便利なニセモノたち

 山本が子どもだった頃と比べると、今は便利な世の中になりました。携帯電話もパソコンもビデオもコンビニもインターネットも、20年前にはなかったものです。山本は夜型人間なので、コンビニが初めてできた時は「こんな時間にもものが買えるんや!」と感動しました。この通信を作るのにも、インターネットに随分お世話になっています。

 世の中が便利になった分だけ、みんなが気持ちよく幸せに暮らせるようになればいいのですが、そういうことばかりでもないようです。

 テレビ番組をビデオに録画できると、好きな時に何回も見られて便利です。でもビデオがない時は「これ1回だけ!」という気持ちがあったので、今よりも真剣にテレビを見ていました。昔見たドラマの方が印象に残っているのも、そういう気持ちのせいかもしれません。

 山本は「自動車を運転しない主義」で、塾へはいつも自転車で通っています。疲れている時はしんどいし、実験機材なども運びにくくて不便です。でも自動車では見えないものが見えるし、授業がうまくいかなかった時も、夜風に吹かれると少しはスッキリします。体にもいいし。

 小学生の時、近所の畑を借りて家族でトウモロコシを育てました。夏の暑い盛り、蚊に刺されながら雑草をとったりするのは大変でした。なんでこんなことをするんや〜〜 とブツブツ言いながら作業をしていましたが、とれたてのトウモロコシをゆでて食べると……うまい!!!! スーパーで売っているようなトウモロコシなんて、まるで比べものにならない。あれから普通に売っているトウモロコシは食べる気になりません。本当においしい食べ物は、高いとは限らないけど手間をかけないといけないものなのでしょう。
 今のお米や野菜や果物は、虫や病気を防ぐために農薬をたくさん使っています。また見栄えをよくしたり腐りにくくするために色々な薬を使っています。薬はたしかに便利ですが、そういう薬を長い間何種類も食べて本当に安全かどうかわからないし、薬によって味が落ちたり味が変わってしまうこともあります。
 『有機無農薬野菜』というのがあります。農薬を使わず堆肥(動物のふんなどを使った昔ながらの肥料)を使って育てたもので、農薬や化学肥料で育てた野菜よりおいしいし体にもよいと言われています。考えてみれば、江戸時代の人はみんな有機無農薬野菜を食べていたわけです。もちろん農薬には意味があるし、今の野菜作りにもいいところはあるのですが、昔と比べて今の方が絶対いいとも言いにくいですね。どう思いますか?

 携帯電話も便利です。いつでも話ができる・言葉を伝えられるというのはいいですね。でも逆に"いつでも他人の言葉を気にしないといけない"というところもあるでしょう。みんなにはそういう感覚はないかもしれませんが、人間にはひとりになる時間も必要です。いつでも誰かとつながっているというのは、考えようによっては『誰とも本当にはつながれない』ということにもなります。山本はパソコンだけのメールにして、メールを使う時間を決めています。(携帯電話については、電話から出る電磁波の影響も心配です。動物実験は行われていますが、みんなのような育ち盛りが長い間電磁波を頭に受け続けたらどうなるか、本当のところはわかっていません。子どもにはあんまり携帯を使ってほしくないです)

 山本が一番ニセモノを感じるのは、実験をしない理科の授業です。理科は元々、自然にある色々なものにはたらきかけて(実験や観察をして)自然の仕組みを学ぶものです。ですから本や教師の言うことよりも、実験や観察の結果を大切にして勉強していくべきなのです(本当は算数や数学もそうです)。以前「1年間学校で一回も実験をしなかった」と言っていた人がいますが、そこまでいけばどう考えてもニセモノの授業でしょう。実験をしないのは教師にとってはラク(便利?)です。今は実験をビデオやパソコンで見ることもできます。でも見る・聞くだけでなく、さわったりにおいをかいだりして全体を感じたり、自分たちで色々なやり方でいじってみるのは、実物でなければできません。ニセモノではわからないことがあるのです。
 山本もできるだけ実験をしたいのですが、設備のない塾ではなかなか難しいですね。でもできるだけ実物を見せたいし、みんなにも興味を持ってほしいと思います。

 もう1つ心配しているのは、便利なものが使えなくなったらどうなるのだろうということです。
 今のみんなの生活を支えているのは、主に電気と石油です。特に石油はプラスチックやガソリンの材料でもあり、電気をつくるもとでもあります。もし石油がなくなったら、外国が石油を売ってくれなくなったら、ここまでに書いたほとんどのものは使えなくなります。そのときにどうするか考えておかなければなりません。(電気なしで生きていけるかどうか、考えたことがありますか?)

 便利なものを使うのもいいけど、たまには便利なものの"不便"なところや、便利なものに頼らなくても生活できるかどうか、考えてみるのもいいと思います。どうでしょうか?(2003/9/28)


 先週の「時間通り」

   中2の人は関数が終わって、少しは解きやすいところに入った
   ……ように思うのですが、どうでしょうか。まだ難しいかねえ。
   ずっと遅刻の続いていた人が、授業でもなかなか授業がわからなくて
   苦労していましたが、先週ついに時間通り来てくれました
   (こういうのはホントうれしいのです)。
   この日はいつもよりいい感じで問題が解けていたと思います。
   やっぱり早く来るもんやで。
   苦手な科目でも、少しでも「解けた!」という感じをつかんでもらえたら、
   いいきっかけをつかんでもらえたら、と思います。あと半年、一緒に賢くなろうね。
 


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