラしたり、かえってやるべきときに集中力がなくなったりします。
 発明家や学者が独創的なアイディアを考え出すのは、勉強や仕事をしているときよりも、ボーッとしているときが多かったとも言います。「よく遊びよく学べ」だけではなく、「よく学びよく遊びよく休め」でいってみてはどうでしょうか。
 ……ともあれ、いい夏休みを。また9月に会いましょう。(1998/7/22)


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