いのちを感じる経験を

 長崎で、4才の男の子が立体駐車場の屋上から突き落とされて殺される事件がありました。中学1年(12才)の少年が容疑者として補導され、もうすぐ家庭裁判所で審判が始まります。
 少年は「自分のやっていることがわからなくなった。(男の子の)先をなくしてしまったことは申し訳ない。」と言っているそうです。少年のお父さんは「食事も進まず睡眠もとれない。まさか自分の子が」と言っています。
 少年は中学での成績はトップクラスで、1学期の期末テストでは5教科で465点(平均93点)をとりました。現在入っている鑑別所では、マンガの他に歴史書や参考書を読んでいるということです。
 中学では友人に「むかつく」「まじめ」などとからかわれたりすると突然むきになったり、「うるさい」と怒鳴って教室を走り出たりしたことがあり「パニックになりやすい。切れたら怖い」とも言われていたそうです。

 この事件では、本当にこの少年が犯人かどうかがまだはっきりしていません。もしかしたら犯人が他にいるかもしれません。しかし12才の少年が人殺しをしたとしたら、世の中のオトナにとって、特に小さい子の親御さんには大変なショックでしょう。殺された男の子の両親は「犯人を極刑(死刑や無期懲役など)にしてほしい」と言っています。大切に育ててきた子どもが殺される悲しみは、親でない山本には想像しきれませんが、ここまで言うのも不思議ではないと思います。

 ……みんなには、命を奪われることの悲しさやつらさが想像できるでしょうか。
 山本は5才の時交通事故で母親を亡くしました。泣いたことは覚えているのですが、悲しいという気持ちを引きずることはありませんでした。小さかったからでしょうか。遺体(多分ズタズタになっていた)を見なかったこともあるかもしれません。
 テレビで戦争のニュースが流れても、ボロボロの死体が映ることはほとんどありません。ドラマで人が死ぬときも、体がちぎれたり顔がグシャグシャになっていることはありません。ウルトラマンやゴジラで、怪獣がビルをこわしてもビルの中の人が死んでいる光景を写さないのと似ています。ウルトラマンは子ども向けだから残酷なシーンは出さないのかもしれませんが、ドラマやニュースが子ども向けということもないでしょう。
 みんなのまわりで、おそらく学校でも、命がなくなることの意味をわかりやすく教えてくれる場所はほとんどないでしょう。山本は大学や大学院で生物学を勉強しましたが、授業で「生きていることの大切さ」を先生から教わった覚えがありません(勉強不足のせいかな?)

 この事件の少年が学校でいい成績をとっていたのは、命を大切にすることを学校が「成績」として評価していなかった証拠です。そんな当たり前のことを学校が教える必要があるのか、という意見もあります。でもよく考えれば、数学も理科も英語も、自分やまわりのみんながよりよく生きていくために勉強しているものです。理科で生きものについて勉強するのは、生きものにしかない力、不思議さ、こわれたら元に戻らない大切さをみんなにわかってもらうためです。道管がどうの、光合成がどうのというテストだけで「いのちの大切にしているかどうか」を評価することは難しいでしょう。塾でも同じですね(どうしたらいいんだろう……)。

 山本が感じるのは「子どもがうまく育つ条件がこわれてきているのではないか」ということです。
 イヌでもサルでも、ほ乳類の子どもは遊びながら生きていく力をつけていきます。兄弟ゲンカをすることもありますが、その中で傷つけられる痛みや、してはいけないことを覚えていくのです。人間もほ乳類の一種ですから、自然の中で遊んで、子ども同士のつきあいの中でお互いを大切にすることを覚えていく必要があります。山本が子どもだった頃はまだそういうことができました。学校から帰ると暗くなるまで遊んでいたし、遊ぶ空き地もたくさんありました。ケンカもしましたが、殴られれば痛いし、殴って気持ちいいわけでもないし、その中で「人を傷つけることの気持ち悪さ」を覚えていったような気がします。
 今は遊ぶ場所も仲間もなかなか見つかりません。テレビやファミコンはありますが、そこで人間同士がお互いの気持ちをぶつけ合ったり、お互いを大切にすることを学ぶのは難しいでしょう。

 昔に戻ればよいというものでもないでしょうが、子どもが自動車などに脅かされないで安心して遊べる場所を、オトナがつくっていかなければならないと思います。アフリカのには「子どもが育つには村中の人が必要だ」ということわざがあります。親だけでなく、子どもの周りにいるすべてのオトナが、本当の意味で子どもを大切にしていかなければならないでしょう。

 みんなにどうしてほしいのかうまく言えませんが、まずみんな自身が生きていることの重さを感じてほしいです。自分を甘やかすのでなく大切にすること。自分の体にゆっくり触ってみるという"トレーニング"もあります。イライラしたときにストレスを発散する(=心をいたわる)方法も探してみてください。(山本は本の衝動買いをします。けっこうスッキリします)
 そしてできればこの夏の間に、ナマの生きものとじっくり接してみてほしいです。大学の時「ある動物を3時間観察して記録しなさい」という実習をしたことがあります。きつかったですが、野原の虫一匹でもずっと見ているうちに愛着がわいてきて、息づかいまで伝わってくるような気がしました。それから生きものを見る目が少し変わったような気がします。動物園や水族館に行ってみるのもいいでしょう。忙しいでしょうが、一度は生きもののあたたかさを感じてみてソンはないと思います。  9月にまた元気な顔を見せてくださいね。(2003/7/17)


 先週の「雨男」

   去年からそうなのですが、他の校舎に行くときに、よく雨が降ります。
   T校に行く木曜日は、半分くらい雨に降られている感じがします。
   家から塾まで自転車で25分かかります。さらにT校は駅から15分、
   I校は20分自転車で走るので、
   長いときは1日で1時間半くらい自転車をこいでいることになります。
   カサをさしていても、土砂降りだとずぶぬれになります。
   帰りに焼鳥屋さんに寄ると、おじさんが
   「にいさん、大変やねえ」と声をかけてくれます。泣きそう……
   2学期はもう少しいい天気をお願いしたいなあ。
 


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