オリジナルであること

 この塾は3月から新年度になるので、今年度の授業は今回で終わりです。
 この1年は、みんなにとってはどんな時間だったでしょうか。山本の授業がどのくらい役に立ったのか、聞いてみたいです。
 山本にとっては、情けない話ですが、体力がなくなってきたのを痛感した1年でした。2学期後半、テスト対策などで追いまくられたとき、へばってパワーがなくなってしまったのがかなりショックでした。年かなあ。こんな通信を作るより、体力を温存していい授業ができるようにもっと準備するべきなのかもしれません。(体も鍛えないとねえ)

 でも山本は、チェックシートやこの通信をやってきてよかったと思っています。通信を面白いと言ってくれる人もいるし、チェックシートでのやりとりの中で成績を上げるヒントをつかんでくれた人もいます。みんなにとって少しでも役に立つ部分があるのなら、これはこれでいいのかなと思っています。

 文章をつくっていて面白いのは、この文章が世界に1つしかない、自分だけのものだからです。もちろん色々なところから材料をもらっているし、たいした文章でもありませんが、他の誰でもない自分のものをつくっていくのは、楽しいものです。チェックシートにたくさん文章を書いてくれる人も、文で自分の気持ちを表すことの楽しさを知っている人でしょう。音楽や絵などもそうですが、自分の"オリジナル"をつくるのは面白いし、みんなにもそういう面白さを知ってほしいです。

 理科や数学の勉強にも、本当はそういう「自分だけの世界を作る面白さ」があるのです。授業で同じ話を聞いていても、人によって"わかり方"は少しずつ違います。地震の授業を聞いて、ある人は家の中の家具のことを考えるだろうし、ある人は避難場所を考え、別の人は原子力発電所のことを心配するかもしれません。また電流の勉強をして、将来電気を使った仕事で役に立つ人もいるだろうし、電流回路の問題を解くのが単に面白いという人もいるでしょう。勉強してわかったことを自分の生活の中でどう生かしていくかは、その人の生き方によって違いますから、勉強そのものがみんなにとって"オリジナル"になることもあると思うのです。
 みんながそういうことを感じられないのは、勉強不足もあるかもしれませんが、今の学校や塾の勉強がそういう"オリジナル"を引き出すためのものになっていないからです。テストの点や入試のためだけに勉強していると、オリジナルの勉強の面白さを見失うこともありますが、みんなにはそうなってほしくありません。少しでも勉強の面白さ、自分の中で勉強したことがオリジナルになっていく楽しさを味わってほしいのです。塾の中でできることは知れていますが、この通信が勉強の面白さを知る手助けになれば、つくっているかいもあるというものです。

 山本は大学を卒業した後、研究者になりたいと思って大学院に行きました。でも自分には向いていないことがわかって、2年でやめました。その後音楽の専門学校に行って歌の練習をしましたが、こちらはもっと才能がなかったので(最初からわかっていたような気もするが……)挫折しました。大学院や専門学校に行っていた間、京都の塾でバイトをしていましたが、そのうちに子どもを教える方が自分に向いているように思えてきました。結局本気で教師になりたいと思ったのは27才のときです。大学に戻って教員免許を取り、神戸の私立学校の教師になりました。でも2年目に働き過ぎで体をこわし、この塾に来たのです。

 なんだかグチャグチャの人生ですが、今までの自分のやってきたことを振り返っても、あんまり後悔はしていません(反省することは山ほどありますが)。ノーベル賞が取れなくても、プロの歌手になれなくても、給料をたくさんもらえなくても(?)、自分の生き方を自分で決めてきたことが面白いと思えるからです。
 教師になるまでにずいぶん遠回りをしましたが、その分普通の教師とは違った力も少しはあるように思います。たいした教師ではないけれど、みんなと山本との関わりは世の中に1つしかない"オリジナル"のものだし、その中で自分にしかできないこともあるから、働くことが楽しいのです。仕事をしていく中で、今まで積み重ねてきた勉強が生きているのもわかります。
 みんなにもそう思えるようにみんな自身の力をみがいていってほしいし、そのためにこれからもみんなの支えになれたらいいなあ、と思っています。
 授業から離れる人も、また会えたときに、今と同じいい顔を見せてください。元気でね。(2003/2/24)


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