ニュートンはグラムに勝てるか?
中学の理科で学ぶ「力」は、けっこう難しいところです。バネの計算問題で中3の人も手こずっていると思います。
力の単位として、古い教科書ではg重やkg重が使われていましたが、新しい教科書ではN(ニュートン)になっています。今年の高校入試の問題でどちらが出てくるのか、よくわからなくて困っているところです。
力で一番わかりやすいのは「重力」でしょう。1kg重というのは、1kgの物体にはたらく重力の大きさのことです。100gの物体には100g重、250kgの人には 250kg重の重力がはたらいているので、力の大きさを考えるのは簡単です。
それに対して「100gの物体にはたらく重力の大きさがだいたい1N(ニュートン)」と言われても、なぜそうなのか納得しない方が普通でしょう。なぜこんな単位になったのでしょうか。
力というのは、物体の動き方を変えたり、物体の形を変えたりするものです。止まっている物体に力を加えると、@形が変わるか A動くか のどちらかが起こります。@はバネを引っ張ってのばしたり、イスに座る(この場合イスは押されて少し縮む)ような場合です。Aは「止まっているボールに力を加えて投げる」「止まっている荷物に力を加えて動かす」という場合です。
ものを動かす場合、動かすものが重いほど、またものを速く動かそうとするほど、大きな力がいります。そこで力の大きさを「重さ(正確には質量)×どれだけ速さが変わったか(加速度)」で表すことができます。この『運動方程式』を考え出したのが、イギリスの物理学者であるアイザック=ニュートンなのです。
アイザック=ニュートン(1642〜1727)旧暦では12月25日生まれ(山本と同じ!) |
「世間からどう思われているか知らないが、私は自分のことを、海岸をぶらつきながらきれいな小石や貝殻を見つけては喜んでいる少年にすぎないと感じている。かたや真理の大海は、依然未知のまま私の前に横たわっている。」 |
一生結婚せず独身。大きな野心をもち天才であったが、猜疑心が強く独占欲が強かった。微積分の開発を独占し、フックとの論争などのように他の科学者との論争が多く、錬金術を研究し、神学や神秘主義思想の著書もある。虚弱児で瞑想・孤立・独占欲の癖があった。 |
ニュートンは、リンゴが落ちるのを見て万有引力を考え出したという話で有名ですが、この話が本当かどうかはよくわかっていません。素人受けするように考え出した作り話だとも言われています。これは図のように、
「リンゴはそのままならまっすぐ落ちる。横に投げれば斜め下に落ちる。これと同じように、月も地球に向かって落ちながら動いていて、結果として地球の周りを回っているのではないか」
というものです。この考えからニュートンは、すべての物体の間にはお互いに引き合う力(万有引力)があるという『万有引力の法則』を発見しました。
ニュートンはこのような力・運動の研究の他にも、星の動き方の研究、光や色の研究、ニュートン式反射望遠鏡の発明、数学では微分・積分という重要な考え方の発明など、色々な分野で大きな業績を残しました。47才の時には国会議員にもなっています。今では考えられないような"天才"と言えるでしょう。
さて力の単位ですが、1N(ニュートン)とは、
「1kgの物体が1秒間に1m/秒ずつ速くなるような力の大きさ」(1kg重=9.8N)
のことです。これは先の運動方程式から出てきた式ですが、中学生にはやはりわかりにくいでしょう。
最初に説明したg重やkg重は、地球上の物体にかかる重力を元にして決めたものです。星が物体を引く重力は星の大きさによって違いますから、地球以外の星ではg重やkg重は重力の大きさと合わなくなります。たとえば6kgの物体にかかる重力は、地球上では6kg重ですが、月では1kg重、木星では15kg重となり、質量(kg)と重さ(重力、kg重)は一致しないことになります。
将来人間が宇宙に出ていくようになって、地球以外の星でも生活するようになったとき、地球を基準にした単位を使っているのは"エコヒイキ"になるかもしれません。N(ニュートン)は地球の重力を元にしているわけではないので、どこの星でも宇宙空間でも同じ条件で使えます。
理科で使う単位は、だいたい簡単な式で結べるようにつくってあるものです。Nを使うと、色々な単位がきれいな式で結べるようになります。たとえば、
1Nの力で1m押す仕事=1N×1m=1J(ジュール)
1秒間に1Jの仕事をする能力=1J/1秒=1W(=1V×1Aでもある)
1m
2に1Nの力がかかる場合の圧力=1N/1m
2=1Pa(パスカル)などなど
このような式を作っている理屈がわかると、理科の世界の何とも言えない「美しさ」が見えてきます。高校あたりでぜひそういう感覚を味わってほしいです。
これに対して、1cal=0.24×V×A×秒とか、1kg重m/秒=9.8W のように、calやkg重などの「理にかなっていない単位」を使った式は、どうしてもややこしい数字が出てきてしまいます。
アメリカでは長さの単位として、mやkmの代わりに『ヤード』『マイル』が使われることがあります。日本でも面積の単位で『坪』が使われたりします。これは理にかなっているからではなくて、そういう単位が生活の中に根づいているからです。重さをkg(重)で表すのも実はこれと同じで、理科の理屈から言えば、「もの自体の量=質量」をkgで、「ものにはたらく重力の大きさ=重さ」はN(ニュートン)で表す方が正しいわけです。今度の新しい教科書で、g重やkg重がNに変わったのも、そういう理屈から出てきたものです。
……とは言っても、実際にものの重さ(重力)を表すのにNを使うのは不便でしょう。「私の体重は60kgです」ならわかるけど、「私の体重は588Nです」と言われても何のことかわからないですね。それでもみんながNに慣れてくれば、だんだん「このコップの重さは1N(100g)くらいかな」というふうになっていくのでしょうか。みんなが慣れるように日常生活の中でどんどんNを使っていくべきだ、と言う理科の先生もいますが、山本にはまだピンときません。
ニュートンがグラムに勝つのはなかなか難しいでしょうが、あなた自身がどちらの味方をしたいか考えてみるのも、面白いかもしれませんね。(2003/1/13)
力の単位の切り替え(中3の人は覚えておくこと!) |
100g重=1N 1kg重=10N 20g重=0.2N 20kg重=200N |
1Pa=1N/m2=0.01g重/cm2 100Pa=1hPa=1g重/cm2 |
先週の「消しゴム」
中3の人に『合格消しゴム』を配りました。
みんな喜んでくれてよかったです。
今年はなぜか赤いカバーの消しゴムに人気があって、
特に女の子が赤をとりまくっていました。
3年前は、福岡に行ったとき太宰府で買った合格鉛筆を配りました。
この消しゴムは普通の文具屋で買ったものなので、
そんなに御利益はないかもしれませんが、
まあ役には立つでしょう。
鉛筆や消しゴムはテストの途中でなくなることもあるので、
多めに持っておいて悪いことはありません。
気休めではなくて、本当の意味での
「お守り」になったらいいなあと思っています。
あと2ヶ月、一緒にがんばろうね。
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