ケンカを防ぐ方法〜平和を守るために

 今国会で、「有事法制」という法律について話し合いがされています。
 外国から軍隊が攻めてきたり、攻めてきそうな状態になった時に、自衛隊が活動するための法律をつくろうというものです。自衛隊の基地をつくるために学校の校庭を使ったり、ガソリンなどを優先的に自衛隊に回したり、医者や看護師さんなどを自衛隊のために呼び集めたりすることができるようになります。
 小泉首相は「備えあれば憂いなし」(準備をしておけば、あとで心配する必要がない)と言っています。衆議院はもう通っているので、早ければ来月中にもこの法律は成立します。

 日本の憲法には「戦争と武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する。陸海空軍その他の戦力を保持しない。交戦権は認めない」という条文があります。いわゆる『平和主義』で、こういう憲法を持った国は世界中でも非常に珍しいのです。ところが実際には自衛隊があって、自衛隊の軍備は世界でも有数のものになっています。このことについては、たとえば「憲法は外国に攻めていくような戦争を禁止しているので、自分の国を守るための用意は禁止していない」という説明がされています。
 10年くらい前までは、自衛隊が実際に戦争に関わることはほとんどありませんでしたが、最近になって、アメリカの戦争に日本が協力したり、戦争後の国の平和を守る活動などのために、自衛隊が外国に行って活動することも多くなっています。

 一昨年の秋、ニューヨークのビルに飛行機が突っ込むというテロ事件が起こりました。オサマ=ビン=ラディンという人がテロを指揮していたらしい(実ははっきりした証拠はまだ出されていない)ということで、アメリカはラディンをかくまっていたアフガニスタンを攻撃し、たくさんの人が死にました。今年になって今度は「大量破壊兵器を独裁者のサダム=フセインが持っている」ということでイラクを攻撃し、またたくさんの人が死にました。
 アメリカのやっていることは、アフガニスタンに対しては「人殺しに対するしかえしの人殺し(報復)」、イラクに対しては「人を殺すおそれがあるからという人殺し(先制攻撃)」です。日本の平和主義からすればどちらもまちがっていますが、小泉首相は「アメリカを支持する」と言っています。

 日本とアメリカは『日米安全保障条約』という約束を結んでいて、日本のまわりで戦争が起こったとき、日本とアメリカが協力して安全を守ることになっています。そのために日本(特に沖縄)には、たくさんアメリカ軍の基地があります。
 もし日本の近くでアメリカがどこかの国と戦争を始めたら、小泉首相はまた「アメリカの行動を支持する」と言うかもしれません。日本とアメリカの約束から、日本はアメリカ軍の手助けをすることになります。相手国からすれば、どう見ても日本はアメリカの味方です。相手国は当然、アメリカ軍の基地がたくさんある日本を攻撃しようとするでしょう。そうすると最初に書いた『有事法制』が動き出して、日本のあちこちで自衛隊が活動することになります。戦争になれば軍隊の活動が最優先ですから、みんなの生活も当然変わっていくでしょう。みんなの学校が自衛隊の基地になったり、誰かの家をこわして倉庫にしたり、食糧や石油が普通の人に回らなくなったり、自衛隊に協力するために、みんなの周りのお医者さんや大工さんが呼び出されたりするかもしれません。
 「国を守るためだからしかたがない」という人もいるでしょう。たしかに外国の軍隊によって殺されたり生活が壊されるのはいやです。しかし、自衛隊がいれば戦争が防げる、というのは安易すぎます。本気で戦争を防ごうとするなら、その前に考えることがたくさんあるはずです。

 戦争はどんな理由があろうと、人殺しです。普通の人が簡単に人を殺せるわけがありません。戦争は地震のようにいきなり起こるものではなくて、他の国の人を憎んだりさげすんだりする考え方が広がり、「自分たちを守るためなら(自分の考える正義のためなら)人殺しもしかたない」という考えの人が多くなって、初めて起こるのです。逆に言えば、人の命を何よりも大切にする考えがお互いにあれば、戦争は起きないことになります。

 先日、アメリカとイラクの高校生の話し合いをテレビで放送していました。国や育ち方が違う分、考え方もかなり違っていて、意見の食い違いもたくさんありました。しかしその話の後アメリカがイラクを攻撃したとき、アメリカの高校生の何人かは「前に話していたあのイラクの人が心配だ。攻撃してほしくない」と言っていました。
 山本は4年前に韓国に行って、旅行ガイドの人と仲良くなりました。彼女は自分の仕事に誇りを持っていて、とてもいい人でした。あの人が戦争に巻き込まれるようなことは、山本は絶対に許せません。
 国や考え方が違っていても、お互いが幸せに生きていくことを認め合うこと、他の国の人とも自分の国の人と同じように仲良くなれること、何よりすべての人の命や生活を大切にすること。そういう考え方を持つことが、戦争を防ぐ一番大きな力になるのです。みんなにもそれはできるし、みんながそういう考えでこれから生きていくことが、自衛隊よりも強い力で「平和を守る」ことになると思います。

 山本はみんなが好きです。みんなが戦争に巻き込まれてほしくないし、人殺しの仲間にもなってほしくありません。山本自身ももちろん平和を守るための努力をしたいし、みんなも自衛隊や政府任せにしないで、戦争を防ぐ方法を真剣に考えてほしいと思います。(2003/5/25)


 先々週の「ナイスまちがい」

   中2数学の授業で、単元テストの解説をしていたとき、
   S君が「○○の答は違うんじゃないですか?」 と言ってきました。
   ちょっと難しめの問題だったし、「じゃあやってみよう」 ということで
   その問題を説明し始めたら、途中でS君が「あっ!!!!!」 とさけびました。
   実は彼の方がかんちがいをしていたようです。
   でもたとえまちがいでも、こういう質問をしてくれるのは、とってもよいことです。
   みんなが問題について真剣に考えるきっかけになるし、
   まちがえることによって逆によりよくわかるようになります
   (S君はこの質問で、絶対賢くなったはずです)。
   山本はまちがえたからといって叱ることは絶対しません。
   まちがいをおそれないで、おかしいと思ったことをどんどん質問できるようになってほしいです。
   S君、いい手本をありがとう。
 



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