教科書 VS 教科書

 学校では数年前に教科書とカリキュラム(教える内容)が変わりました。土曜が休みになって授業時間が減ったので、教える内容を減らしてその分みんなが確実にわかるようにしよう、というねらいでした。
 たとえば台形の公式を教えないようにしたり、小数のややこしい計算を少なくしたり、種子をつくらない植物について教えないようにしたり、進化やイオンや浮力については中学から高校に回ったり(高校では選択授業になるので、習わない人も出てくる)……といった具合です。

 習う内容が少なくなってみんながわかりやすくなったのなら、それはそれでいいのですが、実際どうなっているのかというと ??? です。3年前と比べて学校のテストの点が上がっているわけでもなさそうだし、習う内容が減った分みんなの学力はまちがいなく下がっているし、コレデイイノカイナという気がしています。小5や小6の算数についてはあんまり学力が下がるとまずいので、塾のテキスト以外の問題を解いてもらったりしていますが、中学の方は古い内容をまともにやってしまうと時間がないので、どうしたらいいのか困っています。

 数学についてはそんなに大きく変わっていないので、練習量が減らないようにしておけば大丈夫かな……と思うのですが、問題は理科です。中3の授業時間数が半分になってしまったので、中3でもともと教えていた内容の半分くらいを高校で習うことになり、中1や中2の内容もうすくなりました。その分高校で習うことが増えるので、高校での勉強が大変です。
 理科は覚えることもありますが「理屈」が大切な科目です。途中の理屈をとばしてしまうと、中身が少なくなってもかえってわかりにくくなって、覚えるだけのつまらない内容になってしまいます。なぜ金属は電流を通しやすいのか、なぜ温度が上がると水が沸騰するのか、なぜ光が屈折するのか…… こういうこともちゃんと理屈で説明できるのですが、今の教科書には全く書いてありません。これでは理科の面白さを感じるのも難しいでしょう。

 アメリカの教科書は日本のものよりかなり分厚くて、同じ内容でもずっと詳しく例もたくさんあって、読むだけでも十分面白いそうです。これにはアメリカの教科書が学校からの貸し出しという形になっていて、生徒が教科書を買わなくてすむという事情もあります。でも日本にもそういう教科書があっていいし、そういう教科書を読みたい人もいるでしょう。

 今よりもっといい教科書がほしい、使いたいという先生が集まって、理科の「検定外教科書」をつくりました。この教科書は文部科学省の検定(チェック)を受けていないので、ふつうの教科書の代わりとして学校で使うことはできませんが、みんなが本屋で買って読むのは自由です。また私立中学などで授業用に使っているところもあります。(実は山本も教科書つくりにちょっとだけ参加しています)
 今の理科の授業がつまらない人、もっと深い理屈が知りたい人には役に立つかもしれません。大きい本屋にはたいてい置いてあるので、興味のある人は立ち読みしてみるのもいいと思います。

 教科書に限らず、図書館などで面白そうな本を探して読んでみるのもいいと思います。学校の勉強にとらわれず、自分のわかりたい気持ち・興味や好奇心を大切にしてほしいです。(2003/11/18)
 新しい科学の教科書T〜V 左巻健男編 文一総合出版


 先週の「ペンチ」

   針金を切ろうとしてペンチを使っていたら、
   あやまって指先をはさんでしまいました。いたーい。
   何日かすると、指先にシカの足跡みたいなあとがついていました。
   皮膚の中で出血して、血が固まって黒くなったのでしょう。
   もしかしたらずっとこのままかも。切開すれば消えるんだろうけど、
   それもイヤやなあ。どうしたもんだか。こういう"あと"が増えていくのも、
   年をとっていく証拠なのかしらん。ああああ……
 


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