どうなる、タマちゃん

 この夏、東京の多摩川にアゴヒゲアザラシがやってきて話題を呼びました。今は横浜の川にうつっていますが、相変わらず地元では見物人が多いようです。多摩川(たまがわ)にいたので「タマちゃん」と呼ばれています。
 先週は宮城県の歌津町にワモンアザラシの子どもが現れ「ウタちゃん」と呼ばれています。去年の春には伊勢湾にアゴヒゲアザラシが現れています。ここ50年の間に、11匹のアゴヒゲアザラシが日本に来ているそうです。

 アザラシはもともと北極の近くにすんでいますが、寒いところでしか生きられないというわけでもなく(ほ乳類だから体温は高い)、今のところタマちゃんも普通に生活できているようです。北極海から日本まで泳いでくるのは大変ですが、多分北海道の近くまで流氷にのってきて、途中から潮に流されてきたのでしょう。
 今は海より川の方が温度が低く、ふるさとの温度に近いので、川からあまり離れずにいるようです。冬になって海の水温が下がってくれば海に出て、いつか北極へ帰っていくのではないか、という人もいます。今いる場所はきれいな川ではありませんが、エサとなるエビやカニはたくさんいます。タマちゃんは来た頃と比べるとやせてきているそうですが、すぐに飢え死にするということはなさそうです。
 このまま無事に北極に帰っていけばメデタシですが、うまく帰れるかどうかわかりません。タマちゃんは1才くらいの子どもなので、北極まで帰るまでに弱ってしまうかもしれません。

 タマちゃんをめぐっては、いくつかの意見があります。
 @病気になったりする前に、つかまえて水族館で保護した方がいい
    (実際に保護されたアザラシもいます)
 A野生動物だから、たとえ死ぬとしても放っておいた方がいい
 Bつかまえて北極に運んだ方がいい
 みんなはどう思いますか。
 山本はどちらかというとAに近い考えですが、正直なところよくわかりません。もう少し様子を見るのがいいかなという気がしています。

 山本には、タマちゃん自身とは別に、考えることがいくつかあります。
 これがもしアザラシではなくて、たとえば「アメリカから来た巨大ミミズ」だったら、みんなはこんなに心配するでしょうか。かわいいから保護する、かわいくなければ無視する、ということにならないでしょうか。"生きものを大切にする"という考え方からすれば、形やかわいさと関係なく、どんな生きものでも大切にするべきですが、私たちにそういう考え方や行動ができるでしょうか。山本にも自信がありません。

 もう1つ、アザラシのすんでいる北極がどうなっているのか、ちょっと心配です。タマちゃんが偶然日本に来たのならいいのですが、北極がすみにくくなって仕方なく日本に来たということはないでしょうか。
 ビニールやプラスチックを低温で燃やすとダイオキシンという猛毒ができますが、このダイオキシンが北極や南極の生きものからも見つかっています。日本などでできたダイオキシンが海や空から流れていったのでしょう。子どもができなくなったアザラシも見つかっています。
 また地球の温暖化によって北極の氷が溶け、アザラシのすむ場所が少なくなっているということもあります。温暖化の主な原因は、森林の伐採や石油の燃焼による二酸化炭素の増加です。石油は自動車や電気を使うときにたくさん燃やされます。

 つまり私たちとアザラシは、ダイオキシンや二酸化炭素というありがたくないものを通してつながっているのです。「タマちゃんがかわいい」などと言っている場合ではないのかもしれません。

 数年前から神戸の町中にイノシシが出てきていますが、これは元々イノシシがすんでいた山の環境が悪くなり、やむを得ずエサを探しに町中に出てきたと考えられています。町のイノシシとどうつきあうかも問題ですが、それよりもイノシシが安心して本来の山で生きていけるようにすることが大切なのです。
 アザラシについても同じでしょう。タマちゃんやウタちゃんを「北極からの警告者」と思って、私たちがアザラシのためにできることを考えてみるのも、大事なことだと思いますよ。(2002/9/24)

 先週の「のり出し」

   中3は統一テストの後、天体の「透明半球」の説明をしました。
   透明半球の模型を使って説明したのですが、
   模型が小さくて後ろの方の人は見にくかったかもしれません(申し訳ない)。
   一番後ろに座っていた人が、よく見ようとして身を乗り出していたのが
   とても印象的でした。こういうのを「気持ちが表れる」というんだろうね。
   とてもいい顔をしていました。これからもがんばりますです。
 


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