必ず来る恐怖

阪神大震災から9年がたちました。みんなはあの地震のことを覚えているでしょうか。

山本はあの地震の時、神戸の私立学校の教師(中1の担任)をしていました。大阪の山本の家は壁にひびが入るくらいですんだのですが、担任のクラスで連絡がとれなくなった人がいました。最初の3日は動きがとれず、テレビを見ながら生徒の家に電話をかけるだけでした。4日目に決心して自転車で神戸まで走り、生徒をさがして避難先をあたりました。三宮の近くの小学校で教え子を見つけたとき、お母さんと3人で泣いたことを覚えています。

 傾いて今にも倒れそうなビル、ひび割れてまともに走れない道路、道路ごと曲がった線路、つぶれた家の横に置かれた花束…… 地震の後の街はすざまじいものでしたが、それ以上に印象的だったのはそこにいる人たちの強さと暖かさでした。食べ物の足りないときにこちらがパンをいただいたり、小銭が足りないときに横からさり気なく差し出してくださったり、しんどい時なのに色々な人に助けてもらいました。みんなを元気づけるためにただでラーメンをふるまっている人もいました。あのときのことを思い出すと「みんなが苦労しているときこそ、本当に心が暖かくなれるのではないか」という気がします。

 日本は地震が多い国です。地震の起こるしくみを知っておいてソンはありません。
 地球の表面には「プレート」と呼ばれている、地面や海底を作っている板のようなものがあります。プレートは地球の表面に何枚もあって、1年に数mmずつ動いています(地面は動いているんですよ)。
 日本の近くには4枚のプレートがあって、その境界では、海底をつくっているプレートが、陸のプレートの下に沈み込んでいます。

 海のプレートが沈み込んでいくとき、日本のある陸のプレートの端が、下に引きずり込まれて曲がっていきます。しかしプレートはかたい岩のかたまりですから、そのまま曲がっていくわけではありません。ある程度曲がると、反発する力で上に向かってはじけるか、プレートの一部がこわれるかのどちらかが起こります。どちらにしてもプレート=地面に大きな振動が起こります。これがプレート境界型地震と呼ばれるものです(これとはタイプの違う『直下型地震』もあります)。


 プレートはほぼ一定の速さで動いているので、このタイプの地震は、いつごろ起きるかある程度予測できます。現在特に問題になっているのは、和歌山から四国沖を震源とする「南海地震」と、静岡県沖を震源とする「東海地震」です。

 南海地震は、今までに南海、じゃなかった何回か起こっています。最近では1946年、その前は江戸時代の1854年です。歴史をさかのぼっていくと、古くは684年の白鳳地震から100年〜150年周期で、マグニチュード8クラス(阪神大震災の10倍以上!)の大地震が起こっています。研究によれば、今から50年以内に南海地震が起こる確率は50%です。プレートが動いている限り、遅かれ早かれこの地震は必ず起こると言えます。


 南海地震が起こった場合、地震そのものや火災とともに問題になるのは津波です。大阪には2時間以内に津波が押し寄せ、淀川などに海水が逆流してくると言われています。大阪市内は水びたしになるでしょう。山本の家は淀川の近くにあるので、堤防がこわれたら家ごと流されるかもしれません。海から遠くても、川の近くに住んでいる人・標高の低いところに住んでいる人は、高いところに逃げることを考えておかなくてはなりません。
 もっとこわいのは原子力発電所の事故です。大事故が起こって放射能が外に流れ出したら、日本の半分近くが人の住めない場所になります。東海地震が起こると言われている静岡には浜岡原子力発電所があって、この原発の運転を止めてほしいという裁判を起こしている人たちもいます。みんなはどう思いますか。

 地震に備えるには、避難の時に持っていくものを用意しておくとか、避難場所を考えておくとか、家の中の家具を倒れにくくしておくとか、色々することがあります。もう1つみんなに覚えておいてほしいのは、隣近所の人たちと助け合うということです。
 大地震が起こったとき一番最初に力になるのは、すぐ近くに住んでいる人たちです。みんなは隣に住んでいる人の名前を知っていますか? 近所にどんな人が暮らしているか知っていますか? 誰かがけがをしているとき、倒れているとき、どうすればよいか知っていますか? 周りの人たちとどのくらい助けあえるか、何を勉強しなければならないか、考えてみてほしいです。

 日本に住んでいる限り、地震から逃れることはできません。いつか必ず来る災害について、どうしたらいいか勉強しておいてほしいと思います。(2004/1/19)


 先週の「発見」

   中2数学で、円周角の問題を解いているとき、ある男の子が
   「こういう解き方もあるんじゃないですか?」と聞いてきました。
   見るとその通り。山本の説明した方法とは違っていましたが、
   ちゃんと正しく解けます。すばらしい!
   こういう発見は、教師の説明通りに解いていくよりよっぽど楽しいし、力をつけてくれます。
   数学は特に「自由な考え方で解き方を見つけ出す」のが面白い科目です。
   教師の言うことだけを聞くのでなく、自分で色々な解き方を工夫してみてください。
   次の"発見"を待ってますよーー。
 


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