役に立つの?

 この間中2の人が、「電流の勉強なんて役に立つんですか?」とチェックシートに書いていました。
 みんなの中にも、今している勉強が将来役に立つのかどうか、疑問に思う人がいるでしょう。
 いったい算数や数学や理科が、オトナになってから本当に役に立つものなのでしょうか。どう思いますか?

 小6の人が勉強している算数は、まずまちがいなく役に立つと思います。特に今から勉強する「比」「平均」「比例」などはおとなになってから必ず使う考え方です。料理をするときに「水とお酒を2:1の割合で……」という文の意味がわからないと困るでしょう。このへんは今からきちんと勉強しましょう。

 中学校で勉強することはどうでしょうか。
 電気のことがよくわからなくても、家の中の電気器具を使うことはできます。テレビの説明書には普通アンペアだのジュールだのという言葉は出てきません。でもたとえば、同じ電球でもW(ワット;電力)の大きいものほど明るいこと、コンセントにどれだけつないでも大丈夫(ヒューズが飛ばない)か、あるいは電気代の計算をするときに「W×時間=電力量(電気を使った量=電気代はこれで計算する)」であることを知っておいた方が、知らないよりは賢く生活できるかもしれません。
 海や川でおぼれる人の中には「こんなに浅い場所なら大丈夫」と思って油断する人がいますが、これは光の屈折のせいで実際よりも底が浅く見えるせいです。これも光のことをちゃんと勉強していた方がよくわかることです。

 数学の1次関数については、こんな問題を考えてみましょう;

 A社の初任給(最初にもらう給料)は10万円、1年ごとに2万円ずつ給料が上がる。
 B社の初任給は20万円、1年ごとに1万円ずつ給料が上がる。
 どちらの会社の方が給料が高いか。

 答は「何年勤めたかによって変わる」です。X年後の給料を山本万円とすると、
 ・A社の給料は、山本=2X+10 (1年ごとに上がる量=傾き、最初の給料=切片)
 ・B社の給料は、山本=X+20  (傾き=1、切片=20)
 この式を使えば、何年後の給料がいくらになっているか、簡単な計算で出すことができます。またA社とB社の給料が同じになるときもわかります(2つの式を連立方程式として解けばよい)。
 また「入社してからもらう給料の合計(累計)がいくらになるか」を式で表すと、高校で習う2次関数になります。たとえばA社の場合、X年勤めたときの給料の累計は、山本=X^2+9X という式になります。グラフをかけば、会社によってもらう給料がどう違うかも一目でわかります。

 他にも、身近なことに理科は役に立ちます。
 たとえば「シシトウを天ぷらにするときは、包丁で切り込みを入れる」という料理のコツがあります。これはシシトウの中の空気が暖められるとふくらんで、天ぷらを揚げている途中で破裂してしまうからです。
 これは「空気は暖められるとふくらむ」ということを知っていれば、試してみなくても予想できるし、シシトウ以外でもそうしなければならないことがわかります。理屈を知っていることは、やったことのないことを予想すること、ある経験(切り込みを入れること)が他のものにも使えるかどうかを判断するのにも役に立つのです。

 ニュースで「電波で地震を予測する」という話がありました。大地震の前にはラジオなどの電波の飛び方が普段と変わっている、だから電波をはかれば地震の予測ができるのではないか、という話でした。これが本当なら大発見ですが、本当にそうなっているのか、なぜそうなるのか、ということはまだ科学的に説明されていません。こういう話を、テレビでそう言っているから、とか、大学の先生が言っているから、というだけの理由で信じてしまうのは、あまり賢いとは言えません。

 理科や数学の考え方は「誰にも文句のつけられないまちがいのない理屈を積み重ねて、ある結論を出す」というものです(中2の数学でもうすぐ習う『証明』はこのやり方そのものです)。この考え方がわかっていれば、自分で理屈を考えて、何が本当に正しいか判断したり、身を守ったりすることができます。

 みんなが勉強しているのは、みんなの中に眠っている才能を見つけ出し、育てていくためです。人間の才能は人によって全部違います。電気の勉強をして才能を見つけ、電気技師になる人もいるでしょう。マンガが好きでマンガ家になりたい人もいるでしょう。でもマンガをかくために数学が役に立つこともあるし、学校で習った歴史の話が忘れられないで、年をとってから勉強をし直す人もいます。勉強と直接関係のないように見える仕事や生活をしていても、思いもよらないところで勉強したことが役に立つこともあります。
 そんなに難しいことまで考えたくない、という人もいるかもしれません。たしかにそんな理屈を使わなくても、なんとなく生活していくことはできるでしょう。そういう意味では、勉強が役に立つかどうかはみんなの将来次第ということになりそうです。

 みんなはこれまでと違う"未来"に生きていく人たちですから、どういう知識や考え方がどう役に立つかは、誰にもわからないとも言えます。せっかくだから今のオトナたちをこえて、もっと幸せな生き方ができるためにも、今の勉強を役に立ててほしいですね。(2003/9/14)


 先週の「ヒツジ」

   休日に六甲山に行ってきました。
   六甲駅からバスに乗って六甲山牧場へ。蒸し暑い日だったけど、
   山の上で風があって気持ちいい(これがホントの六甲おろし?)
   ヒツジにエサをやろうとして、ヒツジのいるさくの中に入り、
   エサの販売機にお金を入れようとしたら、ヒツジがどんどん寄ってくる。
   販売機に頭を突っ込んだり、こっちを足でけったりする。
   エサをやろうとすると、エサを持っている手にかみつこうとする。
   なんだかさもしいけど……やっぱりかわいいなあ。
   山頂から見る海もなかなかきれいでした。牛乳やチーズもおいしいです。
   みんなも一度行ってみるといいですよ。
 


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